東方無風伝 その5
西行寺と共に大広間へと戻ってみれば、霊夢と魔理沙の二人組が眼を覚ましていた。
「酷い荒れようね。これを自分が片づけなくて良いと思うと気楽だわ」
「妖夢がしっかりと片付けてくれるわよ」
宴会は霊夢の住む博霊神社で行われることが多いらしく、何時もは霊夢が後片付けをする羽目に付いているらしい。
今回は西行寺主催の為に、必然的に妖夢が片付けることになる。西行寺はそんなことやらないからな。
「ふぁ……」
欠伸を吐く魔理沙。まだ寝足りないと言うように眠たげな眼を擦る。
「昨日は散々だったぜ……」
「何か有ったのか? 魔理沙」
「折角の宴会だと言うのに、無理矢理酒を呑まされて潰れた夢を見たぜ」
それは夢なんかではなく、現実だ。魔理沙も業と言っているのだろう。彼女の眼が俺を責めるようだから。
「どうせ、無理矢理に呑ませようとしたんじゃないのか? ならば、自分がやられても文句は言えないことだろう」
「ぬぅ……」
思い当たる節はある筈だ。と言うより俺自身が被害者なのだから。
「なんだか眠った気がしないぜ」
「そうかしら。私はぐっすり眠れたわよ」
「此処はあの世だからね。ぐっすり眠れた霊夢は、もう死に近いのかもしれないわよ?」
意地悪を言う西行寺に、言われた霊夢は逃げるように身を引いた。
「なんだ、心当たりでもあるのか?」
「……幻想郷で何時死ぬかなんて解ったもんじゃないわよ。それに、あんたに言われると洒落で済まされそうにないから怖いのよ」
西行寺を指差して言う霊夢。確かに、死者の国で生きる亡霊に、死だのなんだと言われると、冗談では済まされそうにないな。
幻想郷は、生は踊り死が謳歌する世界。人間は妖怪の食糧にしか過ぎない。人間である身以上、何時妖怪に襲われて死ぬかなんて解らない。
先日見たあの大量の死。生きていた桜は、それだけで美しかった。そして、桜の死ぬ瞬間。自身の生き様全てを其処に込めたような死に様は、実に美しかった。生も死も、美しい存在なのだ。
西行寺を視る。
生きる時、死の瞬間が美しいと言うのならば、死にながらも生きる少女は美しいのだろうか。
「なぁに、風間。私をじっと見つめて」
「いや、なんでも」
その答えは、もう解りきっていること。
生も死も、同じように美しいのだから。



