東方無風伝 その5
藍は妖怪の中でも珍しい心が真っ直ぐで『出来る』妖怪だ。真っ直ぐ故に、他人の言葉を疑う事はあるが、真意を探ろうとはしない。
「能力とは、己の力の顕現。風間殿が風を操れると言うのならば、風間殿は風と言う存在に近いか、憧れているか、その他特殊な思い入れがあるのか。そう言うことだろう」
「能力は所持者の個性、かな」
「そうだ。そして力とは、私達妖怪ならば妖力、退魔師や陰陽術師などなら霊力、魔法遣いなら魔力、巫女や神様などなら神力、僧や尼などなら法力と、実に様々な種類があるが、本質的にどれも変わらない」
「どれも変わらぬ力。それを各々が好き勝手な呼び方をしているだけ」
「そうだな。そしてそれらは、能力の補助的な役割を果たしている」
「成る程ね。能力はそれらの力を使用して発現するというものが多い。それ故に、能力は力が有ってこそ使用出来るものと」
「そうだ。そうなると、風間殿の、能力が使えても力の使用が出来ないと言うのはおかしい」
生憎と、あの能力は借り物と言えどそう言った力を使用していない。少なからず、そう言った力に頼らない能力と言うのはあるはずだ。
……いや、もしかしたら、俺が知らないだけで、『あいつ』経由で力を使用しているのかもな。とか思いつつ、自分でそれを否定する。可能性としては、ある。だが、あいつの力を使用しての能力使用とは、とても思えない。あいつは俺と同じで、力なんてものは無いはずだ。
「そこで、私は考えた」
「どう言った結論が出た」
「風間殿は、覚醒しているが、無自覚、または認めようとしていない」
「それはどちらもおかしな話」
「そう、そこが問題だ。無自覚と言っても、現に風間殿は能力が使える」
「後者ならば、否定する意味が無い。折角の力を捨てる必要性がない」
「そうなのだ。そこで、もう一つの可能性がある」
「ほう。それはなんだい」
「力の使い方を理解出来ていないと言うものでは」
先程の、能力に力を使用していないということを鑑みると、それが一番納得の出来る理由だ。藍にとっては。
正直、答えを知っている俺としては、今すぐ大きなばってんマークを付けた解答用紙を返却してやりたい気分だ。



