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【ヘタリア/米英】 WINTER LOVERS 【サンプル】

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Ⅰ 例えば、買い物に行くとき

「嫌だ」
 首が取れそうなほど勢いよく首を振って、イギリスは否定の意を示す。白い息が一瞬二人の視界を遮って、再度現れたその表情はやはり同じだった。
 モスグリーンを基調にしたマフラーに顔を埋めてイギリスは目を合わさない。
 頑なに手をポケットの中に入れて(本来ならばそれはイギリスの言うところの「紳士的」な行為ではないだろうけれど)、出す気配は微塵にも感じられない。ポケットの中で力一杯握りしめているのがわかるほどだ。
 アメリカが空を仰げば、一面どんよりとした雲で覆われていた。分厚い雲が太陽を遮って、お世辞にも暖かいとは言えない。
 折角買い物に来たのに楽しさ半減なんだぞ、とアメリカは動かないイギリスに視線を送った。
 家にいるときからそうだった。折角の休みだからと家に誘ったのはよかった。
なのに、抱きつこうとすれば「嫌だ」と避けられるし、キスしようとしたら逃げられる。理由も聞いても別にの一点張り。
 帰らないところを見ても一緒にいるのを嫌がっているわけではないだろうに、理由もなく触れることすらさせてもらえないなんて生殺しにもほどがある。心なしかナンタケットもしおしおと元気がないような気がしていた。
 気分転換に買い物でもと誘えば、イギリスは首を縦に振った。
 でも、やっぱり―――
「ねぇ」
「い・や・だ」
 一字一句はっきり伝わるようにか、区切って飛び出した言葉にさすがのアメリカもむっとなる。そこまで拒絶することないじゃないかと思いつつも、じゃあなんで一緒にいるのと聞くに聞けない。
 それっきり言葉のないイギリスに、アメリカは限界だと音を上げた。
「もう!さっきからそればっかりで。なんでだい!?」
「こ、こんな所でできるかばかぁ!」
 叫んだその声に通りすがりの人々が顔を上げる。集まる視線に冷たさで赤い耳をもっと赤く染め上げて、イギリスは顔の半分をマフラーで隠してしまった。
厚手のコートに身を包んでいるのに、少し肩を震わせている。寒いだろうに見栄っ張り、と小さくつぶやいて、アメリカは道行く人々になんでもないと軽く手を振ってイギリスの顔をのぞき込んだ。
「こんなことって……手を繋ぐだけじゃないか」
「できるか!」
「別にキスしようって言ってるんじゃないんだぞ」