【ヘタリア/米英】 WINTER LOVERS 【サンプル】
ぽぽぽっ、と顔に熱を集めたその顔を見て、アメリカは息が白くならないほどの小さなため息をつく。エロ紳士が聞いて呆れる。公の場で手を繋ぐことくらい、なんてことないだろうに。
お前はデリカシーがないとか、人前でそんなこととか並べ立てるイギリスの声には覇気がない。先ほど不本意にも注目を集めてしまったことが堪えたらしい。それにしても皮肉混じりのその言葉を吐き出すのに、顔を赤くさせて、声を上ずらせているなんて、まるで、まるで。
「聞いてるのか、アメリカ!」
「恥ずかしいのかい?」
「ふぇ!?」
言葉を遮って出てきた声に、イギリスの動きが鈍くなる。酸欠の金魚のように唇が言葉にならない言葉を紡いで、白い息がゆるりと目の前を通り過ぎていった。
時間が止まったようにアメリカもイギリスも動かない。ただ、アメリカはイギリスのその表情に「BINGOか」とほくそ笑んだ。
はっとしたイギリスが、ようやくポケットから手を出してわたわたと弁解するように動かす。違う、違うと連呼して、寒さのせいか恥ずかしさのせいかわからない顔の赤さをアメリカにさらけ出した。
「ばっ……恥ずかしいとか、そんなんじゃ……!」
「じゃあいいじゃないか」
「嫌だ。絶対に嫌だ」
「文句が多いんだぞ」
「あっ!」
無防備にさらけ出された手の平を、アメリカはぱっと掴んで引き寄せる。力に逆らわずにイギリスの体はバランスを崩してアメリカにぶつかった。
顔を上げ、慌てるイギリスににやりと笑う。その手を強く握りしめ、見せつけるように高く掲げた。
「イギリスゲットだぞっ!」
「ばかっ!離せよっ」
「やーなこった!はい、ポケットにイン!」
「ぎゃぁあぁぁぁ!!」
握った手をコートのポケットに勢いよく突っ込む。もこもこの手袋が二つ重なって、ポケットは定員オーバーになるが気にしない。
叫び声を上げるイギリスを無視して、アメリカはにこにこと歩き始めた。
「離せっ!離せったら!」
「やーなこった!」
必死の形相で手を出そうと引っ張るも、それを上回る強さでアメリカはイギリスの手を握りしめて動かせない。上機嫌のアメリカは、ポケットの中でいっそう強くイギリスの手を握りしめた。
びくん、とイギリスの肩が跳ねる。
一頻り視線を彷徨わせると、そっと目を伏せて大人しくなる。ちらりと視線を投げたアメリカの目に、泣きそうなイギリスの伏せた表情が飛び込んだ。
伏せられた両の眼から伸びる長い睫毛に透明な雫が跳ねている。綺麗だ、なんて言ったら怒るんだろうなと思いながらも、アメリカは目が離すことができなかった。
足下でさくさくと雪を刻む音が鳴る。
僅かに遅れて奏でるメロディーにアメリカは肩越しにイギリスを振り返った。相変わらずマフラーで顔を半分隠して、白い息がマフラーから細く伸びている。
イギリスの腕は限界まで伸びていて、痛そうだ。まるで無理矢理引っ張っているようで、アメリカは眉を寄せた。
「イギリスー。そんなに離れたら歩きにくいんだぞ」
「だったら手、離せ……」
「嫌だ」
ぎゅ、と重なった手を握りしめる。
痛いと顔をしかめたイギリスに、慌てて力を緩めるもその手を離しはしなかった。やっととらえた小さな温もりを、簡単に離したくはない。
人一人くらいは入れそうな距離に、アメリカはむぅと口をとがらせた。
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始終こんな感じです。 ([>]ω[<])人(言///言)