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ここにも敵が

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「うわ~すっごいお部屋!こんな豪華な部屋に住んでたんですねアクトさん!」

そこはヤスナで使っている城の中のアクト専用の部屋、彼らしく生活感はないがすべての家具の細工の美しさや毎日使用人が掃除しているようで埃ひとつ見当たらないほど
完璧に広く豪華な一室だった。タカマハラの王宮とはまた違った優美さにアキはただ驚き、あちらこちらと観賞を楽しんでいた。

「きゃ~!ベッドもキングサイズ?いいなぁ!(これなら寝相の悪い私でも落ちなそう...)」

子供の様にベッドの上で跳ねてはしゃいでいる無邪気なアキを「.....相変わらずおかしなやつ」とばかりにどこか楽しそうに眺めているアクトだったが、
今夜彼女をこの部屋に連れてきた目的を思い出し、ゆっくりとアキの方へ向かう。

「ねぇアクトさん!ここならカヤナとクラトさんと私たち四人で暮らしても全然窮屈じゃないですよね!いいなぁ!」

「..............」

相変わらずの無神経さとクラトという名に過剰反応してしまいそうだったがここでいつものように口論に突入してしまえば今夜の計画は
台無し、と何とか湧き上がった苛立ちを落ち着かせて楽しそうにベッドで足をバタつかせているアキの隣に座った。

「.........アキ....」

アクトの手がスッとアキの肩に置かれ真剣で少し切なげにも見える眼差しでお互いの顔の距離を縮めた。

「どうしたんですか...?あ...私うるさかったですか...?」

このムードをまったく理解していない様子なアキの反応にアクトの表情が引きつる。だか只でさえ可愛い顔でさらに可愛らしく不安気な表情で
自分を見つめてくる彼女を見るといつもの今まで他の誰にも抱いたことのないとめどない感情に囚われその結果いつも強引な行動に出てしまうのだ。

「そうやって他の奴を見るな...」

「え....?」

アキはアクトの発言が理解できず、更に言ってすぐ彼にそのまま肩を押されいつのまにか自分が彼をベッドの上で見上げているこの状態でやっと自身の身の危機を
感じ戸惑った表情になる。

「.....アクトさん、私また怒らせちゃいました....?....でもやっぱり分からないです......どうして...」

「............」

「......どうしてそんなに悲しい顔してるんですか......?..........」

アキは何度もアクトの気まぐれと強引さに振り回されている、勝手で、でもいつも真剣に怒っている。酷いことを言われても、強引に迫られても、なぜかいつも許してしまって
いたのはきっと今感じるこの感覚。アクトの孤独の寂しさと辛い過去の悲しみが助けを求めているような、ただいつもそれを彼自身が怒りで押さえつけていた、そうしないと
自分の生き方に迷いが生まれてしまうかもしれないから。アキは彼と過ごす時間の中で「この人は悪い人じゃない気がする」というのは彼の中のそれらの複雑な感情をどこかで
感じていたからかもしれない、そして今アキはその考えの真実に近づいていると自分でも感じていた。

「アクトさん、私..アクトさんが好きです。でもその好きがどういう好きかまだよく分からなくて...でも好きって気持ちは本当です。」

「!.........お前は...」

はっきりと優しい笑顔でアキはアクトの目を見て言った。その言葉にハッとしたようなアクト。彼の中の孤独に光をさす存在が確かにいる、自分の中の彼女の存在の
意味がアキの言葉で今確かに分かったのだ。そう確信したと同時にこみ上げてくる何かがあった、安らぎと安らぎを壊される不安。今の彼にはそれらをどうしたらいいのか分からないが
彼の中ではっきりしていること、それは自分が彼女を好きという気持ち。

「アキ...何でだかわからねぇが自分の気持ちが上手く言えねぇ、ただ...お前が好きだ...!!..このまま俺を受け入れてくれ....!!」

アクトは彼女に勢いよく口付け、熱く激しくアキを求めた。アキは驚いたままアクトのビクともしない力に抑えられながらただ彼の衝動にされるがまま、苦しそうに表情を歪めている。

「....っ...アク..トさん....!!止めて....」

「アキ...愛してる..」

アキの言葉は聞こえていない様に更に深く口付ける。更にアクトは器用に片手でアキの衣を乱し顔を下へと移動させていく。

「....やっ......お願い、待って...誰か...!!カヤナーー!!」

いつもアキのそばにいるカヤナはヤスナに来てから離れていることが多く、今現在も彼女はアキの中にはいない。何も考えず発した信頼する大好きな親友の名は、もしかしたら
突然現れこの状況から逃れられる唯一の希望だった。

その瞬間....

バンッ!!!!

勢いよく音を立てて部屋のドアが開けられた。驚いたアクトは手を止め音の方向へ振り向き、アキも覆いかぶさっているアクトの隙間から涙で潤んだ瞳を二人の視線の先
に立つ人物に向けた。



「なっ...!タカミ!」



アクトの叫んだ先には華奢な身体と長めの緑色の髪をなびかせている若い青年、暗殺者と呼ばれているが、いつもニコニコしアキにいろいろ親切にしてくれるタカミが

笑みを浮かべて立っていた。



「よかった~。まだセーフってとこだよね、さっき城でアキの姿を見かけたから探してたんだけど...こんなとこから悲鳴が聞こえるなんて驚いちゃった。」



相変わらずの笑顔で淡々と話す彼に二人は固まって聞いていたが、アクトが我に返ったように起き上がりアキに背を向けタカミへ怒鳴る。



「何してる!?ここは俺の部屋だぞ!さっさと出てけ!!」



「え~でもアキがアクトに襲われてるなんて僕嫌だもん。っていうか、そこまでアキに無理強いしたアクトも既に殺しちゃいたいんだけど。」



「何だと!タカミ...剣を抜け、邪魔するなら斬る」



「うん、それが一番早いよね。」



「!!....や!やめて!!」



剣を構えて殺気を出す二人にアキはとっさに制止した。破れた胸元の服を手で押さえながらベッドから慌てて起き上がり二人の間に割って入る。



「アキ!お前はどいてろ!」



「そうだよ、アキ僕強いから平気だよ。それに僕だってこのままじゃムカつくもん。」



「お願い!殺すとか簡単に言わないで!!私には二人とも大事な友達だよ!!」



「僕だってアキは好きだよ。だから余計アクトがムカつくし、もともと友達でもなんでもないし。」



「俺だってお前なんかどうでもいい!っつかアキ!友達って何だよ!お前は俺の女になっただろ!」



「あ..そっか、ん...でも...今はそんな事はいいでしょ!とにかく落ち着いて二人とも!」



「そんな事だと!?」



「女....?アキがアクトの?それって脅したんでしょ?じゃなきゃさっきみたいに嫌がらないし。」



「!!」(怒)



アクトの苛立ちを逆なでするようにタカミは鼻で笑う。アキは今にも切りかかりそうなアクトを見てとにかくこの状況を抑える策を混乱しながらも考えた。


作品名:ここにも敵が 作家名:Lulian