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猫日和

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「一緒に行きます?多い方が楽しいし」
「喜んで」
「良いのか?」と北本が聞くがおれに聞かれても…
「田沼君も来るし。わいわいやりましょう」
「これじゃ女の子足りないよな」
「委員長―」と西村が手を振って呼び止める。
「何よ」
「日曜にどっかいかねー」
「良いけど。日曜なら花見が良いんじゃないの?もう終わるし」
「それ良いな」
「じゃ決まり。どこに行く?」
「公園。ダム。どこも人が多そうだな」
「夏目んちは?確か大きな桜の木が在ったよな。庭も広いし」
「それ」
「決まりね」女子二人で声を合わせる。
「ちょっと待って。塔子さんに聞いてみないと」
「大丈夫じゃないか」
「たぶん喜ぶよ」
「明日返事もらって後は考えましょう」
「夏目くん。ニャンコ先生に会いたい」ときらきらした目で見られる。決め手はそこか…。
遅れてきた田沼が「なんか話まとまったみたいだな」と言う…。残りは明日ねと別れた。

「多軌が夏目くんは妖怪の友達ばかり増えているようだと心配していたぞ。夏目の家が都合悪かったら家でも良いけど桜あまり咲いてないんだ」
「ありがとう。聞いてみるよ」

塔子さんは
「まあ。大変。お昼何人分用意したらいいのかしら。貴志くん何人になるの?」
「えーと田沼に北本…5人です」
「何作ろうかしら。たくさん食べるわよね」と嬉しそう。

次の日に話すとおかずを作ってもらって他は持ち寄りという事になった。おにぎりに飲み物・お菓子・果物こっそりお酒。塔子さんにおかずだけにしてくださいと言うとちょっとがっかりしていたが「天気が良いみたいで楽しみだわ」と言ってくれた。

ニャンコ先生は朝起きないし帰る前に家を出て窓を開けておくと夜中に帰ってくる。ろくに口も利かない。まだ怒っているのかな。つい溜息ついたら
「夏目くん気が進まないの?塔子さんは楽しみにしているって言っていたけど」
「あ・いやニャンコ先生がまだご機嫌斜めで」
「日曜までに仲直りしてね」ときらきらして目で見られる。
「凄く楽しみにしているの」
「うん」何とかなるかな?

「多軌。妖怪って約束守るのかな」
「…契約なら守るといわれているわ」
「契約か」あれは契約になるんだろうか。
「守るものもいれば隙を見て破棄するものもいる。人間と同じ」真剣な顔でじっと見る。
「妖怪ばかりに関わらないで人間の友達も増やさなきゃ。だってあたしたち人間なんだから」
「そうだね」
「でも夏目くんは放って置けないのでしょう」
「うん。おれには見えるし触れられるから」
ちょっと目を伏せてから
「じゃ私や田沼君を彼らと同じように信じてくれる?」
「もちろん。心配させてごめん」
にっこりして
「じゃ。日曜日」と走っていく。
なんかちょっと後ろめたい。

ニャンコ先生…縛ってでもいてもらわないと。



虹始見


桜が満開で窓越しに薄く浮かんで見える。ニャンコ先生が帰ってこないかと目を凝らす。
ここ二・三日ほとんど家に居ない。昼間はどこぞをうろついて夜は花見だ宴会だと出て歩く。
春になって浮かれているとしか思えない。用心棒失格じゃ無かろうか…。

「明日は昼間いてもらわないと」
明日はみんな集まって家の庭で花見をすることになって塔子さんが張り切って下ごしらえをしている。
飲み物とお菓子は持ち寄りだ。人が多いとあやかしはあまり寄ってはこないんだけど万が一と言うことがある。何より多軌のご要望だ。

「ご馳走で釣れば大丈夫かな…」とか考えている窓に丸いものが張り付いていた。
「たっだいまー」と窓を開けて入ってくる。
と途端に匂う…
「センセー 酒臭いぞ…」
「美味かった…」短くてわかり辛いが千鳥足ってやつか?ふらふらして布団に向かうとぱたんと寝てしまった。

「おーい…」つつくがびくともしない。熟睡している。帰巣本能で帰ってくる親父のようだ。
朝一で逃げられないように念のため紐で縛っておこう。その紐の端を握りながら眠りについた。

朝目覚めると握っていたはずの紐は手を離れニャンコ先生にぐるぐるに巻きついていた…。
寝相が悪いのか?感心して見ていると目を覚まして
「なんじゃこりゃー」とどたばたして余計絡ませている。
「あー動くな。はさみ持ってくるから」
「なぜ紐がついているんだ!」
「今日は家に居てもらわないと困るんだよ。逃げられないように用心のため紐で縛っておいたら絡まったんだ」
「虐めだな。動物虐待!」
「寝相が悪いんだろ」
「何だとー!」じたばたしたらまた絡まる。
「大人しく…」あーあ言ってるそばから…。
首絞めそうになって大人しくなったところを鋏でぱっちん。
絡まった紐を外し終わったら飛び掛ってきた。
「ばっかもーん。大事に扱わんか!」
両手で捕まえて
「出歩いてばかりなのが悪いんだろ。用心棒の仕事はどうした」
「この時期に大人しくなんかしてられるか」とまたじたばたする。
「昼から庭でお花見なんだよ。多軌が会いたがってた。塔子さんも張り切って食べ物用意してるし。居てくれるだろ?」
むっとして
「最初から素直に頼まんか」
「話す暇なんかなかったじゃないか」
「ふん。報酬はスルメだ!それ以外は引き受けん」
「終わったら買ってあげるよ。人前で食べるなよ」
「当たり前だ」

昼食までに戻ると食事もそこそこに出て行った。ちゃんと帰ってくるかな。帰ってこなかったら拳骨だ。

午前中塔子さんを手伝って庭に茣蓙を敷き縁側の戸を開け放す。
「まだ少し寒いわね」
「でも良い天気です。風も無いし」
「そうね。桜も満開。さ盛り付けなきゃ」

お昼前お土産を手にみんな集まってくる。
「こんにちは」
「いらっしゃい。沢山食べてね」
「夏目くん猫さんは」
「お昼までに戻ってくるって言っていたんだけど」
敵前逃亡?と思っていると屋根から転がり落ちてきた。間に合ったのは良いが即効多軌に捕まる嵌めに…。
持ち寄った果物だのお菓子だのを盛り付けて少し寒いのでひざ掛け出したり火鉢出してお餅焼いたり甘酒飲んだりお酒こっそり飲んだり。
人の目を盗んで舐めてたニャンコ先生はたまに落ちてくる花びらに飛びついて遊んでる…。酔っ払いめ。受けてたから良いけど。
動き回った所為で酔いが回ったらしく寝てしまい多軌が嬉しそうに抱きまくって満足そうに帰って行った。元気だ。
「夏目またなー」
「ご馳走様でした」
「また来てね」
みんなを見送って片付けながら縁側に座って空を見上げる。桜が少し散ってきていた。
「楽しかったわね。また遊びに来てもらってちょうだい」と嬉しそうに言われる。
「はい」

わいわいやる楽しさ。心地よい疲れ。それは人もあやかしも変わらない。ここに来て知った大切な事。

ご褒美のするめは袋に入れて寝ている間に襷がけにしてあげた。
目を覚ましてそのまままた飲みに行った。ほんと元気だ。

作品名:猫日和 作家名:ぼの