酔っ払い注意!
ヤスナでのある夜、城では国王とそれに仕える大臣や学者そして直属親衛隊の者たちで月に一度開かれる晩餐会の準備で夕刻の今
使用人たちがあわただしく準備を進めていた。
この男だらけの暗く穏やかとは言いがたい会食に招かれた唯一の女性、アキ・ミヤズは広い衣裳部屋の鏡の前で数人の使用人たちによって
されるがままに慣れない化粧や裾の長いドレスに緊張しながら座っていた。
いくら着替えが必要だったって...この服では帰ったとき余計面倒になりそうな....
昼間アクトと起きた事件により、着替えを必要としていたアキだが目の前に広がる何十着というさまざまなドレスを見ても、どれも普段着れるような、むしろ
一般市民が着ているような服はなく、結局後から来た使用人に薦められるまま用意されたドレスを着てあれやこれやとアクセサリーも付けられていく。
はぁ...なんだか今日は一日中緊張してる気がする......
コンコン
「失礼します。ディナーの準備が整いましたのでお迎えに...っきゃあ!」
ドアを開け入ろうとしたメイドを押しのけて隣から急に青年が現れた。
「アキ!着替え終わった?」
「タカミ!...急に入ってくるなんて、ビックリしちゃった..」
「撲あんまり待つのは得意じゃないんだぁ。それより着替え終わったなら行こ、お腹すいちゃったよ」
「う、うん..」
そう頷くとタカミは唖然とするメイド達を気にもせずアキの手をひっぱりスタスタと部屋を去っていった。
「うわぁ....やっぱりお城って広いね、迷子になっちゃいそう」
「だから僕が一緒にいれば平気でしょ?」
握っている手に少し力を入れてアキの方へウィンクするタカミはあまりにも無邪気でアキの緊張をほぐしてくれる。
「そーいえば...」
「何...?」
「...アキって可愛いのは知ってたけど、化粧すると雰囲気変わるね」
「え?」
「キレイ」
手を握られながら嘘のない瞳で囁かれるとさすがに鈍いアキでも顔が赤くなってしまう。
「ん、ありがとう」
正直想像していた晩餐会とは違う。なぜかアキの想像ではもっとかしこまっていて長いテーブルを向かい合って座るような。だが今開けられた扉の向こうは、
広い部屋にいくつも丸いテーブルがありそこに料理が置かれ、召使たちが酒を運びながら歩いている。薄暗い照明と弦楽器の音、変わった少し匂いに癖のある壁に飾られている
沢山の薄紫色の花が鼻をかすめ、どこからか談笑が聞こえてもくる。なんだかまとまりがなくどこか妖しい雰囲気だった。
その奥の中心で家来に酒を注がれながらゆったりした椅子に座っているのがこの国の王、コトヒラだ。アキは周りを見渡した後彼を見つけ緊張がまた戻ってきた、向こうが自分の
存在に気づき視線が合わさると慌ててその場でぎこちないお辞儀をした、するとコトヒラは元の位置に視線を戻し何かを家来に伝えているようだ。とにかくアキはホッとして緊張を
和らげるために何か飲むもの探しあたりを見回す、と。
「アキ。はい、これ」
赤い果実酒を差し出してきたのはこの城内で頼れる存在(?)のタカミだった。既に料理を乗せた皿を持ち相変わらず緊張とは無縁といった様子だ。
「ありがと。...なんだかディナーというかチナキさんのお店みたいだなぁ...」
「誰それ?ん!美味しい!アキも食べなよ!」
ボーっと眺めるアキとは対照的にタカミは近くの席に既に腰を下ろし料理を楽しんでいる。
なんだか落ち着かないからかなぁ...食欲ないし...ちょっと飲んだら帰ろう....
そう思うとアキはグラスを傾け、その横ではタカミは料理に夢中な様子、そんな二人の席に歩み寄ってきたのは長身の男性、カスガと
落ち着いた雰囲気がお互いよく似合う小柄の青年ヒノカである。
「アキ・ミヤズ、驚いたな..タカミが連れてきたのか?」
「うん」
カスガが問うとタカミは視線は料理のまま答えた。
「こんばんは、アキさん。なんだか普段と雰囲気が違いますね。とても似合っていますよ。」
にっこり笑うヒノカの笑顔はいつでも安心できる。中性的な雰囲気のせいかヒノカの傍にいると落ち着き素直な自分が出せる事はアキ自身もよく分かっていた、味方が増えたような
気になったアキはようやく笑顔が出た。
「二人とも座って!なんだか落ち着かなくて..とにかく二人に会えて今すっごくホッとしちゃったぁ...」
「え?僕はアキと二人きりがいいのにぃ...」
「タカミ、敵陣の中枢の中女性一人だ。緊張もするだろう」
「そうですよ。少なくともタカミが食事に夢中の間はお邪魔させていただきますよ。僕もアキさんと飲むなんて初めてですからね」
「そういえば、そう..だよね。っていうかヒノカ君も飲むの?」
「アキさんだって飲んでるじゃないですか。こちらの国の食事はタカマハラの物とは違って、料理は味が薄味ですが独特のハーブをよく使います。お酒も
全体的に少しきつめかもしれませんね」
「さすがヒノカ君、確かに...ちょっと酔ってきたかも...」
少し頬が赤くなっているアキの様子を見たヒノカはスッと手を伸ばし彼女の頬に自分の手を当てた。
「確かに、ちょっと熱いですね。でも頬がピンクでそのほうがもっと可愛らしいと思いますよ」
アキはその言葉を聞いてもヒノカからだと思うと素直に喜んでしまう、まるで弟に言われているような、というか言った優しい笑顔の本人の
方が可愛いいと思ってしまう。
しばらく飲みながら会話を楽しんでいるとあっという間に時間はすぎ、いつの間にか周りは酒と葉巻の匂いで包まれる時間になっていた。
「あれ~?このボトルもう空いちゃったよぉ、ねぇカスガ、誰かに呼んで持ってこさせて。」
「タカミ、ほどほどにしておけ。明日の任務に障るぞ。」
「大丈夫~ こんなのいつものことじゃん、たいしたことないよぉ...。..っ...ヒック....」
「まったく.....」
「お疲れ様ですカスガさん、タカミさんの事頼みましたよ」
かなり酔っ払ってふらつくタカミに肩を貸し嫌な役回りが回ってきたという表情のカスガをにっこりヒノカは笑顔で見送っている。
「ふふ、アキさんも結構酔ってるみたいですね。お家までお送りしますよ。」
ぽーっとした顔のアキはグラスを持ったままヒノカにぐったりと寄りかかっていた顔を上げ、アルコールで潤んだ瞳でヒノカを見上げた。
「ん....わたし...そんなに....?....あれ....おかしいな.....頭がクラクラ...する........」
「......アキさん、そんな顔で見つめてたら危ないですよ...一応僕だって男ですから...」
アキを抱き支えたまま顔を赤らめてそむけたヒノカの言葉は酔ったアキには理解されておらずうつろな目でその場から動こうとしない。
「ヒノカ君.....好き....」
「え??」
小さく囁かれた言葉にヒノカは目を見開き胸が大きく高鳴った。
「......アキ..さん?」
使用人たちがあわただしく準備を進めていた。
この男だらけの暗く穏やかとは言いがたい会食に招かれた唯一の女性、アキ・ミヤズは広い衣裳部屋の鏡の前で数人の使用人たちによって
されるがままに慣れない化粧や裾の長いドレスに緊張しながら座っていた。
いくら着替えが必要だったって...この服では帰ったとき余計面倒になりそうな....
昼間アクトと起きた事件により、着替えを必要としていたアキだが目の前に広がる何十着というさまざまなドレスを見ても、どれも普段着れるような、むしろ
一般市民が着ているような服はなく、結局後から来た使用人に薦められるまま用意されたドレスを着てあれやこれやとアクセサリーも付けられていく。
はぁ...なんだか今日は一日中緊張してる気がする......
コンコン
「失礼します。ディナーの準備が整いましたのでお迎えに...っきゃあ!」
ドアを開け入ろうとしたメイドを押しのけて隣から急に青年が現れた。
「アキ!着替え終わった?」
「タカミ!...急に入ってくるなんて、ビックリしちゃった..」
「撲あんまり待つのは得意じゃないんだぁ。それより着替え終わったなら行こ、お腹すいちゃったよ」
「う、うん..」
そう頷くとタカミは唖然とするメイド達を気にもせずアキの手をひっぱりスタスタと部屋を去っていった。
「うわぁ....やっぱりお城って広いね、迷子になっちゃいそう」
「だから僕が一緒にいれば平気でしょ?」
握っている手に少し力を入れてアキの方へウィンクするタカミはあまりにも無邪気でアキの緊張をほぐしてくれる。
「そーいえば...」
「何...?」
「...アキって可愛いのは知ってたけど、化粧すると雰囲気変わるね」
「え?」
「キレイ」
手を握られながら嘘のない瞳で囁かれるとさすがに鈍いアキでも顔が赤くなってしまう。
「ん、ありがとう」
正直想像していた晩餐会とは違う。なぜかアキの想像ではもっとかしこまっていて長いテーブルを向かい合って座るような。だが今開けられた扉の向こうは、
広い部屋にいくつも丸いテーブルがありそこに料理が置かれ、召使たちが酒を運びながら歩いている。薄暗い照明と弦楽器の音、変わった少し匂いに癖のある壁に飾られている
沢山の薄紫色の花が鼻をかすめ、どこからか談笑が聞こえてもくる。なんだかまとまりがなくどこか妖しい雰囲気だった。
その奥の中心で家来に酒を注がれながらゆったりした椅子に座っているのがこの国の王、コトヒラだ。アキは周りを見渡した後彼を見つけ緊張がまた戻ってきた、向こうが自分の
存在に気づき視線が合わさると慌ててその場でぎこちないお辞儀をした、するとコトヒラは元の位置に視線を戻し何かを家来に伝えているようだ。とにかくアキはホッとして緊張を
和らげるために何か飲むもの探しあたりを見回す、と。
「アキ。はい、これ」
赤い果実酒を差し出してきたのはこの城内で頼れる存在(?)のタカミだった。既に料理を乗せた皿を持ち相変わらず緊張とは無縁といった様子だ。
「ありがと。...なんだかディナーというかチナキさんのお店みたいだなぁ...」
「誰それ?ん!美味しい!アキも食べなよ!」
ボーっと眺めるアキとは対照的にタカミは近くの席に既に腰を下ろし料理を楽しんでいる。
なんだか落ち着かないからかなぁ...食欲ないし...ちょっと飲んだら帰ろう....
そう思うとアキはグラスを傾け、その横ではタカミは料理に夢中な様子、そんな二人の席に歩み寄ってきたのは長身の男性、カスガと
落ち着いた雰囲気がお互いよく似合う小柄の青年ヒノカである。
「アキ・ミヤズ、驚いたな..タカミが連れてきたのか?」
「うん」
カスガが問うとタカミは視線は料理のまま答えた。
「こんばんは、アキさん。なんだか普段と雰囲気が違いますね。とても似合っていますよ。」
にっこり笑うヒノカの笑顔はいつでも安心できる。中性的な雰囲気のせいかヒノカの傍にいると落ち着き素直な自分が出せる事はアキ自身もよく分かっていた、味方が増えたような
気になったアキはようやく笑顔が出た。
「二人とも座って!なんだか落ち着かなくて..とにかく二人に会えて今すっごくホッとしちゃったぁ...」
「え?僕はアキと二人きりがいいのにぃ...」
「タカミ、敵陣の中枢の中女性一人だ。緊張もするだろう」
「そうですよ。少なくともタカミが食事に夢中の間はお邪魔させていただきますよ。僕もアキさんと飲むなんて初めてですからね」
「そういえば、そう..だよね。っていうかヒノカ君も飲むの?」
「アキさんだって飲んでるじゃないですか。こちらの国の食事はタカマハラの物とは違って、料理は味が薄味ですが独特のハーブをよく使います。お酒も
全体的に少しきつめかもしれませんね」
「さすがヒノカ君、確かに...ちょっと酔ってきたかも...」
少し頬が赤くなっているアキの様子を見たヒノカはスッと手を伸ばし彼女の頬に自分の手を当てた。
「確かに、ちょっと熱いですね。でも頬がピンクでそのほうがもっと可愛らしいと思いますよ」
アキはその言葉を聞いてもヒノカからだと思うと素直に喜んでしまう、まるで弟に言われているような、というか言った優しい笑顔の本人の
方が可愛いいと思ってしまう。
しばらく飲みながら会話を楽しんでいるとあっという間に時間はすぎ、いつの間にか周りは酒と葉巻の匂いで包まれる時間になっていた。
「あれ~?このボトルもう空いちゃったよぉ、ねぇカスガ、誰かに呼んで持ってこさせて。」
「タカミ、ほどほどにしておけ。明日の任務に障るぞ。」
「大丈夫~ こんなのいつものことじゃん、たいしたことないよぉ...。..っ...ヒック....」
「まったく.....」
「お疲れ様ですカスガさん、タカミさんの事頼みましたよ」
かなり酔っ払ってふらつくタカミに肩を貸し嫌な役回りが回ってきたという表情のカスガをにっこりヒノカは笑顔で見送っている。
「ふふ、アキさんも結構酔ってるみたいですね。お家までお送りしますよ。」
ぽーっとした顔のアキはグラスを持ったままヒノカにぐったりと寄りかかっていた顔を上げ、アルコールで潤んだ瞳でヒノカを見上げた。
「ん....わたし...そんなに....?....あれ....おかしいな.....頭がクラクラ...する........」
「......アキさん、そんな顔で見つめてたら危ないですよ...一応僕だって男ですから...」
アキを抱き支えたまま顔を赤らめてそむけたヒノカの言葉は酔ったアキには理解されておらずうつろな目でその場から動こうとしない。
「ヒノカ君.....好き....」
「え??」
小さく囁かれた言葉にヒノカは目を見開き胸が大きく高鳴った。
「......アキ..さん?」