酔っ払い注意!
「..................好き...皆優しく..て...皆大好き......カヤナ....」
「あっ..........」
そういうことか。皆大好き、男女関係なく家族や戦女神含め多数...という意味を理解したヒノカは呆気にとられ、更にがっくりと身体の緊張が解けた。
「......このひとは....まったく、無防備無自覚すぎて仕方ないですね。」
そして彼はため息を尽きアキを抱えて席を離れた。
一人夜の暗い廊下を走りながら辺りを見回しているアクトの目に止まったのは自分が探し回って息を切らさせた張本人、アキが一人広い廊下の大きな円柱に寄りかかって座っていた。
急いで駆け寄ってみて気づいたが彼女はかなり酔っているようだ。
「おい!アキ、しっかりしろ、アキ」
「.....ん.....アクトさん....?」
「なんでこんな所にいるんだよ、広間に行ってもいないから探したんだぜ」
「...あ...そっか..私皆と飲んで酔っちゃって....あれ、でもなんで此処に....?」
「アクトさん...」
声のした方へ肩ひざを着いてアキの顔を覗き込んでいたアクトの顔が上がるとそこにはグラスを持ったヒノカが立っていた。
「ヒノカ...お前..あぁそうか、お前がアキを連れ出したって訳か」
「連れ出したなんて人聞きが悪いですね。アキさんが酔っ払っていたので家まで送って差し上げようとしただけですよ、ちなみに途中水が欲しいと言ったので取りに行ってたんですが、
まさか今此処にアクトさんがいるとは...」
「いちゃ悪いのかよ」
挑戦的な目でかかってくるアクトにまるで動じない様子でヒノカは冷静に答える。
「とんでもない。ただアキさんは僕がちゃんと家までお送りしますからご心配はいらないと言いたかっただけです。」
「ほぉ、いつからアキの家はお前の部屋と同じ方向になったかな」
「偶然ですよ、気がつきませんでした」
さらりと返すヒノカにアクトは苛立った。静かな廊下に二人の男がにらみ合って火花を散らしている。
「.....。アキさん、お水持って来ましたよ、どうぞ」
「...あ..ありがと..」
水を手渡されアキは一気にグラスの中を空にし、少し楽になったようで立ち上がろうとするがアクトの手がしっかりとアキを支えているためほぼ彼の胸に寄りかかったままだ。
「僕の部屋でよければお代わりいかがですか?」
「えっ...?」
「ヒノカ!お前っ....!!」
「ふふ、冗談ですよ」
ヒノカの冗談だというものの真理は分からないがアクトははなから疑っていたし実際彼の部屋はすぐ傍らしく、更に城門とは真逆に位置している。
「では僕はこれで失礼しますね、アキさんも酔いが少し冷めてきたみたいですし。」
「さっさと行けよ」
「お休みなさい」
「ご、ごめんねヒノカ君!迷惑かけちゃって....あの..ありがとう!」
にっこり頷いてヒノカは廊下の奥へと消えていった。彼を見送り一息ついてアキは自分を支えてくれているアクトを見上げた。
「あ、アクトさんも...すみません、私もう平気ですから!ちゃんと帰れま..」
そう言い終る前にアクトの罵声が降りかかる。
「バカかお前!!」
「!!?」
「何でそんなになるまで飲むんだ!!何でこんな所で寝てる!!しかも何でこんな薄着で..」
「あ、あの...こんなに酔っちゃうなんて思わなくて...気がついたら...ヒノカ君が親切に...」
「お前のそのバカなほど鈍感な所がウザイんだよ!!ムカつくんだよ!!いいかげん気づけよ!!」
「............ごめんなさい.........」
あまりにも思いっきり怒鳴られアキはうつむき小さく誤ったがその声は震え、次第に涙が流れる。酔いのせいもあってか制御が効かず流れる涙と小さく震える肩が止まらない。
あぁ....何やってんだ俺......またやっちまった......
こんな顔をさせたいんじゃないのに....
一気に後悔が押し寄せるも、泣きながら誤る彼女が可愛いとも思ってしまうアクトは自身に余計苛立った。
「....もういい...帰るぞ...」
「...........はい」
ルアが照らす城門までの庭園の道を二人は一言も話さず歩いた。
そういえば...何かいつもより綺麗な気がする.....この庭園もアキも。
これであのいつもの笑顔だったら...
泣き顔に変えてしまう自分がムカつく。
頭痛てぇ........
「...........アクトさん...」
「ん...?」
「あの、どうして今夜皆さんと一緒にいなかったんですか...?昼間は来るって行ってませんでしたっけ...?」
沈黙を破った突然のアキの言葉が驚いた、そして正直嬉しかった。アキも自分を探していたかとそう思うと嬉しい。
「何だよ、居て欲しかったのか?」
口元に笑みを浮かべながら振り向くアクトにアキは顔を赤らめる。
「ち、ちがっ!ただ..ちょっと気になっただけです...」
「..!.....はは、そうか気になってたのかお前。そうか、ははっ」
見るからに嬉しそうに笑い出したアクトは子供のようだ。
「...もう!いいです別に。どうせめんどくさくなったとかでしょ..!」
からかわれた気がして恥ずかしくなったアキは怒ったように彼を追い抜いて前へ出ようと歩みを速めたが、後ろから伸びた手に腕を引かれてしまう。そのまま
後ろからアクトの両手で抱きしめられ驚いた。
「聞かないのか?居なかった理由」
「...別にいいです..」
「ちょっと探し物してた」
「探しもの?」
「あぁ、でも結局それは諦めた」
「どうしてですか?」
「....一番見つけたいものじゃなかったから」
「はぁ...?何ですかそれ?」
「知りたいなら昼間の続きするが?」
「もう!からかわないでください!いいですからもう!帰りましょ...はぁ...」
アクトの意地悪さと長い一日にため息をつくとアキは家へと歩き出す。
結局また進展なし...か...
プレゼントは気持ちの問題、ねぇ.....
アクトは数時間前庭師シシタと話をしていた時の事を思い出した。女性の機嫌を直す、いや、喜ばせる方法のひとつがプレゼントだとシシタは言っていた。
どんなものでもいいから気持ちのこもった物。誰かにプレゼントなど経験のないアクトは賑やかな夜の市場でさまざまな店に入る入らないでうろうろしていたらしく
気づけばかなりの時間がたってしまった。一度アキの事が気になったらもうその時には買い物は忘れ足が勝手に城へと戻って行った。
女相手って面倒くせぇな......
でも...こういう気分は...........まぁ悪くない.....