二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

六年生でし・も・ね・た!

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
―暁九つ、善法寺伊作と七松小平太、立花仙蔵はい組の部屋へ、潮江文次郎、食満留三郎、中在家長次の三名はろ組の部屋へと集まった。これには訳がある。いつものように、各々が入浴を終え、鍛錬に励もうか、あるいは床に入って休もうかとしていた矢先、“六年生は指定した二つのグループに別れ、部屋で待機するように”との学園長直々の御達しがあったのだ。(どうせいつもの学園長の思いつきだろう―)六人はそう思いながらも渋々移動を開始。こうして二つのグループに別れ、眠い目を擦りながら深夜に頭を付き合わせる破目になったという訳だった。

****

(伊作、小平太、仙蔵グループ)
自室にて、仙蔵は苛々と布団の上で胡坐を掻いていた。目の前に座った伊作と小平太も、迷惑そうな顔で欠伸を噛み殺している。
「大体、何でこの三人なんだ」
 仙蔵は目の前の二人に問うた。目の前の二人だってそんな事知る由も無い事は分かっている。―が、どうも仙蔵の腹の虫は納まらない。明日は朝から、一年が授業で使う首実験の道具を揃えねばならなかった。学園長の気紛れなんかで(今に始まった事ではないけれど)、大事な睡眠時間を削られてはたまらない。
「さぁ・・・?この三人に何か共通点はあったかな?」
 伊作は、小平太と仙蔵の顔を順に見やる。
「私はO型だぞ」
 小平太が元気を有り余したような(実際、有り余しているのだろう)声で言うが、仙蔵は即座に首を振った。
「そんなに単純じゃないだろう。私はAB型だ」
「じゃあ・・・何だろう?向こうの三人の共通点っていうのも分からないしね」
 仙蔵はろ組に集まっているメンバーを思い浮かべた。
「顔の良し悪しか?でもそれなら、小平太と食満が逆のはずだしなぁ」
 小平太本人を目の前にして、なかなか失礼な事を言っている。伊作が苦笑いしてフォローを入れようとしたところ、障子が音を立てて開いた。三人同時にそちらを見やると、何やら見覚えの無い人物が立っている。きれ長の瞳に細くて長い髪、六年の忍装束を着ているものの、まったく心当たりが無い。咄嗟に警戒して仙蔵が苦無(くない)を構えると、彼は慌てて両手を振った。
「違います!違いますって!立花先輩!」
 立花、先輩・・・?仙蔵は胡乱げに彼を上から下まで眺めやった。どう見ても同い年くらいの背格好ではないか。
「俺ですよ俺!一年は組の摂津のきり丸ですって!」
「「「はぁ?!」」」
 三人は異口同音に素っ頓狂な声を挙げた。
「きり丸ぅ?」
 よおく見てみると確かに、きり丸の面影が無いわけではない。首元には彼が気に入ってよくしていた黒の布が巻きつけてあるし、涼しげな目元や女のような顔立ちはきり丸と言えばきり丸が持っていた容姿とよく似ている。が、しかし・・・
「そんな事信じられる訳ないだろ!」
 そのまま仙蔵が勢いよく苦無を振り下ろすと、きり丸と名乗る人物は必死の形相でそれを避けた。
「いや信じて下さいって!本当なんですから!」
 二人のやり取りを傍観していた伊作は、思いついたように袖に手を入れて一枚の銭を取り出す。
「そーれ」
 部屋の隅へ向かってそれを投げると、矢の如くその人物は銭に飛びついた。
「・・・きり丸本人で間違いないようだね」
「だな」
 伊作と小平太は揃って頷く。仙蔵も呆れ顔で苦無を袂に仕舞った。
「それにしても―、どうしたんだきり丸。そんな姿になって。変化の術か?」
「一年は組にそんな高等技術可能だと思いますか?」
 (ちゃっかりと銭を懐に仕舞いながら)きり丸は溜息を吐いた。
「これには深い訳があるんです・・・」
 小平太はふーんと意味有りげに笑う。
「それと学園長の御達しと、何か関係があるって訳だな」
 きり丸は神妙そうに頷いた。
「そうなんです。実は―・・・」


(文次郎、留三郎、長次グループ)
「裏裏山でびーえるの神様に遭っただぁー?!」
 文次郎が大声を挙げると、彼らと同じ十五歳の姿になった団蔵はびくりと我らが会計委員長の言葉に身体を震わせた。そうやって肩を落として正座をしている様態はいつもの団蔵と何ら変わりは無いのに、その体格の良さと幾分大人びた顔付きのせいで異様な違和感を醸し出している。おまけに文次郎にとって気に食わないのは、目測する限り、団蔵の身体の方が文次郎の身体よりも幾らかしっかりとして見える事だった。
「大体なんだ、その“びーえる”ってのは?聞き慣れない言葉だな、南蛮の言語か?」
 長次が何やらもそもそと呟く。口元まで耳を持っていった留三郎は、途端に困惑した表情を浮かべて言った。
「男色の意味だそうだ」
「はぁ?団蔵、お前、男色の神様に遭って、それで歳を一気に五つも取っちまったって訳か?意味が分からんな」
 団蔵はより一層、大きな身体を縮こませた。
「僕もよく分からないんです・・・自分でも信じられないんですけど、でも本当の事なんです・・・。―今日の昼間、きり丸のアルバイトの手伝いで裏裏山へ茸を取りに行った時の事です。自分の事をびーえるの神と名乗る老人と出会って、少し話をしていたんですが、途中で視界が真っ黒になって―・・・、それで気が付いたら僕もきり丸も身体がこんなふうになっていたんです。急いでその老人を探したんですけど見つからなくて・・・。学園に戻って、学園長にこっそりと相談してみたところ、その神は十年に一度現れるか現れないかの珍しい神様で、少年の―殊に男性同士の―色恋沙汰が大好きだそうなんです。だから、神様に・・・その、男性同士の色恋話をとくと聞かせてやれば、満足して僕ときり丸にかけた呪いも解いてくれるだろうって・・・。前にも一度、これと似たような事件が忍術学園で起こった事があるらしいんです」
「んな阿呆な・・・」
 文次郎は呆れたように言った。
「そんな神様居て堪るか」
「信じて下さい!潮江先輩!そうじゃないと・・・僕ときり丸は元の姿に戻れません!」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ」
 留三郎が口を挿んだ。
「仮にお前のその話が本当だとしてだな、俺達に此処で色恋話をしろって言うのか?それぞれの・・・その、恋仲の?」
 俺は絶対に嫌だぞという心の声がありありと顔に浮き出ている。そりゃあ嫌だろうと団蔵も思う。が、どうしてもこの人達にやって貰わないと困るのだ。一年は組の教室に、二人だけ体躯の大きなよい子が居ては堪らない。
「・・・どうして俺達なんだ」
 ぼそりと、長次が呟いた。文次郎もはっとしたように頷く。
「そうだそうだ。俺達以外にもこの学園には恋仲の奴らは沢山いるんじゃないのか?」
「それは・・・学園長先生に、六年生が一番お盛んだろうから話題にも事欠かないだろうと言われましたので・・・」
 文次郎、留三郎が揃って頭の中であの小さな老人を殴りにかかったのは言うまでも無い。これはどう考えても、貧乏籤を引いたとしか思えない。
「よーし、分かった。やってやろうじゃないか」
「おい!」
 留三郎が立ち上がったが、文次郎は気にしなかった。
「そうしないと、お前ときり丸は元に戻れないんだろう?良いじゃないか。さっさと終わらせてその胸糞悪いびーえる?の神様とやらを満足させてやろう・・・それとも何か?お前と伊作との仲は第三者には話せないほど嫌らしいものなのか?」