記憶喪失!
「ふーん.............いいぜ」
と二人が辿りついたのは一軒の宿屋。見たこともない階段をアクトに着いていきながら上がるといくつもの部屋のドアの一つで止まり彼に続き部屋へ入る。
中はソファ、ベッド、テーブルにバスルームとアキの部屋に似て必要程度な家具だったが違っていたのはそれらのデザインが派手で全体的に妖艶な雰囲気だった。
「ここ....アクトさんの部屋ですか?」
「いや、俺の部屋は城にある」
「じゃあ...ここは一体.......わっ!」
急に視界が回転したと思ったら自分の目の前でアクトの顔が自分を見下ろしているのが分かる。何が何だか分からず聞いてみるが
「だからそういうことだよ。」
「え....?」(そういうことってどういうこと??)
「......男と女が二人で一つの部屋だぞ.....分かれよ!!」
「あ........」(そっか.....私この人の恋人なんだっけ....)
混乱してもこれが今までの自分たちなのだと受け入れようと考えながらぐっと動かないよう目をつぶって堪えるアキ。
(これが普通のカップルなんだよね...でもちょっと怖い...)
アクトの手がアキの脚を下からゆっくりなぞる、首筋には唇が這う。彼の手が太もも丈のスカートに入り込んだときアキは思わず声をあげた。
「やっ......! ...........あ....ごめんなさい.....」
「............」
アキの反応と同時に視線を合わせたのもつかの間、彼は一気にアキの帯のようなベルトを取り去り前を大きく開き彼女の白い肌をあらわにさせた。
「!やっぱり駄目!!....ごめんなさい...やっぱり....出来ません....なんでかな...覚えてないからちょっと怖くて.....」
「.......」
アキは両手で胸元を押さえ真っ赤な顔でただこちらをじっと見つめている彼に訴えた。
しかしアクトは表情を変えずにそのままこちらに覆いかぶさろうと接近してきアキは目をつぶって服を握っていた手に力を込めた。
バサッ。
「..................?....あれ....?」
何かの音とベッドの揺れる振動だけ感じアキが恐る恐る目を開けてみると目の前に迫っていたアクトが今はアキの隣で仰向けになって寝転んでいる。
「...アクトさん?」
「....ヤル気うせた」
「え?」
「今のお前とヤッてもつまんねーだろ。......ったく。」
「アクトさん....」
つまらなさそうに寝返りアキに背を向けたアクトに呆気にとられていたアキも次第に笑顔が現れる。その温かい背中にアキは寄り添うようにそっと触れた。
「....やっぱりアクトさんは私の恋人なんですね...優しいですもん....」
「はぁ?別に優しいとかじゃねぇよ。言ったろ、ただヤル気うせただけだっつーの。...チッ、一眠りしたら帰るぞ。」
「ふふ..はーい。」
数時間後。
「おい、アキ起きろ」
「う~ん...もう少し....」
「起きろ!」
「わっ!...あっ!!」
目覚めたと同時にアクトの顔が目の前にありアキは思わず身を引き後ずさろうとした途端、手を置こうにも虚しく宙を煽いそのままベッドから勢いよく落下した。
「あ..おい!..アキ?大丈夫か...?」
「.........誰?」
「............。」
完。