永遠にうしなわれしもの 第一章
永遠に失われしもの
揺れる馬車の中、
シエルとセバスチャンは互いに向き合いつつも、
お互いの視線を絡めることなく、
かといって互いに無視するには大きすぎる相手の存在感を感じながら、
長い間沈黙を保っていた。
屋敷を出て、広大な森をぬけ、
馬車はようやく山の峠道にさしかかり、
揺れは一層激しくなった。
先に沈黙を破ったのは、シエルだった。
「あいつらの契約が完了したときに
お前がどう動くかと楽しみにしていたが、
中々に笑えたぞセバスチャン。
僕を手にかけようとするとはな」
口角をやや上に持ち上げながら、
威嚇と冷笑の混ざった眼差しを
セバスチャンに向ける。
漆黒の闇を思わせる髪色に、
白過ぎるほどの肌、
気品のよい薄い唇、
紅茶色の眼を持つ悪魔は、
その耳触りのよいテノールの声を少しばかり低めて、
言葉をひとつひとつかみ締めるように答え始めた。
「復讐が完了した際には魂をいただける。
だからこそ私はあなたにお仕えしてきた。」
・・そうさ、セバスチャン。
僕とて自分の魂になんの未練があったわけでもない。
「僕はこうして生きている。」
間髪入れずにシエルが釘を刺す。
揺れる馬車の中、
シエルとセバスチャンは互いに向き合いつつも、
お互いの視線を絡めることなく、
かといって互いに無視するには大きすぎる相手の存在感を感じながら、
長い間沈黙を保っていた。
屋敷を出て、広大な森をぬけ、
馬車はようやく山の峠道にさしかかり、
揺れは一層激しくなった。
先に沈黙を破ったのは、シエルだった。
「あいつらの契約が完了したときに
お前がどう動くかと楽しみにしていたが、
中々に笑えたぞセバスチャン。
僕を手にかけようとするとはな」
口角をやや上に持ち上げながら、
威嚇と冷笑の混ざった眼差しを
セバスチャンに向ける。
漆黒の闇を思わせる髪色に、
白過ぎるほどの肌、
気品のよい薄い唇、
紅茶色の眼を持つ悪魔は、
その耳触りのよいテノールの声を少しばかり低めて、
言葉をひとつひとつかみ締めるように答え始めた。
「復讐が完了した際には魂をいただける。
だからこそ私はあなたにお仕えしてきた。」
・・そうさ、セバスチャン。
僕とて自分の魂になんの未練があったわけでもない。
「僕はこうして生きている。」
間髪入れずにシエルが釘を刺す。
作品名:永遠にうしなわれしもの 第一章 作家名:くろ