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永遠にうしなわれしもの 第一章

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 仕上げの黒いリボンタイをきゅっと結び終わると、
 セバスチャンは立ち上がって、シエルをじっと見つめて、ため息をついた。


 「人間の血すら飲めないようでは、
  人間から魂を奪う契約なんて望めませんね、坊ちゃんには。」

 「は!お前といっしょにするな!!」
 シエルは明らかに馬鹿にされて、腹を立てている。


 「悪魔になったことを、今更後悔されているのですか?」 
  セバスチャンは暗赤色の悪魔の眼を少し細めた。


 「違う!ただそんな物は飲みたくないし、
 食べたくないだけだ。」

 「悪魔の血は、飢えた獣のようにがつがつと飲むことができるのに?」
 セバスチャンは不敵な笑みを口元に讃えて、
 なおもシエルに問い続ける。

 「ああ、貴様の血を吸おうが、なんの気の咎めも感じないからな。」
 シエルは吐き捨てるように答えた。


 「ふふ。人間の血では、悪魔の良心の呵責になるというわけですね。
  もっとも、悪魔に本当に良心などというものがあるのかと疑問には思いますが・・」

 ・・確かに悪魔の良心など、お笑い種だ・・


 「人間の記憶の残る悪魔というのは、厄介なものですね。」
 セバスチャンは細い顎に手を添えて、思案顔でつぶやいた。