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永遠に失われしもの 第三章

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「セバスチャン!!」

 シエルが思わずその名を叫ぶと、
漆黒の執事は¸くるりと
シエルの方に振りかえった。

 ヴァイオリンを元に戻して、1階に下がろうとすると、
階段下にセバスチャンがいる。

 「申し訳ございません。
  服を着替える前に、お呼びになられたものですから。」

 黒い燕尾服の肘から肩先まで、なにか鋭利なもので切られたように、
 服が破け、下から血にまみれた白いシャツと¸
白い肌がかすかに見え隠れしている。

  ・・人間相手にこんな手傷を負うセバスチャンではないから、
相手は同じ悪魔か、死神か、
それとも天使か?・・

 「何をしてきた!?」
 
 「必要なものを手配してまいりました。」

 胸に手を当て、会釈するセバスチャンだが、
 かすかに肩が震えている。
 よほど傷口が深いのだろう。

 「ああ、ぼっちゃん。
  また喉が渇いてしまいましたか?」

 と微笑するも、やはり少し苦しそうである。
 
 「違う!」
 シエルは少し慌てた様子で、否定した。

 「私は貴方のしもべなのですから、
  べつに気遣いやご遠慮は無用なのですよ。
  それから、先ほど少しだけお聞きしましたが、
  ヴァイオリン、大変進歩していらっしゃる。」

  セバスチャンがいないからこそ。練習していたのに、
  聞かれて気恥ずかしくなるシエルだった。

 「また、ご用事がありましたら、お呼びつけください。
  後ほどお茶をお持ち致します。」