永遠に失われしもの 第三章
「またですか・・・」
ウィルは眼鏡を、指でいじりながら、腹立たしそうにつぶやいた。
「もっと応援増やした方がいいんじゃないんスかぁ~?」
気の抜けた声で、新人のロナルドが答える。
「そうですね、人事課と交渉してみましょう。
こんな事で、サービス残業させられるのはたまらない。」
「これで何件目でしたっけ?」
ロナルドは時計を何度も見つめて、
早く帰りたさそうな雰囲気を前面に出している。
「連続3日目ですね。最初は1人、2日目が2人、今日は4人もです。」
ウイルは手帳をぺらぺらめくって、答えた。
「倍倍じゃないっスかぁ。
すんません。彼女にデート遅れるって連絡していいっスか?」
ウイルが答える前に、ロナルドはそそくさとどこかへ行ってしまった。
「全く・・・」
ウイルは、また死体にもどって、写真を撮っていると、やっとロナルドが帰ってきた。
「それで・・これって、悪魔がらみ、の事件っすか?」
ロナルドはうんざりした口調で尋ねる。
「害獣が魂を強奪してまわってるんですよ。魂の契約もなしで。
あの、セバスチャン・ミカエリスです。」
ウィルの眼鏡越しに、鋭い眼が光る。
「え、あれって、飼い主の首輪付きだったんじゃ?」
「その飼い主も、今や害獣の仲間入りです。」
「うげ」
「こちらの方から、害獣の気配がします。ロナルド・ノックス!
始末書提出する羽目になりたくなかったら、害獣を追ってください。」
「了解ッス!」
作品名:永遠に失われしもの 第三章 作家名:くろ