二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

永遠に失われしもの 第三章

INDEX|9ページ/9ページ|

前のページ
 

 夜の帳に隠れて、声無き悲鳴が広がる。

 小さな民家の窓に、助けを求めるように血まみれの掌が、
 指の数だけの血の筋を描いて、やがて見えなくなっていった。

 やがて民家から黒い陰が、素早く森へと消えていく。
 
 なおも恐ろしい速さで黒い陰が動くと、樹上から声がした。

 「お痛が過ぎるって噂は本当だったのね!」
 甲高い声が響き渡る。
 黒い陰はぴたっと動きを止めた。

 ぶーんと不吉な音がしたかと思うと、
 月の光を一瞬赤いコートが遮り、チェーンソーがきらりと輝いて、
 黒い影に向かって急激に落下する。

 「お久しぶり~。セバスちゃん。」
 黒い陰の主にグレルは思いっきり切りつけるが、
 ひらりとかわされて、チェーンソーはむなしく空を切った。

 月光に照らされた黒い陰は、黒い燕尾服をまとうセバスチャンになった。

 「ああ、グレルさん、お恥ずかしいところをお見せしてしまいましたね。」
 セバスチャンは、優雅に微笑む。

 「派手にやってくれちゃったじゃナイ?
 まるで盛りのついた野獣。
 あ~~~いいワ~セバスちゃん!
 野性味あふれてるアナタも魅力的!」

 グレルは、尚もチェーンソーを振り回している。
 セバスチャンは森の木を蹴って、高く飛び上がり、それを避けながら、答える。

 「今日は貴方が私のお相手というわけですか。」
 グレルは次第に間をつめ、そのチェーンソーは、セバスチャンの前髪数本を切り落とした。

 「そ~よ~。ロナルドに無理いって代わってもらったんだから!ア・ナ・タのために!」
 今度はセバスチャンの鋭い蹴りが、グレルの前髪をかすめる。

 「ね~え。セバスちゃん。
  私聞きたいことがあるんだけど・・」

 「何でしょう?」
 グレルが振り回すチェーンソーが木の枝に当たって、ざざっと地面に落ちてきた。

 「ア~ちょっと待って。
  おっけ~。これぐらい戦っておけば、管理課にも何とかなるワ!。
  アタシ、セバスちゃんを狩りに来たわけじゃないの。」

 と、グレルはチェーンソーを下ろして、たたずむ。
 「最近アイツら、チェックが厳しいのョ。」

 「それで私に会いにきた用件とは?」
 
 グレルは急にもじもじと照れ初めて、
 「アタシは別に構わないのョ・・セバスちゃんに奥さんがいたって・・
  アタシだけを見つめてくれるんなら、不倫でも・・耐えちゃう!」
 と言って、体をくねらせた。

 「・・・・・」

 「だから、アタシにだけは本当のことを言って!
  セバスちゃん、結婚してるの?」

 セバスチャンは大きくため息をついた。

 「あの・・戯言につきあってる暇はないのですが?」
  
 「だってロナルドがセバスチャンには扶養家族がいるって・・」

 「ああ・・なるほど。
  ・・・・・・
  それでは失礼致します。」

 丁寧にお辞儀をして立ち去ろうとするセバスチャンを、グレルは呼び止める。

 「ちょっと待ってよぉぉ。セバスちゃん。
  答えになってないじゃない!!」

 「プライベートは大切にする主義なもので。」
 と振り返り、セバスチャンはにっこり微笑む。

 するとグレルは声を一段低くして、真顔に戻って言った。

 「ねぇ。セバスちゃん。
  真剣な話。
  このままじゃ本格的に、狩られちゃうわよ。
  近々セバスちゃん掃討のための召集命令が出されるって噂だし、
  そうなったら、ホントまずいってば!」

 「貴方も私を狩りたかったのでは?」

 「そりゃさぁ、
  セバスちゃんが私のデスサイズでイってくれるなら、燃えちゃうけどさァ。
  まだあのガキと一緒にいるんでしょ?
  セバスちゃんが、誰かれ構わず拾い喰いするのも、あのガキのせいなの?」

 話しながらグレルは、セバスチャンに近づき、燕尾服の襟の刺繍を指でいじくっている。

 「関係ありませんよ。」
 
 「ホント、セバスちゃんってイイ男ね~。近くでみると一段とス・テ・キ。
  赤い淫らな瞳がたまらな~い!
  ・・・・・
  でも、とにかく一緒にいたら、あのガキだって狙われちゃうんだからね。」

 「私は永遠にあの方のもの。そして私が命にかえても守ります。」

 「あ~あ。妬けちゃう!」

「それでは失礼します。」
 といってセバスチャンは木の枝に飛び乗り、木陰に消えていった。
 「もぉ、忠告はしたからね!今度会うときは・・・」