永遠に失われしもの 第三章
混濁する意識の中で、
自分でつい今しがた、セバスチャンに答えた言葉を繰り返し唱えていた。
「僕が、決める。」
・・僕を辱め汚したものは、もうこの世にはいない。
僕の復讐は果たされた。
あとは、セバスチャンに魂を喰わせるだけの存在だった僕を、悪魔として蘇らせる契約を結んだのはアロイスだ。
だが彼ももういない。
僕が半身を代償に、お前を召還したあの夜、
全ての希望と未来は既に閉ざされたのだ。
いまさら悪魔の生を与えられても、それが何だというのだ?
だからこそ、
悪魔の魂さえ砕く刃によって、
僕は悪魔としての自分の生を終えよう。
僕が選び取り、決めるのだ。
だけどセバスチャン、
お前が僕を手にかけるのは、僕が命令したときだけだ。
そしてお前が消滅するのも、僕がそう命令したときだけだ・・
今は、セバスチャンのような悪魔がどれ程、
自分の魂に執着したのか、分かる。
それは悪魔である僕が、人間とではなく、あの漆黒の悪魔と契約を交わしているから。
この飢えと渇きが襲うたび、
セバスチャンの血の甘美さに心震わせるとき、
僕もまた、永遠に得られない魂の契約に、縛られているということを・・
思い知らされるのだ。
セバスチャン、契約の代償としてお前の魂を喰らえるのなら、
きっと僕は何だってするだろう。
悪魔の契約・・身を焦がす程の渇望と執着
アロイスが欲しがった愛・・
だけどこれは
愛じゃない。
作品名:永遠に失われしもの 第三章 作家名:くろ