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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝その6

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 眼に毒なんじゃないのかという程に深い緑色の森。
 四方は高い樹に囲まれて、好き勝手に伸ばした枝葉で太陽が、ましてや青い空すら見えない。

「……で」

「どうした」

「なんで森の中を彷徨うのかな?」

「森の中を歩いたからだろう」

 格好付けて白玉楼を出たものの、人里、そして紅魔館とやらまでの道程(みちのり)なんて俺は知らない。だから、この幻想郷の俺に道案内を頼み、その通りに歩いたわけなのだが、どうしてか今は森の中を彷徨っている。
 恐らく、と言うか確実にこいつは俺を弄んでいやがる。何時もの事だが。

「お前さんの案内通りに歩けば、ちゃんと人里に着くのか?」

「あー。どうだろうな。下手すればこのまま野垂れ死に」

「オーケー。お前ぼこぼこにしてやる。今すぐ此処に降りてこい」

「出来ないだろうに」

 五月蠅い、結果は解っていようが、兎に角そうしたいんだよ。相も変わらず実態のないこいつとのこの無駄なやりとりは、相も変わらず無駄に腹が立つばかりだ。

「真面目にやってくれよ。こっちはこの身一つしかないんだぜ」

「あー、それは大変」

 水も食料も無い。本当に野垂れ死にするやもしれないんだ。こんなところで死ねば、その死体は動物か妖怪かが処理して腹を満たしてくれるだろう。だが、生憎と俺はそうさせるつもりは無いのだ。
 こんな状態で、こんな深い森を延々と歩いていれば、腹も体力も減るもので。

「……」

「腹でも減ったか?」

「……生理現象故のこと」

 ぐー、と食べ物を催促する腹。
 あいつの笑い声が聞こえる。こいつの姿こそ映らないが、腹を抱えて笑う姿が眼に浮かぶ。腹立つ。ぶん殴ってやりたいのに、それが出来ないのが非常にもどかしい。

「はっは。良いだろう、ちゃんと案内してやるさ」

「初めからそうしてくれ」

 ざわざわと、葉が擦れ立ち森がざわめく。まるで俺を誘っているかのように。
 何処までも遠い深緑の森。
 もう一人の俺と言う存在が指し示す通りに、森に紛れるように歩き出す。
作品名:東方無風伝その6 作家名:国城 龍耶