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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝その6

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 暗がりの森の中。時刻としてはもう夕刻だろう。栄えた樹が陽を隠し、辺りは夜の暗がりに似たモノがある。
 あいつに言われるままに歩いていれば、何処かで歌声が聞こえた。それ以前にも聞いたことがある声だった。
 案内する、と言ったにも関わらずにどうしてこんなところに。そう思いもしたが、空腹のこの状態では有り難かった。
 何でも、人里に向かうよりも此方の方が近かったから、だそうだ。本当なのか疑わしい。
 俺も魔理沙のように空を飛ぶことが出来れば、こんな苦労はせずに済むのだろうにな。
 歌声と紅い光に誘われるように歩けば、やっぱり紅い提灯を吊り下げた屋台に辿り着いた。

「いらっしゃーい」

 そう言って俺を迎えるのは、あの鳥の妖怪。確か名はミスティアと言ったか。
 此処に立ち寄るのも一カ月振りだが、何も変わっていない様子だ。

「八つ目鰻と、熱燗」

「はいはーい」

 取り敢えず、この冷える外、温かい物を喰いたかった。

「おや、あんたは何時ぞやの人間じゃないかえ」

「おや、そう言うあんたは何時ぞやの死神」

 変わらないのは店だけでなく、客もだったようだ。と言っても今回は魔理沙がいないが。

「久し振りだねぇ。てっきりあたいのことなんか忘れてるもんだと思ってたよ」

「こちらこそ。死神なんてものは到底忘れそうにないが、俺のことなんかは忘れられているかと」

「あんなことを口走る人間嫌いの人間だなんて、あんたくらいなものだからねえ」

 全くだ、と自分のことながら同意して、熱燗に口を付ける。この寒い中では骨身に沁みわたる。身体の内側から温まる、最高の酒だ。

「あんた、白玉楼に行ったんだったね。どうしてこんなところに」

「目的は果たしたからな。今は人里か、紅魔館とやらに向かおうと」

「紅魔館?」

 小町の眼が細められる。

「そうだが。知っているのか?」

 八つ目鰻を齧りながら言えば、小町は少し考える素振りを見せて言った。

「まぁ、悪くはされないだろうけど、気を付けることだよ」

「……何に」

「あそこは、人を喰らう吸血鬼の住まう館さ」

 死神はそう言った。
作品名:東方無風伝その6 作家名:国城 龍耶