二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

続 歌舞伎町へようこそ

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

 そのまま引き寄せられて唇が重なった。驚いている金時の唇に唇をただ押し付けるだけという拙いものだったが金時の思考を奪うには十分すぎる威力を持っていた。しかし直ぐに我に返ると折角の好機を逃す筈もなく高杉が離そうとした後頭部を掴んで尚深く口付けた。今度は遠慮なく隙間から舌を捻じ込んで。驚いたのか強張った体を宥めるように抱き締めて角度をつけて逃げる舌を執拗に追いかけて絡める。息が出来ないのか抗議するように派手な朱色のシャツを引っ張ったがそれさえ愛撫に感じる。
 高杉の形の良い小さな頭を撫で髪を掻き乱すと甘ったるい鼻声が堪えきれず零れ落ちる。啄ばむように口付け呼吸する間を与え落ち着かせてから再びソファに体を押し付けて貪る。唾液の跳ねる音が静かな室内に響いた。この壁の向こうはすでに太陽が昇り働いている人たちがいる。夜が営業時間という店が大半だがそればかりではないのだ。それなのに唇を甘噛みされ引っ張られたあと癒すように舐られる。堪らなかった。思考がぼやけ霞がかかり何も考えられなくなる。抵抗しなければと思うのに気持ちのよさに体が蕩け出し動けなくなった。ただ無様に崩れ落ちまいと必死に男にしがみ付いているしか出来ない。

 どれほど口付けていただろうか。
 ゆっくりと離れると同時に透明な唾液が糸を引いた。それを舌で舐めとった金時が唇だけではなく火照った頬に、額に、瞼に、耳朶に何度も口付けて荒い呼吸のままぐったりと凭れかかる様に腕の中に沈んでいる高杉を抱き締めた。

「どうしよう、やっぱりすげぇ好きなんですけど…」
「…ぁあ?」
「キスだけじゃ足りないって言ったら怒る?」
「ぶった斬る…」
 朦朧とした中にも高杉らしい言葉が飛び出して金時は小さく笑った。
「なんでキスしてくれたの」
「……普通、訊くか?そんなん…」
「訊かないかもね。でも結構必死なんだけど…俺」
「……」
「なんでかな…あんたとはこうしなきゃいけない気がする」
 そう言って珍しく睫毛を伏せた金時を高杉はじっと見つめていた。横顔も髪の手触りも全てがこの体に馴染んでいく。パズルのピースのように。 
「じゃあ俺もそれで」
「うあっ、適当!」
 ショックを受けているらしい金時が泣き真似をするが相手にされないと分かると拗ねたように唇を尖らせた。
「まあ、これからゆっくり落とすからいいけど」

 その横顔を高杉は目を細めて見つめた。
 誰が出会って二度目の男にキスなど赦すのだろうか。ホストなんてやっているとそういう感覚すら鈍くなるのかと呆れてしまう。
けれどその横顔に、柔らかな掌に馴染む髪に郷愁を覚えたと言ったらこの男は一体どうするのだろうか。
作品名:続 歌舞伎町へようこそ 作家名:ひわ子