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永遠に失われしもの 第4章

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「よくお休みになられましたか?」

 シエルが目覚めると、
 傍らに座るセバスチャンは、
 そう言って優しく微笑んだ。

 「ああ。」

 目をこすりながら、上体を起こし、
 寝具をはいで、
 白く細く華奢なその足を投げ出す。

 その小さく黒い足の爪に、
 セバスチャンは目を止めた。

 「少々お熱を出されていらっしゃいましたから、今、体を拭くお湯をお持ち致します」
 
 「いや、直接バスルームに行く」
 寝台の脇で
 スリッパを揃えるセバスチャンに、
 シエルは答えた。

 
 立ち上がるシエルに、
 ガウンを羽織らせながらセバスチャンは
 シエルをじっと見つめて、

 「少し背がお伸びになられましたね。
 爪のお手入れも一緒にいたしましょう」
 と、微笑みかけた。

 「ふん!それでもまだお前の方が
  倍以上高いじゃないか」

 「ええ、まだ今は」
 と執事は可笑しそうに笑う。
 「でもすぐに大きくなられますよ」

 「お前より背が高くなるのは、
  気分がいいだろうな」

 シエルは、上目づかいのセバスチャンを
 想像しようとするが、思いもつかない。

 「私としては、
  見下ろす方が好みですけれどね」
 とセバスチャンは悪戯っぽく微笑んだ。

 白いバスタブに張られた湯から、
 かすかに湯気が立っている。

 シエルの寝間着のボタンを、
 セバスチャンが一つづつはずしていく。

 セバスチャンは、シエルの体にある
 焼印の火傷跡を一瞥する。

 「どうして、
  お消しにならないのですか?」