永遠に失われしもの 第4章
「それは貴方が汚された、
忌まわしい記憶の証
なのではないですか?」
海綿を使って、背中を丁寧に
洗い流すセバスチャンの手が
烙印の場所をなぞる。
「いくら表面上綺麗に消しても、
僕の記憶が消えるわけじゃない」
「そして僕は復讐を果たし、
ゲームの勝者となった。
今は同時に、僕の勝利の証なんだ」
--ああ、それこそが私が求めた魂。
--いまは私と貴方の記憶の中にのみ存在する、人間としての --
「見せてみろ」
と、シエルは、突然振り向き、
アームバンドで固定した
シャツの袖口から突き出る、
セバスチャンの白い腕をつかんで
引っ張った。
肘から2の腕まで、
うっすらピンクの一筋の傷跡が
浮き出ている。
「もう、ほとんど治りましたよ」
・・その傷跡に、鋭い爪を突き立てて、
もう一度破り、抉り出したい。
その噴き出る血を舐めあげて、
さらに奥まで、
骨に達するところまで・・
いや、もっとその奥
お前の全てを我がものに・・
「お風呂から出てからにしましょう。
ぼっちゃんが逆上せてしまいます」
主の暗い欲望を察知した、
セバスチャンはそう言って
シエルを立たせると、
ふわりと白いバスタオルで包んだ。
作品名:永遠に失われしもの 第4章 作家名:くろ