After Beats 日向×ユイ編
手伝いで夢さんの家についた
「ちょっとよってく?」
「え!?」それは予想外のセリフだった
「流石に毎週手伝ってもらってるのに悪いし、上がってきなよお茶でもご馳走するよ」断る理由も無いので好意に甘える事にした
「夢さんの両親って何してんすか、一度も会った事無いですけど、今も居ないっすよね」
ん、てことは今は2人きりの状況。まさか夢さんはだから俺をあげたり。ゴクリと生唾を飲んだ
緊張と喜びで胸が踊りだしそうだ、ヤッホーイ
しかしすぐにそんな考えを持ってた自分を浅ましく思うことになった
「今は居ないの、死んじゃったんだ」
「え」
「交通事故だったんだ」
「ごめんなさい」
「いいの気にしないでもう吹っ切れたし」
「でも最初は辛くてね。この真上の部屋がね私の部屋なんだけどそこに引きこもっちゃったんだ。でね、おかしいんだよ。いつか素敵な人がここにいる私を見つけてくれるって思ってたんだよ。それもその人との出会い方がね、その人が野球やってて私の部屋の窓ガラス割るのが出会いなんだよ。……ほんと、何で、そんな事思ってたんだろ」頑張って笑って見せていたが最後には悲しそうな顔をしていた。そんな夢さんに俺は何て声をかければ良いか分からなかった
「暗い話になっちゃったね。話題変えよう。アキラは何で野球始めたの」
「約束があるんです」
「へぇ、どんな約束。南を甲子園に連れてってとか」
「それは…」その時ある言葉が鮮明に浮かび上がった。なぜそんな言葉かは分からない、けど約束の内容は確かにこの言葉だ
「…結婚」
「え、結婚?」
「あ、いえ何でもないです。忘れて下さい」
「えぇ~、気になるぅ~。」
「可愛く言ってもだめです。」
「わかったわよ。さ、もう夜遅いしそろそろ帰りな、危ないよ」
「え、あ、はい」そうして夢さん家を後にした
家に着くと姉が恋愛ドラマを見ていた。
「僕と結婚して下さい」
「無理ですよ、私はあなたのお荷物にしかならない」
「関係ない、これが僕の本気です。」
その言葉を聞いた瞬間さっきの言葉を思い出した
「結婚の約束、か」
パリン、一宝夢の家で皿の割れる音がした。そこに涙を流して立っている夢がいた
「……ヒナっち……先輩…」
「結婚の約束」アキラ君のその言葉を聞いてから胸がモヤモヤする。ドラマでも見て落ち着こう
ポチ
「僕と結婚して下さい」
「無理ですよ、私はあなたのお荷物にしかならない」
「関係ない、これが僕の本気です。」そのセリフを聞いた瞬間だった色々な映像が頭の中を駆け巡った。
車に引かれ動けなくなった少女、ガールズバンドグループ【ガルデモ】のボーカルをしてる少女、バッティングに付き合ってもらってる少女、その少女が全部自分だと気づくな時間はいらなかった。
そして結婚を誓ってくれた男の事も
なら私はどうすべきか、1つしかない。約束を守ってくれると信じて待つだけだ。あの場所で
翌週、駅に行ったが夢さんの姿はなかった。心配で家にも行ったが返事がない。
何か用事かと思い気にしなかったが翌週も更に次の週も姿はない。流石に心配になり、もう一度夢さんの家に行ってみた。
ピンポーン
『やっぱりでないか、どうしたんだ夢さんは』
ふと上の夢さんの部屋を見てみた。
・・・・・・え、
俺は目を疑った。そこには夢さんがいたのだ。それも泣いていた。なぜ・・・・
すぐに夢さんは俺の見えない位置に消えてしまった。
俺はいごこちが悪くなって家に帰った。
なぜ泣いていたのだろうか、なぜインターフォンに出てくれないのだろうか。
居間ではまた姉がドラマを見ていた。
このドラマは嫌いだ。なんだか頭がもやもやする。
翌日、野球部の公式試合。
俺たちは運悪く優勝候補の高校にぶつかった。
9回の裏ツーアウト満塁、点差は3-2だ。俺の守っていたセカンドに簡単なフライが飛んできた。これを取れば試合終了で勝ちだ。
ゆっくり、ゆっくり、焦らず、
スポ。
取った、とても綺麗にとった。その時だった。頭の中で様々な光景がフラッシュバックした。
そうこれは、・・・・・前の世界の記憶だ
周りにチームメイトが駆け寄ってくる。しかし、俺はそれを無視して一目散に走りだした。
監督や仲間が呼び止めるのも聞かずに、ただまっすぐに目的地にむかった。
ばかだ俺は。なんで、なんでもっと早く気が付かなかったんだ。
「やっぱり、来てくれないのか。そうだよね。思い出すわけないよね、あの世界とこの世界は別物なんだから。・・・・来るわけ・・ないんだよ。・・・ニナっち・・・先輩・・・先・・輩・・・・。あれ、なんで泣いてるんだろ、へんだな、ハハ。」
その時だった。
パリン
急に窓ガラスを突き破ってボールが飛んできた。
一瞬動けなかった。しかしすぐに走って玄関にむかった。そこにはアキラ君が立っていた。
気が付いたら俺は夢さんの家にボールをぶち込んでいた。
少しして夢さんが慌てた様子で出てきた。目が赤い、おそらくは泣いていたのだろう。
「夢さん、いやユイ!!俺が、俺が結婚してやんよ!!!」
これが今の俺の精一杯の気持ちだった。
ユイは一瞬固まりその後泣きそうな声で、笑顔で言ったのだ
「遅いですよ、ヒナっち先輩」
俺はユイを抱きしめた。力いっぱいに、この思いの全てをかけて抱きしめたのだ。
その中でユイは泣いていた。めいいっぱいに泣いていた。今までの気持ちをすべてぶちまけるように。
音無、おれは、これで良かったんだよな。
作品名:After Beats 日向×ユイ編 作家名:歌語