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【にょたりあ】 恋の前のその前

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【にょたりあ】ユールヒェンとハンガリー(男)さん

     【恋の前のその前】




会議はオーストリアがほとんどの条件を飲むことで終わった。
ユールヒェンは揚々と引き上げていった。

その影で、オーストリアと、その支配下の国々で軋轢が生まれていることも知らずに。
オーストリアの凋落は止めようがなかった。
ハンガリーの国内でも、反オーストリアの運動がますます活発になっていく。
力で押さえつけられていた国家達は、今、異民族であるオ―ストリア帝国から離反しようとしている。

それを押しとどめる力など、もうほとんどオーストリアには残っていなかった。




「いいのです。ハンガリー。あなたもどうぞ自分の国へ帰ってください。」
「いいえ、オ―ストリアさん。私はいつまでも貴女の「盾」であり「剣」でいたいのです。」
「・・・・ありがとう・・・ハンガリー・・・・。でも無理ですわ・・・。もう押しとどめようがない・・・・。貴方は「国家」です・・・。民の声には従わなくてはなりません。」
「・・・・・それでも・・私は貴女をお守りしたい。」
「お気持ちだけで嬉しいわ。ハンガリー。でも・・・行ってください。貴方がいなくて、どうしてハンガリーの民が喜べます?民と一緒に居てください。今まで私を守ってくださってありがとう。感謝します。」
「オーストリアさん!!」






「ねえさん。差出人の名前が書いてない手紙が来てるんだけど・・・。」
「手紙?」
「ええ。でも名前がなくて・・こんな印は押してあるの・・・。立派な印だから・・・名のある方だと思うんだけど・・・・どなたか思い当たる?」
「・・・・・・・・?わからないけど・・・・。」
「じゃあ・・・中を開けてみればいいかしら・・・?」
「え・・・?いいわよ。めんどくさいし。名前、書かないなんて失礼な奴だわ!」

その手紙はユールヒェンの机の上に置かれ、忘れ去られてしまった。

ある日、同じ印の二通目の手紙が来た。
ユールヒェンは前に来た手紙を思い出してやっと開封した。

読んだとたん、ユールヒェンの顔色が変わった。

手紙の贈り主・・・・・・ハンガリーからだった。

「・・・・・あの・・・・・馬鹿!!」


ユールヒェンは屋敷を飛び出して馬に飛び乗る。

「国家様?!こんな夜半にどちらへ?!」

家臣たちがあわてて尋ねる。

「遠乗りしてくる!!遅くなるから先に寝てってモニカに言って!心配するなって!」
「ど、どちらまで?行き先を!行き先をお願いします!わたくしが怒られます!!」
「・・・・親父様の仮の御墓!!ちょっと花をたむけたくなったの!行ってきたらすぐに帰るから!!」


「親父様の御墓・・・・?」
「親父様・・・って?」

家臣たちが首をかしげる。
まさか何世紀も前の「フリードリヒ大王」が親父様、とは思わないだろう。

「よりによって・・・・なんであそこなのよ!!」
馬を走らせながら、ユールヒェンは怒鳴る。


ハンガリーからの一つめの手紙・・・・・。

【先年の事は忘れてやる。お前も忘れろ。会って話がしたい。
昔あの星を見た丘まで来てくれないか?嫌ならいい。
だけど、待ってる。

              ハンガリー  】


一通目が来たのはもう何か月も前・・・・・。
まさかずっと待ってたとは思わないけど・・・・・・。


二通目がこう。

【来なかったな。まあ、わかってたけどよ。まだ怒ってるのか?
俺はもう怒ってない。ただ、お前とさしで話がしたかったんだ。
俺にはもう時間がない。これが最後に機会になるだろう。
俺のうちで遠いなら、お前の大王様。お前のうちのサンスーシ宮殿の丘はどうだ?
あそこならお前はうそを言わないだろ?
俺はお前に聞きたい事がある。

来たくなかったら忘れてくれ。
もう二度とお前に会わないし、ちょっかいも出さないと約束する。

来てくれると嬉しい。
昔、あの星を最後に見た日に、待ってる。

                 ハンガリー  】


(ああ、私の馬鹿!!それにハンガリーの野郎の馬鹿!名前くらい書いとけってんだ!
大事な話があるなら私だって行ったのに!)

短い、でも真剣な手紙・・・・。
おおらかなようで、細やかな優しさを持った幼なじみ。
彼が自分に迫るのは、半分冗談だと思っていつも本気にはしていなかった・・・・・。
そもそも、彼に真剣にむきあったことなどあったろうか?
ユールヒェンは馬を飛ばしに飛ばす。

約束の、「星を最後に見た日」とは、ユールヒェンが「ドイツ騎士団」だった時・・・
ハンガリーを追い出される少し前に一緒に星空を見た日・・・・・。
それはよりにもよって今夜だった・・・・・・。

ろくに外套もはおらずに出てきてしまった。
夜気の寒さが馬を走らせるユールヒェンの体を冷やす。
それでも、間に合ってと馬を飛ばすユールヒェンの心だけは熱かった。




もう来ないかもしれない。


夜の帳が下りた森は、今、空の星だけが唯一の明かりだ。

一通目の手紙はどうやら読まなかったのか。
二通目も読んだかどうか・・・・。
あの性格だ・・・・。気づきもしないで捨ててしまったのかもしれない。
自分からだということが分かるように、名前を書くべきだったのか。

怖かった。
名前を書いて、それで読まずに捨てられてしまうことが。
それなら名前も書かずに送り付けたほうがまだあいつが読むんじゃないかと思って・・・。

自分に言い訳をしても始まらない。
ハンガリーの故郷の丘で、ずっと夜通し待っていた。
ずっと空を見て考えていた。

昔・・・・ユールヒェンと過ごした日々。
幼い子供だった頃。
まるで男のようななりのユールヒェンをからかった。
ちいさくか細い腕を握って振り回して怪我をさせた・・・・・。
土地をもたないと言って、悔しがるユールヒェンを泣かせた・・・。

あの時は思わなかった・・・・。
あんな男女を思う時がくるなんて・・・・・。
ずっとただの幼なじみと思っていた。

彼女の髪が長くなって・・・その姿が女そのものになっていた時・・・・。
他の「国」の男達が彼女に色目を使い始めたとき・・・・・・。

自分は力を失い、宗主国のもとで生きるだけの国となっていた。
はじめて知った、ユールヒェンの悔しさ・・・・。
あいつはどれだけ俺の言葉に傷ついてたんだろう・・・・・。

それでも自分は運がよかった。
宗主国オーストリアは、かつて戦ったものの、あくまで淑女であり、ハンガリーの扱いもていねいで親切だった。
オーストリアのために戦うことはいやではなかった。
心の底から、オーストリアを守りたいと思った。
しかし、それはまた別の感情だった。

来るだろうか・・・・。
いや・・・きっと来ない・・・。

夜が深くなっていく。

星が空を流れた。

ああ・・・・きれいだ・・・・・。

空は澄み渡り、空気が冷えて透明なまでに月明りがまぶしい。

国の民の心は決まっている。
自分はそれに従うべきだろわかっている。
さからうことなど出来ない。
「国」に民意に逆らうことなど・・・・・。

あいつはどうしていたのだろう・・・・?
ずっと国民を持っていなかった。