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とおくのきおく

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 笑顔の消えた面持ちで、催促するように銀時に語りかける。すると、銀時の手が伸びて、高杉の身体は再度綿入れのあわせに埋まった。戸に背中を預けて、ぼんやりと外を見つめる。銀時は、ちゃっかり高杉の腰に手を回すが、気持ち悪ィ、と笑いながらもその腕を受け止めている。随分と機嫌がいいようで、おまけに高杉からも腕がまわってきた。綿入れの中で、背中にそそそと這う腕は、頼りない。銀時が、胸におさまる高杉を見下ろせば、上目で高杉も視線をかちあわせてきた。猫のようにきりりとした鋭い視線が銀時を狙うようにして見つめている。単純に、綺麗だな、と思って見とれていると口角をあげて笑った高杉が、背伸びをした。そのまま、紅色のくちびるを銀時の耳元へよせてぺろり、と舐める。次いでかすめる程度に口付けると満足したように離れた。たまに、こうして戯れなのかからかいなのか、仕掛けてくることがあってそれがあまりに不意で銀時はいつも上手く反応ができないでいる。
「怠慢だなァ、どいつもこいつも起きてきやしねェ」
「たまには休戦もいいんじゃねーの」
「折角の雪なのに?」
「雪ではしゃぐのはお前くらいだっつーの」
 まだ身長の伸びきっていない高杉の頭に顎を乗っければ、やめろ、と高杉がもがく。
「それにしたって風情がねーなァ……」
 高杉曰く、雪の降る日に子どものようになって無邪気に遊ぶのは風情のあることだというらしいが、銀時には承服しかねる。そうねぇ、などと適当に返事をすると、松の枝に降り積もった雪ががささ、と崩れ落ちた。妙な静さのなかで、その音がやたらと目立って聞こえ、二人してびくん、と肩を震わせる。
「俺は晋ちゃんと二人きりで非常に嬉しいんですが」
 腕に抱いた高杉の、暖かな首筋に擦り寄って、一つ印を刻み込むと、やめろばか、と笑った高杉の手がそれを制した。うーん、と唸りながらもそれは止まず、結局あと三つを新しく刻み込んだ後、その腕の熱を抱きなおして二人大人しくなった。
「……」
「……」
 雪がしんしん降っている。それを無言で見つめながら、確かに二人してぬくもりを分けていた。長い付き合いもあって、沈黙があっても居心地の悪さはない。しばらくそうしたあと、吃音を発した銀時が晋ちゃん、と言った。高杉しか知らない、真剣に構えた時にしか出さない声で。昨晩何度か聞いたその声で。
「ちゅーしていいですか」
「やだ」
「やだって言ってもしちゃうんだぜー」
 丸い後頭部をやわらかく抑えて、静かに唇を重ねた。
「みんな起きて来なきゃいいのにな」
 何度かついばんだ後で、銀時が不意に漏らす。うっとりと慰みを受けていた高杉は閉じていた瞳を開けて、緩慢に唇を開いた。
「どうすんだよ、もし起きて来なかったら」
「……雪見セックスでもしますか」
 しねぇ、と高杉がぼやきつつも、暖かな土間に場所を変えて、皆が起き出すまでの間戯れるような触れあいを楽しんだのは、二人だけの知るところである。




        了
作品名:とおくのきおく 作家名:空堀