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銀新ログ詰め合わせ

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大きな手だ。節くれだった、大人の、掌。
 少し低い、けれど心地良い温度のそれは、見た目に反してとても器用だ。
 その手が、僕の頭を撫で付ける。
 良い子良い子という様に。
 良い子良い子という風に。
 壊れ物を扱うかの如く、けれどもぞんざいに。
 優しく易しく撫で付ける。

 大きな掌、骨ばった手。全てが大人の、


 知りたくなかった。分かりたくもなかった。
 こんな風にこんな場所で、気付きたくなんて、なかったんだ。
 何もかもが違い過ぎる。泣きたくなった。
 ゆるやかに穏やかに撫で付ける掌の温度に、もう止めてと叫びたくなった。
 これ以上惨めな思いをしたくない。これ以上、思い知らせないで。

 頭を撫でられる。
 止めて欲しいと願うのに、嫌だと思えない僕は、
 大人の無骨な掌にいい様にされてされるが儘に、ただただ只管俯いて、それを耐え甘受するしかなかった。


--------------

 十以上も離れた子供だ。だからこれは仕方が無いと思う。そして、不可抗力だとも。
 そもそもこの行為及び行動は、目の前の少年のみならず少女にも同様に行っているもので、なのでそれをどうこう言われてもどうしようも無い。

 子供なのだ。
 小動物を愛でる様に、小さな生き物が目の前をちょこまかと動く様は可愛い。
 犬猫の様に、己の意志を持って自分を慕う様を目の当たりにすれば、それはどうしようもなく愛しい。
 不器用なりに一生懸命何かをやろうとするのならば、それは多少なりとも甘やかしてあげようという気になるものだ。

 仕方が無い。
 彼らは―――彼は、自分からみればまだ少年の域を出ない、子供なのだから。
 背負うべきものだとは思いはしても、足手纏いとも役立たずとも思わない。
 けれどやっぱり彼は子供だった。
 保護すべき対象。庇護されるべき存在。
 彼がそれを厭うと知っていても、こればかりはどうしようもない。
 そうして甘やかしては、子供扱いするなと彼は憤る。
 歯噛みする彼を見て、少しの罪悪感を感じながら、けれども愛しさが勝った心は同じ事を繰り返す。

 子供なのは、今の内。
 それは彼も己も同じ事。
 今だけだからと彼と自分に言い聞かせ、そうしてまた少年を怒らせる。
 子供なのだ。
 今のうち。今この時だけ。
 だからもっと甘える事を覚えれば良いのに。
 そう思って見た少年は、矢張り甘やかすに充分足り得る、可愛さだった。

作品名:銀新ログ詰め合わせ 作家名:真赭