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銀新ログ詰め合わせ

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 この両腕は何の為にある?

 そう問われて、明確な答えを打ち出せる者は少ないだろう。
 それでも恐らく、己の腕は己の為だと、大概の者はそう応えるのではなかろうか。
 護る為、殺す為、生きる為。
 理由は何にしろ大袈裟なまで突き詰めて考えれば、矢張り己の為、なのである。
 そう、
 誰かの為だと豪語して、それでも最後の最後に行き着く先は、悲しいかな所詮は己のエゴでしかない。
それはそれで良いのだと思う。悪い事だとは思わない。
 けれど、これは何だ。
 二つの小さな温もりが、目の前にある。
 縋り付く様に渾身の力を込めて抱き締められても、震える腕では力も無い。
 無い、筈なのに。
 痛みは感じない。感じないけれど、何処かちくりと痛んだ。
 銀ちゃん銀ちゃん、銀さん銀さん、
 くぐもって掠れた声に押される様に、無意識に浮いた自分の両腕を目の当たりにして、愕然とした。
 中途半端に浮いた二つの腕をじいと見詰めながら、行き場の無いこの腕をどうするか、悩み、またも衝撃を受ける。
 情けない事に震えているのだ。己のこの両腕は。
 ぎゅうと抱き締められて息が詰まる。
 二つの体温に安堵する。
 相反する想いをどうにでもなれ、と半ば投げやりな気持ちで両手に力を込めた。
 そうして矢張り震える腕でそっと、恐る恐るその小さな温もりに触れると、遅い、と応えが返る。
 その言葉に弾かれたように、ぷつりと何処かが切れた様な音を聞く暇も無く、衝動的とも云える本能で骨が軋むほどそれらを抱き締めた。
 愛しさを掬う様に掻き抱く様に。

 誰かが叫んだ。
 己のその両腕は何の為にある!と。


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「虚しい食卓ネ」

 神楽ちゃんがそういうのも無理は無い。何せ我が家の今日の食卓は、ご飯に味噌汁、それに漬物しかないのだから。
 相も変わらずジリ貧生活まっしぐらな僕らは、元旦だというのに御節にもありつけないという、情け無い有様だった。

「ま、今日は特別に許してやるヨ」

 にししと笑う彼女に、銀さんが徐に手を伸ばして頭を撫でた。
 その光景に、ゆるりと笑みが浮かぶ。
 何も無いけど、一番大事だと思う人達が居る。
 三人で居る喜び。三人が居る悦び。

「ま、なんだ」

 三人向き合って、居住まいを正す。


「「「今年も宜しくお願いします」」」


 相変わらずの僕ら。何時もの日常。それが何よりも幸せ。


作品名:銀新ログ詰め合わせ 作家名:真赭