4/23 PM19:00 【山獄ツナ】
「ただいま、親父」
店の入り口とは逆側に作られている玄関をくぐった山本は、店との境目に掛けてある暖簾を片手で持ち上げ、タオルで雨に濡れた頭を拭きつつ顔をひょっこりと出した。
土曜日の寿司屋は、サラリーマン主体の平日と違って家族連れの客が多い。見知っている客から声をかけられて、笑顔で会釈を返す。
「おう、おかえり武」
「おかえり、山本! 部活お疲れさまー」
「おっせーよ」
厨房からの父親の返事の後、弾んだ声と拗ねたような声での出迎えが続き、山本は眼をぱちくりと瞬かせた。
「え、あれ、えええ? ツナと獄寺、なんでここにいんの?」
「こら武、泥だらけの格好で店に入ぇってくんじゃねぇ!」
父親に諌められた山本は踏み出しかけた足を止め、顔だけを暖簾の合わせ目から精いっぱい突き出した。
「なんで、じゃねーだろ! てめーが呼んだから来てやったんだよ!」
店の一角、カウンターの端っこにツナと並んで座っている獄寺が、山本を横目でじろりと睨みながら言う。
「や、そーじゃなくて。オレの部屋にいんのかなーと思ってたのな」
「うん、オレもそうさせてもらおうかと思ったんだけど。おじさんが呼んでくれたんだ」
にっこりと笑ったツナと獄寺の間には、サラダや刺身などが盛られた皿が置いてある。
「てめーが遅ぇから、先に軽く食ってた」
相変わらず不機嫌そうな顔をしている獄寺は、サラダの上のトマトを箸でつまんで口に放り込んだ。
「そっか」
「台所に晩飯置いてあるから、しっかり食えよ」
頷いた山本に、まな板に向き合っている父親が声を掛けた。
「ん、ありがとなー」
「おう。ツナ君と獄寺君の分も、ちゃーんとあるからな。店の残りもんで悪いんだが、良かったら食ってくれっか」
「ありがとうございます!」
父親と笑顔を交わしたツナは、椅子から立ち上がる。
その細い背中にがばっと腕を回した山本は、もう片方の手で傍らの獄寺の腕をしっかりと掴んだ。
「んじゃ、行こーぜ!」
「わ、じゃ、じゃあおじさん!」
「獄寺も!」
「引っ張んな! 自分で歩けるってーの!」
「おいこら、店でぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃねぇ!」
父親の怒鳴り声から逃げるように暖簾をくぐると、店主のそれがポーズだと知っている常連客から、からかい混じりに宥める声が掛かったのが聞こえた。
店の入り口とは逆側に作られている玄関をくぐった山本は、店との境目に掛けてある暖簾を片手で持ち上げ、タオルで雨に濡れた頭を拭きつつ顔をひょっこりと出した。
土曜日の寿司屋は、サラリーマン主体の平日と違って家族連れの客が多い。見知っている客から声をかけられて、笑顔で会釈を返す。
「おう、おかえり武」
「おかえり、山本! 部活お疲れさまー」
「おっせーよ」
厨房からの父親の返事の後、弾んだ声と拗ねたような声での出迎えが続き、山本は眼をぱちくりと瞬かせた。
「え、あれ、えええ? ツナと獄寺、なんでここにいんの?」
「こら武、泥だらけの格好で店に入ぇってくんじゃねぇ!」
父親に諌められた山本は踏み出しかけた足を止め、顔だけを暖簾の合わせ目から精いっぱい突き出した。
「なんで、じゃねーだろ! てめーが呼んだから来てやったんだよ!」
店の一角、カウンターの端っこにツナと並んで座っている獄寺が、山本を横目でじろりと睨みながら言う。
「や、そーじゃなくて。オレの部屋にいんのかなーと思ってたのな」
「うん、オレもそうさせてもらおうかと思ったんだけど。おじさんが呼んでくれたんだ」
にっこりと笑ったツナと獄寺の間には、サラダや刺身などが盛られた皿が置いてある。
「てめーが遅ぇから、先に軽く食ってた」
相変わらず不機嫌そうな顔をしている獄寺は、サラダの上のトマトを箸でつまんで口に放り込んだ。
「そっか」
「台所に晩飯置いてあるから、しっかり食えよ」
頷いた山本に、まな板に向き合っている父親が声を掛けた。
「ん、ありがとなー」
「おう。ツナ君と獄寺君の分も、ちゃーんとあるからな。店の残りもんで悪いんだが、良かったら食ってくれっか」
「ありがとうございます!」
父親と笑顔を交わしたツナは、椅子から立ち上がる。
その細い背中にがばっと腕を回した山本は、もう片方の手で傍らの獄寺の腕をしっかりと掴んだ。
「んじゃ、行こーぜ!」
「わ、じゃ、じゃあおじさん!」
「獄寺も!」
「引っ張んな! 自分で歩けるってーの!」
「おいこら、店でぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃねぇ!」
父親の怒鳴り声から逃げるように暖簾をくぐると、店主のそれがポーズだと知っている常連客から、からかい混じりに宥める声が掛かったのが聞こえた。
作品名:4/23 PM19:00 【山獄ツナ】 作家名:れー