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【TIGER&BUNNY】アクネドート・ソナタ

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 少年はある資産家夫妻の長男として、この街に生まれました。初めての子だったこともあって、夫妻は大層喜んだようです。以前邸宅で催された彼の誕生記念パーティーの写真を見たことがあるんですが、それはそれは豪華なものでしたよ。調度品もこの家みたいに安っぽくなくて、シュテルンビルトの大物も大勢出入りしてた。あぁ、怒らないでくださいよ。あくまでも例えなんですから。夫妻は息子の誕生を喜んでいましたが、残念なことに、少年は頭の悪い子供に成長しました。与えられた生活が一生続くと思ってたんです。自分は満たされていて、万能なんだと思ってた。嫌な子供ですよ。でも終わりは存外早く訪れました。ある日家が爆破され、愛すべき夫妻が死んだんです。犯人ですか? それは今でも分かっていないみたいですよ。警察も手を尽くして調べたみたいですが、この街じゃあ出来ることなんて限られていますからね。かくして少年は天涯孤独の身となったわけです。でも捨てる神あれば拾う神ありでね、少年は父親の古い友人である、篤志家の男に引き取られたんです。あなたもきっと見たことがあると思いますよ。それくらい有名な奴なんです。名前? それはルール違反だな。これはただの寝物語なんですから、種明かしは面白くないじゃないですか。ほら、横になってくつろいでください。ジン・ウィスキー? 寝酒は明日に差支ますよ。いや、別にいらないとは言ってません。ほら、けちけちしないでこっちにも寄越して。じゃあ話を戻しますよ。少年は最初のうち、泣いて暮らしていたみたいです。朝から晩までずっと塞ぎこんで、満足に食事も取らなかった。最後には点滴で栄養を取る始末だったっていうんだから、きっとあれは緩慢な自殺だったんでしょうね。けれど使用人たちの介護の甲斐もあって、数ヶ月たった頃には庭を走り回れるまでに回復しました。これじゃあ在り来りすぎるって? あなたって案外下衆なんですね。いいですよ、こんな話をしてる僕だって変わらないんだから。彼を引き取った男はある会社――あなたもよく知っているはずですよ――を経営していたので、家には滅多に寄り付きませんでした。金持ちなんてそんなもんです。あなたみたいに子供に執着はしない。違います、褒めてるんですよ。愛情に限界はない、素晴らしいじゃないですか。えぇと、どこまで話しましたっけ。あぁ、男に引き取られたとこ。そう、男は決して愛情深くはなかった。金持ちらしく無関心で、少年の世話は全部ナニー任せだった。なのにある夜、少年がトイレから寝室に戻ると、珍しく男がやってきたんです。少年はびっくりしました。だって夜中に三つ揃えのスーツを着たままで、音も立てずにドアを開けたんですから。でも、少年は眠かったのと、男とはまだ打ち解けてはいなかったのもあって、眠ったふりをしてやりすごしました。すると男は少年の頭を撫で始めました。まずは髪、その次は額とこめかみ、そこから鼻筋に流れて、唇をなぞって喉から鎖骨、パジャマのボタンを外して胸元、へそまでゆっくりと。その間中、少年は眠ったふりをしていました。いきなりのことで動揺して、どうしていいか分からなかった。他に何が出来たんでしょうね。起きたらよかったのか、それとも嫌だと言えばよかったのか。あぁ、男は触っただけで部屋を出ていきましたよ。その夜はそれだけでした。きっとこれは悪い夢だ、少年がそう思い込んで終わり。自分の勘違いだと思いたかったんですね。でも男の訪問はやまなかった。毎晩毎晩、男は少年の体を撫で回し続けた。男はじきに触るだけじゃあ満足できなくなって、少年の体を写真におさめ出した。少年はそれにも知らないふりをするしかなかった。屋敷には相談出来る人間なんていません。だってあれは夢だし、優しい使用人たちは男に雇われてる。足りない頭でもそれくらいは考えられたんですね。それからしばらくたって、少年は家出をしました。使用人の財布からコインをくすねて、自宅跡にまでたどり着いた。けれど子供のやることですから、すぐに男に見つかってしまった。彼は傘をさしていました。そう、ちょうど今日みたいな雨が降ってた。冷たくて、身を切るような雨だった。男はその傘をさし出して言ったんです。「さあ行こう、大丈夫、君はもうひとりじゃない」って。ここが面白いところでね、それを聞いた少年は素直に家に帰ったんです。そう、彼はもう一人じゃなかったんですよ。どこまで行ったって、一人にはなれやしなかった。最初から分かっていたことなのに、馬鹿みたいだな。あぁ、家に帰ってすぐは外に出してくれなくなりました。学校もやめて、家庭教師がつくようになった。また逃げ出しやしないか心配したんでしょうね。男の生活も変化しました。書斎で仕事をする時間が増え、滅多に会社に出かけなくなった。少年はその側で教科書を読み、家庭教師の命令通り宿題をすませるのが日常になりました。書斎には造り付けの本棚があって、そこにはたくさんのアルバムと、古びたおもちゃが置いてあった。少年は一目見てそれが気に入ったらしいんですが、欲しいとは言えなかった。なぜなら男が仕事の合間にそれを撫でてはため息をつき、懐かしい思い出を反芻しているようだったから。ちょうどさっきのあなたみたいにね。男はあなた以上の仕事人間でしたけど、家にこもるようになってからは、少年と遊ぶ時間だけは決して削らなかった。彼らが気に入っていたのはかくれんぼです。ちなみに鬼の役は男で、少年は逃げる係。少年は工夫を凝らして隠れたそうですが、いつも男に見つかって遊びは終わりました。そりゃあそうですよね、だって男の家なんですから、だまし通せるわけがないんだ。檻の中を逃げてるみたいなもんですよ。そうそう、遊びの後の食事は格別だったらしいですよ。アイスクリームが乗ったメロンソーダに、いつもは使用人たちが食べさせてくれない宅配ピザ、デザートはハーシーズのキスチョコとか、レイズのポテトチップス、カッチェスのフルーツグミ。その後はテレビゲームを楽しんで、しめくくりにはヒーローティーヴィー。あぁそうだ、写真も取りましたよ。僕たちは家族なんだって名目でね。お互いをポラロイドカメラで撮影して、家族の記録を作ったんです。アルバムは書斎にあったのと同じものが使われました。皮張りの、金の糸で飾り縫いをしたやつ。アルバムはまたたくまに埋まって、それは書斎の本棚に几帳面に並べられました。少年はいくらか誇らしかったみたいですよ。その証拠にかつての夜の出来事を忘れて、男になつき始めた。でも本当は忘れちゃいけなかったんです。そうしたら、ろくでもない人生に苦しめられることもなかった。――ん? 何です? 別に眠くなんかありませんよ。ほら、あと少しですから、もう少し我慢してください。ここまで話したんだ、途中で終わらせるなんて勿体ないでしょう? 面白いのはここからなんです。ある日、男はもっと愉快な写真を撮ろうと言い出しました。こんなんじゃあ普通すぎる、私たちは素晴らしい家族なんだから、とびきりめずらしいやつにしないかって。少年はそれに賛成しました。すると、男はまず少年に悪戯をするように言い渡したんです。もちろん少年は拒みましたよ。だって行儀良くしなきゃいけないって躾けられていましたからね。でも男はそんな少年を度胸がな