【TIGER&BUNNY】アクネドート・ソナタ
いと笑い、ポテトチップスをぶちまけたり、壁に落書きを始めたり、率先して悪戯を始めました。それがあんまり楽しそうだったので、少年も男に続きました。カーペットを引きずったり、カーテンにぶら下がったり、ベッドの上で飛び跳ねたりね。二人はそれを撮影し合いました。でも日がくれてくると、男はどういうわけか突然怒り出したんです。なんて駄目な子供なんだ、お前なんか引きとるんじゃなかった、あの家に戻してやるって。少年は泣きじゃくりました。あんな恐ろしい場所には戻りたくない、お父さんお母さんがいない場所に戻りたくない、いやだ、やめてって。最後には男の足にすがりついて謝った。頭をこすりつけて、いい子にするから許してください、お願いだから一人にしないでってね。すると男はため息をついて確認したんです。本当に何でもするのか、って。少年が頷くと、男は彼の服を脱がし、両腕を皮のバンドで固定しました。少年は動けませんでした。約束は破っちゃいけない、昔、父親がそう言っていたのを思い出したんです。少年はぶたれるのを警戒して身をこわばらせました。しかし、男は少年に優しく言ったんです。これは君のためなんだよって。僕は思うんですけど、少年はきっと、ここでようやく自分の運命を受け入れたんじゃないでしょうか。そうか、これは自分のためなのか、そう言えば父親におしりをぶたれたことがあるなとか、そんなことを思い出しながらね。男の仕草は優しかったですよ。以前ベッドでしたのと同じように丁寧で、いっそ哀れなくらいだった。目をつむっていれば耐えられた、だって悪い夢なんだから。体中に唇が押し付けられても、ペニスをよだれでべちゃべちゃにされてもね。お腹を押したら泣く人形みたいに声を上げて、呻き声と荒い息が過ぎ去るのを待ってた。不思議だったのは手のひらはあんなに熱いのに、唇は氷みたいに冷たかったことです。それから何分か、何時間かたって解放されると、男はおもちゃをくれました。古びた車の模型です。僕が欲しくてたまらなかった、書斎にあったおもちゃだ。よく頑張ったね、君は素晴らしい子だ、私も誇らしいよとあの人は言ったんです。それから何夜ごとかに二人きりの遊びは続きました。部屋中がおもちゃで埋まると、次の部屋が与えられました。その部屋がおもちゃで埋まるたび、少年は息が出来なくなっていったんです。最後には発作を起こすようになって、再び塞ぎがちになりました。けれど男は遊びをやめませんでした。男はいろんなものを与えてくれました。古びた車の模型、チェスの駒、テディベア、ヒーローのカード、ビーズのネックレス。もしかしたら、あなたのカードもあったかもしれませんね。あのいけてないやつ。――どうしてそんな顔をするんです? あぁ、からかったのを怒ってるんですか? だってあのスーツ、いけてないじゃないですか。あれ、手が震えてる。どうしてそんな顔をするんですか? 大丈夫、男はもう彼に手を出せません。殺したのか、また逃げ出したのかって? あなたって過激だな。残念ながら違いますよ、男はペドフィリアだったんです。子供にしか興奮しないクズですよ。自分が腕力で負ける年になるとおじけづいて別の子供に興味を向けた。かつて僕にくれたおもちゃを新しい子供に渡しながらね。もしかしたらあなたのカードも渡ったかもしれない。どうしたんですか? あなたがしがみつくなんて珍しいな。もしかして泣いてるんですか? よしてくださいよ、まるで子供みたいだ。あぁでも、あなたはあの人と同じ香りがします。これはきっと、男の、匂いなんだ。
作品名:【TIGER&BUNNY】アクネドート・ソナタ 作家名:時緒