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たまゆら

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 今度は高杉がむすくれる番になった。眉間に皺を寄せて、面白くなさそうにしている。膝立ちした高杉の腰には、銀時の両手が添えられているが、途端に仏頂面になった高杉をなだめるようにあーごめんね晋ちゃん、と棒読みもいいところの謝罪の言葉を述べながら、上下に撫でた。
「じゃあなんで、」
「おめーに会いにくるかって? ……さぁ。なんでだろうな」
 わかんねぇ、と膝を崩して正面から銀時に寄りかかる。腕の中に高杉がすっぽり納まって、居心地のいい場所を探してごそごそとしばらくむずがっていた。ようやく気持ちのいい体勢になると、そのままため息を一つ、ついて落ち着く。胸の中の高杉の熱が生々しくて、銀時はぼんやりとしてしまった。
「……どうせだからヤるか?」
 やたらとひっついてくる高杉に、欲情はせぬが違和感を覚えてそう誘うと、
「その気もねぇくせに、」
 と跳ね除けられてしまった。ないわけではなかったが、少し、残念である。
「おめーよぉ……」
「んー?」
 丁度、銀時の顎のしたにくる高杉の頭。いい匂いがする。風呂でも入ってきたのだろうか。綺麗好きな彼のことであるから、あるいは。そんな空想に耽って、高杉の形のいい頭のてっぺんに、柔らかく唇を寄せた。
「真選組の制服、着てたそうじゃねーか」
「あぁ……」
「どういうつもりだ」
「……まぁ……話せば長くなるんだけど」
 気まずくなって、ごそごそと高杉を取り囲むように手を腰にまわす。むすくれた高杉の顔が、銀時をじっと見上げていた。高杉の言いたいことは、それで痛いほど伝わったのである。言うなれば高杉の敵である真選組に、形式的にも戦力的にも組した形となったのだ。そのあたりの複雑な事情を察せられないほど高杉も子どもではなく、また銀時も回りくどい説明を施さなければならないほど後ろめたさも感じてはいない。だが、高杉にしてみればただただ面白くないのである。
「晋ちゃんそんな顔してると不細工になりますよー」
「うっさい。年がら年中死んだような顔しやがって」
「はぁ? そんな銀さんが好きなのはどこの獣様ですか」
 ますます面白くない、といった風に口を尖らせると黙り込んでしまった。とうとう虫の居所が悪くなったらしい。
「晋ちゃーん」
「……」
「ちゅーしよっか?」
「はぁ? てめ、」
 まさしく、口車に乗せられたとはこのことである。ぐりん、と振り向いた拍子に唇でそれを塞がれた。
 悪い気がしない。
 大人しく、きゅう、と銀時の袖をにぎりしめながらそれを受ける。重なった唇が、わずかに笑いに歪んだような気がしたが、気のせいだ、と高杉は心の中で跳ね返した。
「……足りない、」
「うん」
 半年、否それ以上の埋め合わせでもするかのように、まだ続く。流れで、銀時が体を横に倒せば、高杉は綺麗に組み敷かれた。
「……だからヤらねーって、」
「わーってるって。ほら口開けろ、」
「ぅむく、」
(相変わらずキスが下手だこと、)
 気を遣ったつもりが、高杉とのタイミングがあわずにかつん、と歯がぶつかった。
銀時の体と、高杉の体の間に挟まっている高杉の手が、銀時の肩に一瞬触れる。が、何かを思ったようにそれが柔らかに二の腕あたりを掴むに至った。肩口の傷を、高杉なりに気を配ったのだろう。
一回、二回、そんなことを繰り返してようやく体が離れると、銀時の胸を押して高杉が立ち上がる。
「行く、」
「もう?」
 襟を正して、踵を返した高杉の背中に問いかける。
「オメーのガキが帰ってくんだろ、そろそろ」
「あー……そうね」
 惜しいな、と内心思いながら銀時は頭をがしがし、と掻いた。
「……次、は」
「……たたっ斬ってくれんだろ?」
 振り返り、銀時を見下ろすとにあ、と笑う。それが様になるのだから、まったく参ってしまうものである。
「……じゃあ、」
「ん」
 短い別れの挨拶を交わすと、高杉は足早に風のように消えてしまった。銀時が余韻に耽ってふう、と熱いため息を漏らすとすぐに玄関ががやがやと賑やかになる。
「ただいまヨー」
「銀さん帰りましたよー」
 買い物袋をぶら下げた新八と神楽が、障子の向こうに現れた。
「銀ちゃんいい子にしてたアルか」
「はいはいしてましたアルよー」
 ぱたぱたと銀時の枕元に走り寄ってきた神楽のあたまを、ごしごしと撫でてやる。と、神楽の顔が一気に曇った。
「どうしたよ」
「……銀ちゃん、女の匂いがするアル」
「……どんな」
「なんかいい匂いがするヨ! 白昼堂々女を連れ込むなんて銀ちゃん不潔ヨ」
「銀さん、ほんと僕らの情操教育に関わるんでやめてくださいそういうの」
「いやちげーし女連れ込んだりしてねーし」

 僅かの間にも、高杉の香は色濃くそこに残っていた。またいつ会えるのか、と思いその香りを密かに嗅いだ銀時であった。




             了
作品名:たまゆら 作家名:空堀