あなたが朽ち滅ぶまでですよ、忌々しい
突然降って湧いた外部からの声に咄嗟に反応したのはジャーファルの足だった。蹴っても蹴ってもガスッ、ガスッ、とまるで効果が無いので両手の紐を発動させ、腕を縛り上げてから突き飛ばした。最初からこうしておけば良かった、後悔するも遅し。
「服、直したほうがいいスよ」
呆然と紐を握っているジャーファルに、マスルールは言った。表情ひとつ変えずに書類を未検の棚に差し込んでからさっさと出て行く。
「だってさ」
縛り上げられた状態で、逃げようともせず、シンドバッドはにやにやと笑っている。「誰のせいです」ジャーファルは睨みつけた。
「おまえがくれたあの言葉の効力はいつまでかな、特に期限は決めていなかったね」
首を傾げたジャーファルに、
「『シンの、好きにして下さい』」
シンドバッドは満面の笑みを浮かべながら、言ったのだ。
途端にトマトのように顔面を紅潮させたジャーファルは、どうしようもなくなった衝動をぶつけるように、シンドバッドの身体に己の踵を力一杯踏みおろした。
それを受けても尚、にこにこと嬉しそうに顔を緩ませているシンドバッドに、
「 あなたが朽ち滅ぶまでですよ、忌々しい 」
ジャーファルは言い放ったのだった。
作品名:あなたが朽ち滅ぶまでですよ、忌々しい 作家名:くらたななうみ