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娘娘カーニバル!序章~翔(1)~

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これは不思議な、摩訶不思議すぎる物語。
美しい恋姫たちと鋼鉄の侠(おとこ)たち、いや鋼鉄の乙女?たちの戦いの物語。
それでは、はじまりはじまり。

<序章 〜翔〜>
三璃紗、翔の国。
暖かい日差し、晴れ渡る青空。
窓から眺めるだけならば良い天気と言えるが、時折飛んでいく洗濯物や桶が外は強風が吹き荒れていることを教えてくれる。
硝子を叩く風に劉備ガンダムは眉を顰めて筆を置いた。
「今日は風がやたらと強いなあ〜。作物とか、家とか、みんな大丈夫か?」
心配げに外を眺める劉備ガンダムに孔明リ・ガズィは書類に走らせていた筆を止める。
思案気に爆扇機を口元へと当て、同じように窓から外を眺めた。
確かに、風が強い。
早朝から続く強風の被害を考えて張飛ガンダムに国の様子は見てもらってはいる。我が主も張飛が頼もしい事は知っているし、信頼もしている。
しかし、やはり自分の目で見なければ心配なのだろう。
民の明日を守るという志をもつ主君の気遣いに孔明リ・ガズィはそっと笑った。
「それほどご心配ならば様子を見てきても構いませんよ」
「本当か!嘘じゃないよな、孔明!」
今にでも飛び出していきそうな主に孔明リ・ガズイはにこやかに笑いかける。
「はい。ただし、条件があります」
孔明リ・ガズィの言葉に劉備ガンダムは息を呑んだ。書類をあと200枚仕上げてからといわれたら、劉備ガンダムは窓を突き破ってでも見に行く気だ。
事件は執務室で起こっているんじゃない、現場で起こっているんだ!
心の中で叫びながらも10枚くらいなら仕上げてから出かけるつもりでもある。
事務仕事など柄でもないが、根は真面目で民のためならばどんなことでも頑張ってやろうと決めているから仕事をおろそかにする気はない。
気はないが、やはり外が心配だ。
劉備ガンダムは孔明リ・ガズィをじっと見つめた。
劉備ガンダムの瞳がなによりも雄弁に「書類は嫌だ」と語っている。孔明リ・ガズィは必死の主君にばれないように内心で笑いを堪えた。
「簡単な条件です。必ず一人ではなく、誰かと一緒に行くことです。よろしいですか?」
先程までしていた劉備ガンダムの書類は明日分の仕事だ。
本来は今日しなくてもよいが、良い国、劉備ガンダムが目指す国「民の理想の国」をつくるためにはまだまだやらなければならないことが多い。
しかし、元来が体を動かす方が好きな劉備ガンダムには書類を書くなどの事務仕事はさぞつらかっただろう。
根を詰めさせすぎたという自覚もあるから、様子を見ると言うことを口実に息抜きをしてきてもらいたい。
それでも、劉備ガンダムのことだから民のために懸命に働いてしまうのは感嘆に予想がつく。
休憩してもらうためにもひとりで行かすことはできなかった。
「なあんだ、それぐらいならもちろん約束する。えーと、関羽は関平と周倉の稽古付けてるから超雲だな!」
「超雲さんなら飛影閃のところだと思いますよ」
「ありがとう!あっ、孔明も一緒に来るか?」
人好きする笑顔と共の誘いを孔明リ・ガズィは首を横へと振った。
「いえ、私は調べ物をしていますから」
「そうか。じゃあ、行ってくる!」
騒がしい足音が次第に遠ざかるのを孔明リ・ガズィは微笑みながら聞いていた。
超雲ガンダムならばうまく休憩をさせてくれるだろう。
さてと、体をほぐそうと大きく伸びをした途端に背中でボキボキと鳴る。誰もいない部屋で響く音に孔明リ・ガズィは苦笑を洩らした。
どうやら根を詰め過ぎていたのは主君だけではないらしい。
「私も少し休憩でもしましょうか。関羽さんと碁を指すのもいいかもしれませんね」
休憩の計画を立てつつ、孔明リ・ガズィは立ち上がった。
そういえば、碁を指すなど2週間ぶりかもしれない。
まともに碁を指せる武将は超雲ガンダムと関羽ガンダムしかいないし、互いに忙しかった。
久し振りに仕事以外で頭を働かせることに孔明リ・ガズィは上機嫌に執務室の扉を開けた。
?

馬小屋で愛馬、飛影閃に水をやっていた超雲ガンダムは元気で軽快な足音に、涼やかな瞳を細めた。
どうやら軍師殿が主君に外出の許可を出したらしい。
最近はみな忙しく働いていたから主君が外出することもなく、張飛ガンダムと周倉ドーベンウルフが癇癪を起こすことが多かった。
その点関平ガンダムは忙しい大人たちに遠慮してわがままも言わずに馬超ブルーデステニィと大人しく稽古をしていた。
二人はもう少し関平と馬超を見習った方が良いのではないか。
二人の頼もしいはずの武将で痛む頭を誤魔化すように愛馬を一撫でし、超雲ガンダムは後ろを振り返った。
同時に砂煙が立ち上がり、賑やかな足音が収まる。そこに現れたのは案の定、劉備ガンダムだった。
「超雲!みんなの様子を見に行こう!」
元気よく馬小屋へ滑り込んできた主君に超雲ガンダムは先程のもの思いなど感じさせないさわやかな笑みを浮かべる。
「分かりました。馬に乗っていきますか?それならすぐにでも準備を」
「いや、歩いていこう。この風の中を馬に走らせたくない」
劉備ガンダムとしては飛影閃や他の馬が強風にあおられて傷つくのを見たくないだけだったのだが、飛影閃は不満げに鼻を鳴らした。
劉備ガンダムの発言を己の力量を甘く見られたと取ったらしい。強く頭をぶつけてくる飛影閃に劉備ガンダムはのけぞる。
装備が突き刺さってかなり痛い。
(馬小屋に居る間くらい、装備ははずしとけよ!)
たとえば、張飛とか、関平とか、張飛とかが怪我するだろ!
自分の義弟をもう一人の義弟の養子よりも意識せずに子ども扱いしながら、劉備ガンダムは飛影閃からの攻撃に耐える。
「いててっ、お前がすごいのは知ってるって。でも、万が一ってこともあるだろ。今度はお前も一緒に連れていくよ」
それでも止まぬ攻撃に劉備ガンダムが根を上げそうになった時、超雲ガンダムが飛影閃の顔を撫で始めた。
「飛影閃、この馬小屋の馬たちが風に怯えている。馬たちが暴れないようにお前にはここの番をしてもらいたい。私の言うことがわかるだろう?」
「………ブルル」
まだ、不満はありそうだが賢い馬は納得してくれたらしい。一度だけ劉備ガンダムを小突き、飛影閃は超雲ガンダムに擦り寄る。
だが、それを数度繰り返した後は潔く離れた。こんなところからも超雲ガンダムと飛影閃の絆、超雲ガンダムの世話がしっかりしていることが窺える。
「助かったよ、装備がとがってて痛かったんだ。頼むから馬小屋に居る間は頭のやつは取ってくれないか?」
暗に怪我することを告げてやれば超雲ガンダムは顎に手を当てた。
「そうは言われても、関平や張飛、馬超には受けが良いからやめられない」
子どもたちもかっこいいと言っていると告げられれば、劉備ガンダムは二の句を繋げない。というか、頭突きをされたのはどうやら自分だけのようだ。
「まあ、いっか。超雲、早く行こう」
頭を乱暴に掻き、馬小屋を後にしようと歩きだした劉備ガンダムの足元が急に光り始めた。
「なんだ、これ!」
「劉備!」
超雲ガンダムが腕を伸ばし、劉備ガンダムの肩を掴んだ。渾身の力を持って光から逃れようにも体はピクリとも動かない。
それどころか二人の頭に声が語りかけてきた。