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娘娘カーニバル!序章~翔(1)~

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『お願いです。どうか、私たちの世界を救ってください。あなたでなければ、龍帝の魂を継ぐあなたでなければ…』
切ないほどの懇願をこめた女性の声だ。今にも泣き出してしまうのではないかと思う程か細い。
『お願いです。力をお貸しください』
光に包まれた二人はそのまま消えてしまった。あとには飛影閃のいななく声だけが響いた。


『お願いです。どうか、私たちの世界を救ってください』
どうして、そんなに泣きそうなんだ?
『あなたでなければ、龍帝の魂を継ぐあなたでなければ…』
どうして、俺でなければいけないんだ。特別な存在なら三候の魂を持つ孫権や曹操がいる。
『お願いです。力をお貸しください』
泣きそうなくらい困っているのに、自分じゃなくて世界を憂いているのに。
どうして、困っているあんたを放っておけるんだ!
俺の力なら、いくらでも貸してやる!
『ありがとうございます』
声が少しだけ笑った気がした。

「うぅ…」
呻き声を上げて劉備ガンダムは目を覚ました。頭が二日酔いのように痛む。
額に手をあてて起きあがろうとした途端
ムニッ。「オブッ!」「ひゃあ!」
顔に柔らかいものが当たった。同時に可愛らしい女性の声も上がる。
視界が暗いし息苦しくて不安になるはずなのに、柔らかく良い香りのするものに安心感が与えられる。
それでも心の奥で「男として早く離れろ!最低男の名がつくぞ!」と警鐘が鳴り響く。
己の勘を信じてジタバタと暴れる劉備ガンダムは目の前のものを引き剥がした。
「ぷはっ!はあ、はあ、ここはどこだ?」
新鮮な空気を肺いっぱいに送り込み劉備ガンダムは辺りを見渡した。目に入ってくるのは木々の緑、先程までいた馬小屋ではない。
そして、不思議な生物が目を見開いて座っている。
劉備ガンダムはまじまじとその奇妙な生物を眺めた。
力を入れてしまえばすぐにでも壊れてしまいそうな細い体、髪にあたると思われる桃色の糸はふわふわしていて触れたいと思う。
水を思わせる大きな瞳に全体は白い色。胸に当たる部分はふっくらとしており一番柔らかそうだ。
「えっと、大丈夫?どこか怪我してない、気分はどう?」
桃色の唇(?)が開き、目の前のふわふわした生物が言葉を発した。先程上がった可愛らしい声と同じで、頭に響いてきた泣きそうな女性と同じ声だ。
でも、悲しくなるような声音ではなく自分を心配してくれているもののように聞こえる。
戸惑いつつも劉備ガンダムは頷く。
「ちょっと頭がくらくらするけど、これぐらい大したことない」
「よかったぁ。倒れてたから心配したんだよ」
にっこりとほほ笑まれ劉備ガンダムは頬に熱が集まってきたのを感じた。
このふわふわした生物の美的感覚は分からないが、目の前の少女(だと思われる)は一般的に可愛い部類にはいるだろう。
己の正義のために戦っている身だが、自分も男だ。可愛い女の子に笑いかけてもらえれば嬉しいのが当然。
緩みそうになる頬で劉備ガンダムは人好きのする笑顔を浮かべた。
「心配してくれてありがとう。俺は劉備、劉備ガンダムだ」
「わあ!すごい偶然だね!私も劉備っていうの」
「そうなのか!偶然ってすごいな」
「本当にすごいね。ねえ、劉ちゃんって呼んでもいい?私のことは『桃花』って呼んでいいから」
「分かったよ、桃花。よろしくな」
「よろしくね、劉ちゃん」
穏やかに笑い合う二人の周りに暖かい雰囲気が流れる。しかし、突っ込み属性のものが近くに居たならば的確なつっこみを期待できた。
劉備ガンダム側ならば、ここはどこか、なぜ女人なのにそんな立派な武器を携帯しているのか、どうして桃花という名前がでてくるのか。
一方、劉備こと桃花側ならばまず最初にガンダムって何と。
残念なことに二人の劉備はぼけ属性。互いの言葉にあるつっこみ処など完全になかったことにしている。
不意に劉備ガンダムが桃花の胸をがしりと掴んだ。
「ひゃん!」
「おっ!やっぱり柔らかい!」
つきたての餅のように柔らかく、花みたいに良い香りがする。劉備ガンダムは感触を楽しむように何度も桃花の胸を触る。
きっと初めにぶつかったのはこれだなぁと思っていると桃花の様子がおかしいことに気付いた。
目元を赤らめ、涙目になっている。しかも小刻みに震えている。
罪悪感から劉備ガンダムは急いで手を離した。
「ごめん!めちゃくちゃ不思議だったからつい。痛かったか、本当にごめん」
土下座でもしそうな勢いで謝る劉備ガンダムに桃花は首を横へと振った。
「うぅん。こっちこそ急なことで驚いてごめんね」
「いや、桃花が謝ることじゃない。悪いのは俺だ、嫌われてもしょうがない」
「そんな気にしないで」
「でも、」
「珍しかったんでしょ?気になったならしょうがないよ。でも、私の胸ってそんなに珍しい?」
「あぁ。俺のいたところにはそんな柔らかそうな胸なんてなかったからな」
知り合いの女性には触れたことはないが同じガンダム、ジムとかだから普通は固い。いい匂いはしていたかもしれないが。
どうだったかなと考え込む劉備ガンダムに桃花はにっこりと笑いかけた。
「大丈夫だよ。劉ちゃんはまだまだ大きくなるよ!」
大きくなると言われたものが胸と分かり、劉備ガンダムは苦い笑いを浮かべるしかない。
「いや、俺男だし。絶対無理だって」
自分よりも年上の関羽、公孫さんの兄貴を思い浮かべる。彼らは立派な男性だが、器は大きくとも胸は大きくない。
もし、彼らに桃花みたいな胸がついていたら不気味だ。おぞましい発想を払いのけるように劉備ガンダムは頭を振った。
(夢にでてきそうだな)
鳥肌が立ちそうになる劉備ガンダムを余所に桃花が大きな瞳をさらに見開いた。
「えっ、劉ちゃん男の子なの!ごめんね、私劉ちゃんのこと女の子だと思ってた」
申し訳なさそうに睫毛を伏せる桃花に劉備ガンダムは首を傾げた。
(俺、女っぽい格好なんてしてたっけ?)
執務室を出た時はいつもの鎧の状態だったはずだ。嫌な予感がして劉備ガンダムは己の体を見下ろした。
かすかだが存在を示す胸、壊れてしまいそうな棒みたいな体、すぐに使い物にならなくなりそうな服。
普段は使わない頭を全力で回転させながら劉備ガンダムはぎこちなく桃花へと向き直る。
「桃花は鏡とか持ってないか?この際鏡じゃなくていいから顔を見れる何か!」
「えっ、鏡なら持ってるよ」
「悪いけど貸してくれ!」
顔を青ざめ必死な体の劉備ガンダムに桃花は頷き荷物を漁り始める。その間、劉備ガンダムは己に起こっていることを探っていた。
まず、龍帝剣は背中にある。これがあれば取り敢えずは戦える。
次は頭。柔らかい髪が全体を覆っており、色は黒い。兜はしていないみたいだ。
そして細くなってしまった手首には金の腕輪が巻きついている。龍の形をした腕輪は今にも動き出しそうなほど精巧な作りだ。
「はい、劉ちゃん」
「ありがとう」
いささか乱暴に受け取った劉備ガンダムは鏡を覗きこんで言葉を失った。
映っている姿は自分の知っているものではなく、桃花とよく似た姿だった。
黒い髪を一つに束ねた、快活そうな金の瞳をもつ少女が驚愕の表情で見つめ返していた。