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だぶるおー 本編後せつらい

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 あまり、ゆっくりと話す時間はなかったから、こういうことをアレルヤから聞いてしまうと、なんだか恥ずかしい気分になる。俺は、それほどアレルヤのことに詳しくない。アニューとの時間を優先していたから、マイスターとは話なんかしなかったからだ。
「もし、降りるなら、どっかで逢おうよ。」
「そうだな。AEUなら案内できる。」
「ありがとう。じゃあ、僕、行くね。」
 どちらでも構わない、と、アレルヤは言った。地上へ降りて、組織との縁を切っても、『ロックオン』であることに変りはないと言われてしまった。縁を切るつもりはない。この寝ている男との決着はつけるつもりだが、組織には在籍するつもりだった。




 目が覚めた刹那は、簡単な検査の後で、スメラギやティエリアと、その後について話し合っていた。マイスターのリーダーである刹那は、このまま組織に残るのは確定している。事後処理の打ち合わせだとか、組織の離反者の搬送についての打ち合わせ。やることは、山ほどあるらしく、なかなか顔を遭わせられないうちに時間は過ぎていった。
 とりあえず、やることだけはやっておこうと、一時、地上へ降りることは申請した。まだ離反者の搬送をするにはトレミーの修理は終わっていない。だから、時間はあるだろうと思ったからだ。それに、今すぐ、どうこうしなくてもいい。落ち着いたら、あいつのほうからも何か言うだろうと、先に地上へと降りた。

 忘れたくないし、そこにだけでも、存在を遺したくて、新しいものを、うちの隣に建てた。
 生きていた証として、愛していたことを俺なりに形にしたくて建てたそれに、俺が考えた言葉を刻んでもらった。ずっと、ここにいればいい。解り合えたのだから、俺の家族の隣にいればいい、と、思った。そして、どこを流離っているかわからない兄の名前も刻んでおいた。これで、家族仲良く、天国で再会していることだろう。

・・・・さて・・・・

 忘れないよ。でも、生きている俺は、生きているあいつの傍に立とうと思う。同情でも憐憫でもなくて、あいつが生きていることを、傍で見ていてやろうと思うんだ。ひとりで、なんでも抱え込んで飲み込んで昇華して行くあいつが、いつか、泣きたいと思った時に、貸してやれる身体でありたいと思う。
 浮気モノって怒るなよ? おまえに抱いてる感情とは違うものなんだ。俺にも、よくわかんねぇーけど、目を逸らしたくない。
だから、俺は、あそこで生きてくよ。
「ロックオン・ストラトス」って名前でな。ライル・ディランディは、ここに残していく。それは、おまえとの関係で使っていた名前だから。ここに来たら、思い出すけど、あそこでは使わない。
 約束する。おまえだけだ。ライルって呼んでいいのは。


 

 他の細々とした用件を片付けて、さらに、カタロンとも連絡を取って、なんだかんだで用事を処理し終えるのに十日もかかった。元々、組織に潜入するために、片付けはしておいたつもりだが、人一人の存在を完全に隠すのは、結構な骨折りだった。ティエリアに頼めば、一発で済むはずだが、とうしても驚かせてやりたかったので手間をかけた。たまには、驚きやがれ。俺だってやる時はやるんだよ、と、内心で啖呵を切って組織に戻った。

 組織から軌道ステーションに迎えに来たのは、その件の男で、手際よく小型艇はステーションを離れた。レーダーレンジの感知されない地域まで、無言のままで、その男は艇を操った。
 組織からもステーションからも離れた場所で、ようやく小型艇は止まった。
「ここなら問題はない。・・・・俺を放り出して、おまえはステーションに戻ればいい。」
 その男は、安全装置を解除した銃を、俺に差し出した。とても真摯な目で、俺を見詰めている。
 やはり、そう受け取っていたか、と、思うと、笑えてしまい、腹を抱えた。困惑したその男、刹那は、複雑な顔をしている。
「ライル、どうした? 」
 覚悟してきたのだろう。全部が終わって、ようやく約束を果たせると思っていたのだ。そんなもの、最初から約束した覚えは、俺にはない。
「ライル? あんたに、その名前で呼ばれることは拒否する。俺の名前は、『ロックオン・ストラトス』 成層圏の向こう側まで狙い撃つ男だ。・・・・いや、これは兄さんの台詞だな。俺の場合は、成層圏の向こう側から刹那を監視する男だ。」
「なに? 」
「俺は、組織に残るぜ、刹那。あんたの生き様を俺が監視してやる。・・・・死にたいと泣くことがあったら、胸でも腕でも身体でも貸してやる。いや、そうじゃなくても、身体は貸してやるつもりだけどさ。」
「おまえ、何を言い出した? 俺は・・・」
「あんたさ、ほんと、不器用だよな? でも、そういうとこが目を離せないんだよ。優しいくせに、それを隠してさ。・・・・だから、『わかった』って、俺は言ったんだ。あんたの優しさがわかったから、あんたと一緒に居るっていう意味だったんだ。・・・・わかってなかったよな? 」
 いくらなんでも経験があるからといって、グダグダの年上の男は抱けない。そういう感情がないとできない相談だ。優しく大切に触れてくれたことで、それは理解できた。男の身体は、そういう意味では正直なものだ。自分の一番大切なものを俺にくれることで悩んでいたことも判っている。傍にいることが、こいつのためになるかならないかで、俺も悩んだが、アレルヤの言葉で背中を押された。兄とは違う形で、こいつの隣に立っていようと決めた。

 恋人とかいう甘ったるい関係でなくてもいい。ただ、兄のように守ることはできないだろう。俺は、こいつが間違ったら止めるつもりだし、バカなことをしたら殴るつもりだ。その関係の上に、セックスが伴うなら、それでもいいというくらいの気持ちだった。
「だが、俺は、おまえの・・・」
「だからなんだ? 兄さんを助けられなかった? アニュを殺した? それだって、あんたしか、そこにいなかったから、そうなっただけだ。もし、そこに、アレルヤやティエリアがいても同じことだったはずだろ? だから、あんたに復讐するなんてのはナンセンスだ。俺、それも言ったよな? 」
「ラッ、いや、ロックオン。俺は、それを望んでいる。」
「だから、俺は叶えない。楽になりたいなら、戦え。それが、あんたの生き様だ。俺は、それをずっと見てる。絶対に、あんたが泣くとこを拝んでやる。」
 いつか、そんなこともあるだろう。まっすぐに前を向いていても、挫折することもある。その時に、何かできるとしたら俺だけだ。そういう気持ちで、刹那を抱き締めた。
「俺は兄さんみたいに守ってなんかやらないからな。あんたが、俺を守ってくれ。その代わり、俺は、あんたが、どんな醜態を晒しても逃げないから。感情をぶつけたいならぶつければいい。身体が必要なら貸す。・・・・そういう関係で、あんたと繋がりたい。」
「・・・ロックオン・・・・」
「あー俺が気分が、そっちに向いたら誘うから、それにも応えてくれると有り難いな。どう? 」
「・・・おまえ・・・正気か? 」
「正気だよ。ライル・ディランディは地上に、アニューのところに捧げてきた。だから、その名前は忘れろ。」