娘娘カーニバル!第1章
「俺の名は劉備!劉備ガンダム!お前たちにこの人たちを傷つけさせはしない!」
劉備ガンダムの気迫に呑まれた烏丸の兵は小さく息を呑んだ。
烏丸の兵たちには劉備ガンダムが龍を纏い、牙を向けて自分たちを睨みつけているように見えた。後退する烏丸に劉備ガンダムは躍りかかる。
龍帝剣を振り下ろし目の前の烏丸を切り捨て、振り向きざまに二体の烏丸の兵を横一文字に切る。
吹き飛ばされた烏丸の兵に目をくれることなく劉備ガンダムは次々と黒い烏丸を倒し続ける。
慣れた鎧の擦れる音、慣れた戦いの感触、慣れた重さ。
武者ガンダムとして戦いを感じながら、劉備ガンダムは戻ってきた体よりも桃花たちの安否を気にしていた。
(桃花とあの帽子の子は戦い慣れていない。早く安全な場所に移動させないと!)
「姉上!朱里!無事か」
長い黒髪を揺らし駆け寄ってきた女性に劉備ガンダムは早口で問いかけた。
「あんたは桃花と同じ義勇軍か!?」
いきなり鋼鉄の三頭身が話しかけてきたため愛紗は武器を構えた。
「貴様、何者だ!」
「さっき名乗っただろ。劉備ガンダムだ!」
烏丸の剣を受け止めつつ怒鳴り返せば、黒髪の女性から怒号が反ってくる。
「ガンダムなんて聞いたことがない!」
腹を狙ってくる黒い烏丸を青龍円月刀で弾き飛ばした。その腕前に劉備ガンダムは感嘆の声を上げる。少し、関羽の動きに似ている。
「やるじゃないか」
「私の質問に答えろ!ガンダムとはなんだ!?」
「ガンダムはガンダムだ!取り敢えず俺を信用してくれ」
「答えになってない!こいつらと同じ三頭身のお前を信用しろというのか!」
敵意をむき出しにする黒髪の女性に白い衣の水色の髪の女性が割って入った
「愛紗!今はそいつをどうこう言っている場合ではないぞ。加勢してくれるならしてもらおう」
「しかし、星。こんな摩訶不思議生物を信用するなど無理だ!」
「たとえ、三頭身でも、胡散臭かろうと、愛紗のしっとり艶艶の下の毛を狙っていようとも」
「ちょっと待ってくれ!前者二つは認めるとしても最後のは認めちゃいけない気がするのは俺の気のせいか!」
「星!こんな状況で私のネタを出すな!」
一体と一人の抗議をさらりと無視して水色の髪の女性は烏丸を弾き飛ばした。
「この黒い鋼鉄の人形はわれわれよりも背が低く、狙ってくるのは腹から下。
厭らしい相手にどうしても下を見ながら戦わなくてはならない。しかも固いから倒すのにかなり疲れる。
こんな慣れない戦いにこの黒い人形と同等、いやそれ以上に戦える者が加わるのは有りがたいと思わんか」
「それはそうだが…」
渋る黒髪の女性を桃花が強い意志を秘めた目で見詰めた。
「愛紗ちゃん。劉ちゃんを信じて」
「頼む、俺を信じてくれ」
二人の劉備から頼まれ黒髪の武人はとうとう白旗を上げた。
「姉上の言葉を信じて、取り敢えずいまのところは背中を預けよう」
「ありがとう、えっと黒髪の美人さんに白い服の美人さん!」
劉備ガンダムの放った「美人」に二人はいち早く反応した。特に反応が顕著だったのは黒髪の武人だ。
「劉備ガンダムとやら、私は関羽、字は雲長。そして真名は愛紗だ。」
先程までの態度とは一変させた愛紗に仲間たちは声を顰め話し始める。
「愛紗、美人といわれたのがそれほど嬉しかったのか…」
「愛紗さん…」
いつも初対面の人間には子持ち、黒髪だけが美しいと言われ続けた愛紗に仲間たちは同情の眼差しを送った。
愛紗の悲しい事情など知らない劉備ガンダムは真名を教えてもらえたことに喜びをあらわす。
「よろしく、愛紗さん。早速だけど、桃花と帽子の子を頼む!」
「任せておけ」
劉備ガンダムは愛紗が桃花たちを安全な場所へと移動させるのを見届ける。
そして一人で苦戦している小柄な少女の元へと駆け寄ろうとするが複数の兵が劉備ガンダムの行く手を遮った。
「くそっ!これじゃ、あの子の所に行けない」
火花を散らせ刀を受け止めた劉備ガンダムは歯がゆい面持ちで黒い敵に切りにかかった。
「もう誰でもいいから手を貸せなのだー!」
二体の黒い烏丸に押され身動きのできない少女から悲鳴が上がる。
そこにもう一体の烏丸の兵が少女の頭上へと刀を振り下ろそうとした、その時
「真空迅!」
声と共に風の刃が烏丸へと襲いかかった。
少女を襲っていた烏丸は吹き飛ばされ、少女は目を何度も瞬かせる。
「一体何なのだ?」
「遅くなって申し訳ありませんでした、劉備さん」
風の刃が現れた方向から茂みが揺れ、聞き知った声に劉備ガンダムは瞳を輝かせる。
「超雲!」
茂みから現れた武者ガンダムは烏丸へと嵐の切っ先を向けた。
「我が主とその友に刃を向ける者は前に出ろ!この超雲が相手になろう!」
その腕には劉備ガンダムと同じように馬の彫刻の腕輪が金色に輝いていた。
長い得物を振り回し、超雲ガンダムは黒い烏丸を蹴散らしていく。
劉備ガンダムも負けじと龍帝剣を振るい、次々と烏丸の兵を倒していった。二体は互いの背中を預け、隙なく、確実に敵の数を減らす。
重い鋼鉄の体などと思わせない俊敏な動きに恋姫たちは唖然と目で追いかける。
「なんという動きだ。一撃一撃を的確に相手に与えているのに動きがあんなに軽い!」
愛紗は己の愛刀を握りしめ、興奮気味に二体の戦いを見詰めた。
むやみに戦いたいというわけではないが、一度手合わせをしたい。武人としての心が愛紗の劉備ガンダムへの疑心感を払しょくさせる。
それは黙ってはいるが星も同じだった。
同じ超雲、同じ武器、カラーリングも同じでキャラかぶりを心配していたが超雲ガンダムの戦い方に武人としての『星』が揺さぶられる。
二人にガンダムである鋼鉄の二体を疑う心はすでに無くなっていた。
「これで終わりだ!星龍斬!」
「真空迅!」
劉備ガンダムが星の軌跡を描き、敵を切りつける。そこへ超雲ガンダムの風の刃が吹き付ける。
二体の攻撃が終わった頃、黒い烏丸はすべて地面へと伏していた。
「劉備さん、怪我は有りませんか?」
「俺は全然平気さ。おっと、それよりも」
劉備ガンダムは龍帝剣を背中に収め桃花の元へと駆け寄る。
桃花へと鋼鉄の手を差し伸べたところで自分と彼女の種族の違いをはじめて意識した。
鋼鉄の手は力の込め方を間違えただけで桃花の柔らかい体を傷つけてしまう。
冷たく、戦いのために傷ついた手は暖かく、優しい桃花の手を握っても許されるのだろうか。
戦いとは無縁そうな彼女に触れてもいいのか。
(そうだ、この思いは翔の子どもたちにも思ったんだ)
自分とは違う、戦いではなく誰かを慈しむことができる無邪気な手を握りたくない。
でも、自分は民のために手を差し伸べられる存在である必要がある。
がむしゃらに民の明日を守るために戦っていたが、その自分が民の明日を奪った。
その矛盾した事実を子どもたちと接する度に感じていた。
隠してきた思いが脳裏を駆け、劉備ガンダムは差し伸ばした手を下ろそうとした。
「ありがとう、劉ちゃん。私と朱里ちゃんを守ってくれて」
しかし、その手は桃花の柔らかい手に掴まれ下ろすことができなかった。
弱弱しい力は振り払うこともできたのに、劉備ガンダムには暖かい手を離すことが出来ない。
劉備ガンダムの気迫に呑まれた烏丸の兵は小さく息を呑んだ。
烏丸の兵たちには劉備ガンダムが龍を纏い、牙を向けて自分たちを睨みつけているように見えた。後退する烏丸に劉備ガンダムは躍りかかる。
龍帝剣を振り下ろし目の前の烏丸を切り捨て、振り向きざまに二体の烏丸の兵を横一文字に切る。
吹き飛ばされた烏丸の兵に目をくれることなく劉備ガンダムは次々と黒い烏丸を倒し続ける。
慣れた鎧の擦れる音、慣れた戦いの感触、慣れた重さ。
武者ガンダムとして戦いを感じながら、劉備ガンダムは戻ってきた体よりも桃花たちの安否を気にしていた。
(桃花とあの帽子の子は戦い慣れていない。早く安全な場所に移動させないと!)
「姉上!朱里!無事か」
長い黒髪を揺らし駆け寄ってきた女性に劉備ガンダムは早口で問いかけた。
「あんたは桃花と同じ義勇軍か!?」
いきなり鋼鉄の三頭身が話しかけてきたため愛紗は武器を構えた。
「貴様、何者だ!」
「さっき名乗っただろ。劉備ガンダムだ!」
烏丸の剣を受け止めつつ怒鳴り返せば、黒髪の女性から怒号が反ってくる。
「ガンダムなんて聞いたことがない!」
腹を狙ってくる黒い烏丸を青龍円月刀で弾き飛ばした。その腕前に劉備ガンダムは感嘆の声を上げる。少し、関羽の動きに似ている。
「やるじゃないか」
「私の質問に答えろ!ガンダムとはなんだ!?」
「ガンダムはガンダムだ!取り敢えず俺を信用してくれ」
「答えになってない!こいつらと同じ三頭身のお前を信用しろというのか!」
敵意をむき出しにする黒髪の女性に白い衣の水色の髪の女性が割って入った
「愛紗!今はそいつをどうこう言っている場合ではないぞ。加勢してくれるならしてもらおう」
「しかし、星。こんな摩訶不思議生物を信用するなど無理だ!」
「たとえ、三頭身でも、胡散臭かろうと、愛紗のしっとり艶艶の下の毛を狙っていようとも」
「ちょっと待ってくれ!前者二つは認めるとしても最後のは認めちゃいけない気がするのは俺の気のせいか!」
「星!こんな状況で私のネタを出すな!」
一体と一人の抗議をさらりと無視して水色の髪の女性は烏丸を弾き飛ばした。
「この黒い鋼鉄の人形はわれわれよりも背が低く、狙ってくるのは腹から下。
厭らしい相手にどうしても下を見ながら戦わなくてはならない。しかも固いから倒すのにかなり疲れる。
こんな慣れない戦いにこの黒い人形と同等、いやそれ以上に戦える者が加わるのは有りがたいと思わんか」
「それはそうだが…」
渋る黒髪の女性を桃花が強い意志を秘めた目で見詰めた。
「愛紗ちゃん。劉ちゃんを信じて」
「頼む、俺を信じてくれ」
二人の劉備から頼まれ黒髪の武人はとうとう白旗を上げた。
「姉上の言葉を信じて、取り敢えずいまのところは背中を預けよう」
「ありがとう、えっと黒髪の美人さんに白い服の美人さん!」
劉備ガンダムの放った「美人」に二人はいち早く反応した。特に反応が顕著だったのは黒髪の武人だ。
「劉備ガンダムとやら、私は関羽、字は雲長。そして真名は愛紗だ。」
先程までの態度とは一変させた愛紗に仲間たちは声を顰め話し始める。
「愛紗、美人といわれたのがそれほど嬉しかったのか…」
「愛紗さん…」
いつも初対面の人間には子持ち、黒髪だけが美しいと言われ続けた愛紗に仲間たちは同情の眼差しを送った。
愛紗の悲しい事情など知らない劉備ガンダムは真名を教えてもらえたことに喜びをあらわす。
「よろしく、愛紗さん。早速だけど、桃花と帽子の子を頼む!」
「任せておけ」
劉備ガンダムは愛紗が桃花たちを安全な場所へと移動させるのを見届ける。
そして一人で苦戦している小柄な少女の元へと駆け寄ろうとするが複数の兵が劉備ガンダムの行く手を遮った。
「くそっ!これじゃ、あの子の所に行けない」
火花を散らせ刀を受け止めた劉備ガンダムは歯がゆい面持ちで黒い敵に切りにかかった。
「もう誰でもいいから手を貸せなのだー!」
二体の黒い烏丸に押され身動きのできない少女から悲鳴が上がる。
そこにもう一体の烏丸の兵が少女の頭上へと刀を振り下ろそうとした、その時
「真空迅!」
声と共に風の刃が烏丸へと襲いかかった。
少女を襲っていた烏丸は吹き飛ばされ、少女は目を何度も瞬かせる。
「一体何なのだ?」
「遅くなって申し訳ありませんでした、劉備さん」
風の刃が現れた方向から茂みが揺れ、聞き知った声に劉備ガンダムは瞳を輝かせる。
「超雲!」
茂みから現れた武者ガンダムは烏丸へと嵐の切っ先を向けた。
「我が主とその友に刃を向ける者は前に出ろ!この超雲が相手になろう!」
その腕には劉備ガンダムと同じように馬の彫刻の腕輪が金色に輝いていた。
長い得物を振り回し、超雲ガンダムは黒い烏丸を蹴散らしていく。
劉備ガンダムも負けじと龍帝剣を振るい、次々と烏丸の兵を倒していった。二体は互いの背中を預け、隙なく、確実に敵の数を減らす。
重い鋼鉄の体などと思わせない俊敏な動きに恋姫たちは唖然と目で追いかける。
「なんという動きだ。一撃一撃を的確に相手に与えているのに動きがあんなに軽い!」
愛紗は己の愛刀を握りしめ、興奮気味に二体の戦いを見詰めた。
むやみに戦いたいというわけではないが、一度手合わせをしたい。武人としての心が愛紗の劉備ガンダムへの疑心感を払しょくさせる。
それは黙ってはいるが星も同じだった。
同じ超雲、同じ武器、カラーリングも同じでキャラかぶりを心配していたが超雲ガンダムの戦い方に武人としての『星』が揺さぶられる。
二人にガンダムである鋼鉄の二体を疑う心はすでに無くなっていた。
「これで終わりだ!星龍斬!」
「真空迅!」
劉備ガンダムが星の軌跡を描き、敵を切りつける。そこへ超雲ガンダムの風の刃が吹き付ける。
二体の攻撃が終わった頃、黒い烏丸はすべて地面へと伏していた。
「劉備さん、怪我は有りませんか?」
「俺は全然平気さ。おっと、それよりも」
劉備ガンダムは龍帝剣を背中に収め桃花の元へと駆け寄る。
桃花へと鋼鉄の手を差し伸べたところで自分と彼女の種族の違いをはじめて意識した。
鋼鉄の手は力の込め方を間違えただけで桃花の柔らかい体を傷つけてしまう。
冷たく、戦いのために傷ついた手は暖かく、優しい桃花の手を握っても許されるのだろうか。
戦いとは無縁そうな彼女に触れてもいいのか。
(そうだ、この思いは翔の子どもたちにも思ったんだ)
自分とは違う、戦いではなく誰かを慈しむことができる無邪気な手を握りたくない。
でも、自分は民のために手を差し伸べられる存在である必要がある。
がむしゃらに民の明日を守るために戦っていたが、その自分が民の明日を奪った。
その矛盾した事実を子どもたちと接する度に感じていた。
隠してきた思いが脳裏を駆け、劉備ガンダムは差し伸ばした手を下ろそうとした。
「ありがとう、劉ちゃん。私と朱里ちゃんを守ってくれて」
しかし、その手は桃花の柔らかい手に掴まれ下ろすことができなかった。
弱弱しい力は振り払うこともできたのに、劉備ガンダムには暖かい手を離すことが出来ない。
作品名:娘娘カーニバル!第1章 作家名:ソラ