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だぶるおー 天上国1

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ユニオン連合国領ギリギリの辺りで、不覚にも馬から転がり落ちた。いきなり、馬が暴れたので落馬は仕方が無いと思う。ただ、ものすごく残念なことに、落馬した先が崖で、そこから、さらに転がったのは不幸だった。ゴロゴロと転がったところまでは覚えているのだが、次に目を覚ましたら、状況が一変していた。

 天蓋つきのベッドに寝かされていたので、どこかで救助されたんだな、とは、思ったものの、着ている服が、胸元にリボンがある女性モノの寝巻きらしきもので、「なんじゃこらぁーーっっ。」 と、叫んだら、騎士らしき人間が、すぐに顔を出して、「姫、起きてはいけない。きみは、怪我をしているんだ。何も心配することはない。ここで、傷を癒すがいい。」と、説明してくれた。

・・・・姫?・・・俺、男だったはずだが?・・・・

 右手が動かないので、左手で、身体を確認したら、紛れもなく俺は男だったわけで、起き上がろうともがいたら、その男に止められた。
「驚くのは、最もだ。だが、ここは私の城だから、追っ手は来ない。」
「追っ手? 」
「きみの馬は、尻に矢を射られていたんだ。おそらく、きみの生命を狙ったものだと思われる。どこの姫かは存じないが、何事かあって逃げてこられたのだろう? だから、気にすることはないんだ。私は、きみに一目惚れをしてしまったらしい。ゆっくりと傷を癒し、私のことも理解してくれると嬉しい。」
「あの、俺、姫じゃないと思うんだが? 」
「ああ、失礼、私の名前は、グラハム・エーカー。ユニオン軍の東の国境警備隊、通称「オーバーフラッグス」の隊長だ。ここは、私の居城、黒の城だ。どうか、グラハムと親しく呼んでくれると光栄に思う。」
「いや、そうじゃなくてさ。」
「それから、侍女を二人用意している。なんでも命じてくれればいい。姫の服は、ここは田舎で、なかなか良質のものはないのだが、王都から取り寄せているので、しばらくは、我慢して欲しい。」
「あの、俺はさ、別に追われてるわけじゃ・・・」
「私と姫の間に、遠慮などいらない。そうだ、何か娯楽が必要だな。」
 ことごとく話が通じない。別に、追っ手がかかるようなことは・・・と、言いかけて口を噤んだ。ないとは言えない。だが、生命の関わるような追っ手ではないはずだ。
 それから、そのグラハムという男は、バイオリンを持ってきて、優雅に弾きこなした。グラハムは金髪碧眼の美丈夫で、会話は成立しないが、立ち居振る舞いの綺麗な男だ。とりあえず、保護されたということは理解したが、どうも言葉が通じないのだけは、馴染めない。
 そして、侍女たちが現れて、やれ、食事だ、お茶だ、着替えだ、と、世話を焼いてくれるのだが、こちらも会話が成立しない。医者も診察はしてくれるのだが、こちらも、「姫様の傷は・・・」 と、説明してくれるわけで、悲しいぐらいに会話にならない。俺が何か言おうとしても、取り合ってくれないのだ。
・・・・これはもしかして、新手の捕虜ってヤツなのか・・・・
 部屋からは出られないので、そう考えれば納得できたりするのだが、しかし、この待遇は捕虜というには贅沢だ。崖を転がり落ちたから、あちこち打撲しているし、右手は、二の腕をぽっきりと折っている。とりあえず、打撲が治ったら、逃げるとしようと、大人しくしていることにした。




 国境警備隊とはいえ、王都には、何度か報告や会議などで戻ることもある。基本的に、その役目は隊長ということになる。そして、留守居は、副隊長のジョシュアが引き受けるわけだが、今回は、真剣に隊長が頼みごとをしてきた。
「私の私室に、姫をひとり匿っている。どこからか落ち延びてきた見目麗しい姫なのだが、ひとりにしておくのは忍びない。ジョシュア、時間のある時でいいから話し相手をしてくれないか? 」
「はあ? グラハム、それ、攫ってきたとか言わないだろうな? 」
「バカなことを言うな。追っ手に追われているのを助けたのだが、ケガをされていたので、治療させているところだ。姫は、あまり出自のことなどは話したくないらしく、何も言わないのだが、私が部屋を訪れると嬉しそうにするんだ。きっと、寂しいのだと思う。それから、姫は追われる身だ。警戒はしてもらいたい。ハワードとダリルにも頼んであるが、きみのほうが剣の腕前は上だからな。そういう意味でも頼みたい。」
「それ、別手当くれるっていうなら頼まれてやってもいいぜ? 」
「ああ、それぐらい当たり前だ。くれぐれも姫のことを頼む。」
 まあ、ジョシュアとしたら、特別手当をもらえるなら、それぐらいのことはやってやる。この隊長、腕はいいのだが、どうも会話が成立しないおかしな男なので、そういう意味では親しくなりたいと思ったことは無い。弟妹がたくさんいる実家への仕送りが必要だから、この仕事についているだけで、この男に義理も尊敬もないからだ。


 慌しく出て行った一個小隊を見送り、それでは、その件の見目麗しい姫とやらの顔を拝んでやろうと、グラハムの私室にやってきた。侍女が控えの間に居て、「姫様は、午睡です。」 と、恭しく拒絶されたが、顔を見るだけだ、と、強引に通って奥の部屋に入った。隊長の私室というのは、かなり広い。天蓋つきのベッドが、一番奥にあり、それは、薄いカーテンを閉じられている。あれだけ力説するのだから、かなり美人なんだろうと、静かに、そのカーテンを開いて中を覗いたら、おかしなものが寝ていた。
「なんじゃ、これはっっ。姫って、男じゃねぇーかっっ。あのバカ、目まで扁形してやがんのかよっっ。」
 ベッドには、かなり背の高いと思われる男が、女物の寝巻きで横になっていた。目の保養を目論んでいたジョシュアは、がっかりしすぎて、思わず怒鳴った。その声で、パチリと、その見目麗しい姫と呼ばれている男の目が開いた。孔雀色の瞳が、ゆっくりとジョシュアに焦点を合わせて苦笑した。
「やれやれ、ようやく言葉の解る人間が来てくれた。」
「おいっっ、あんた、男だろ? なんで?」
「それは、グラハムさんとやらに聞いてくれ。俺は気がついたら、ここに寝かされてて、ずっと、『姫』って呼ばれてんだよ。」
 これまでの経緯を、姫と呼ばれている男は、手短に説明して、やれやれと左手で髪を掻き上げた。
「会話成立しねぇーし、みんな、姫って呼ぶし・・・もう、俺がおかしいのかと悩んだぜ。」
 話し終えて、ふう、と、息を吐いている男に、ジョシュアも同意した。そうなのだ。グラハムは、どこかで会話が成立しない。何かしら曲折して理解するのだ。
「あーすまねぇーな。あいつ、そういうとこあんだよ。じゃあ、あんたは、ただの旅人か? 」
「ああ、ユニオンの王都へ仕事でも探しに行こうかと思ってたんだ。それなのに、落馬するし崖から落ちるし、踏んだり蹴ったりだ。」
「そりゃ、大変だったな。」
「まったくだ。よかったよ、あんたが来てくれて。俺がマトモなんだとわかった。」
「あはははは・・・あいつは王都へ出張ったんだ。それで、あんたの警護と話し相手を俺が、申し付かったんだ。俺は、副隊長のジョシュア。あんたは? 」
「ロックオンだ。」
「ロックオン? ということは、弓か? 」
作品名:だぶるおー 天上国1 作家名:篠義