夜になるまで待って
だからアロイスは、暫く執事が足を止めていたことに気付けなかった。
「クロード?」
「旦那様」
「なにー」
「こちらですよ」
まだ張り上げなくても声の届く距離で呼ばれて駆け寄った先、アロイスの部屋のドアが開かれていた。
今度こそ指が届き、部屋に押し込められ、何故かクロードはまだ境界線の向こうに留まったままでキスと、ぼたんがあっという間に外される感触。
「そっち?!!」
そもそも拒まれるとはまったく思っていなかったであろう執事を一気に押しのける。もっとも長身があからさまに揺らいだ手応えには一瞬動揺してしまって、その隙に見えたクロードは表情をちっとも変えていなかったから、ついでに蹴りをひとつ入れてやる。
わざと派手な音を立てて閉めたドアを背に、崩れ落ちるように座り込んだ。
「……知らないっ」