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永遠に失われしもの 第6章

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「オレイニク公爵様、どうぞ」


 と枢機卿補佐らしき人物が
 シエルを執務室に案内した。


 緋色の礼服を纏ったエットーレ枢機卿は
 執務机の向こう側で、
 背を向け窓の外に顔を向けている。

 彼が手をあげると、枢機卿補佐は、
 一礼してから部屋を退出した。


 「影の棺人の一族である
  オレイニク家の方がこちらにわざわざ
  出向かれるということは、
  何かを封印せねばならない事態だと
  解釈してよろしいのかな?」

 
 悠然と話しかけながら、ゆっくりと
 エットーレ枢機卿はこちらを向いた。


 想像していた欲にまみれた男ではなく、
 物腰柔らかく上品な物言いで、
 とてもセバスチャンが言っていた
 趣味の持ち主とは思えない。


 ・・勝手に話が進行してるが
 全く意味がわからないぞ??・・


 「ええ」
 

 とりあえずこの場を繕って、
 シエルは生返事をしている。


 「それでは、封印に
  必要なものはお持ちですな?」

 と言いながら、するすると枢機卿は
 シエルに近づいてきた。


 ・・何だ??必要なものって・・

 
 枢機卿は、シエルの顎をくいっと
 上に向けさせると、顎から首を優しく撫で、そのままシャツの中に滑らかに手を滑らせた。

 
 身をこわばらせるシエルだったが、
 すぐ枢機卿は、手繰るように
 シエルの首にかけられていた首飾りの
 鎖を引きずりだすと、そのヘッドにある
 銀の鍵をしげしげと触り始めた。


 「ふむ、本物のようですな」


 ・・セバスチャンめ!
 知っていたのなら僕に教えておけ!
 また、あいつ独特の嫌がらせをしやがって
 ・・おかげで肝を冷やしたじゃないか・・

 
 「オレイニク家には、棺人の一族として
  東方スラブでの活動のため、
  長年仕えていただきましたが、

  ここ100年以上の間は、回収も封印も
  行われてはいなかったので、
  確認させて頂きました。

  その鍵に刻印されているのは、
  確かに教皇の授けし家紋」


 「では、秘密文書保管庫への
  立ち入りの許可を。」
 

 シエルにとっては、
 枢機卿のいう回収も封印も
 全くわけがわからないが、
 とにかく目的さえ果たされれば
 それでいいのだ。

 
 「その前に・・・」
 

 シエルは嫌な予感がして、
 背筋が寒くなってきている。

 
 「オレイニク公爵。
  貴方は私が死番についていることは
  ご存知でしたか?」

 
 死番・・確か特別な能力を持つ聖職者がつく
 教皇庁での絶大な地位だったはず。


 「いえ・・・」


 「ふむ。そうですか。

  では申し上げますが、先ほどより、
  貴方様から、大変邪悪な
  香りが致しますが・・・」

 予想外なことを言われて、
 思わず目を見張るシエル。