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永遠に失われしもの 第6章

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 ・・この男、
   僕が悪魔だと見抜いた??・・


 エット-レ枢機卿はシエルに近づき、
 目の前で何やら低く呟くと、
 胸の上で十字を切った。


 ・・どうすればいい?セバスチャン・・


 エット-レ枢機卿の顔が一瞬歪んだかと
 思うと、獲物を前に鎌首を持ち上げる蛇
 のように無機質で狡猾な顔付へと変貌する。


 「邪悪で穢れし、その御身・・
  さらに汚して差し上げましょう」


 ・・一体何を言ってるんだ??・・

 
 と考えた瞬間、シエルは応接用のソファに
 突き飛ばされ、上から圧し掛かられて
 身動きもとれない。

 
 背はそう高くはないものの、
 でっぷり太っているエットーレ枢機卿の
 身体の下で、全圧力を受けて
 シエルは息も絶え絶えである。

 
 ・・くッ・・く・苦しいッ!・・・

 
 エットーレ枢機卿の口から生暖かい息が
 シエルの顔に吹きかかり、
 その額からにじみ出る汗がぼたっぼたっと
 シエルの顔に滴り落ちてくる。


 ・・き・・気持ち悪い!・・・


 さらにその手はシエルの
 ハーフパンツから突き出た、
 そのしなやかなふくらはぎから
 太ももまで、絡みつくように撫でまわす。


 ・・こいつ!!・・

 
 シエルの見開かれた瞳が
 紅く移り変わり始めたその時に、
 エットーレ卿はさらにシエルの華奢な
 身体に圧力をかけ
 両手でシエルの頭を掴んだ。


 「貴方を汚して、
  内からその悪魔を
  追い出してさしあげましょう」
 

 ・・こいつッ!!殺してやるッ!・・


 瞬間、シエルの脳内には、
 エットーレ卿の舌を千切り取り、
 流れ出る血を余す所なく舐めまわし、
 その肉を引き裂き、骨を噛み砕く
 残虐で甘美な夢想が広がった。


 そして自分がその想像に、
 背筋に震えが来るほどの興奮と歓喜
 を覚えているのに気がついた。

 その幻想に金縛りにあったかのように、
 シエルは己の身体が
 自らの意思と連動することのない、
 まるで人形にでもなったか
 のような感覚を味わう。


 ・・セ・・セバ・・ス・チャン・・


 なんの抵抗もしないで身を任せた様子の
 シエルにエットーレ卿は
 淫猥な表情で囁く。


 「公爵とは趣味が合いそうですな・・

  ああ・・それにしても何と
  貴方は可愛らしい・・・

  この滑らかな絹のような肌質
  大きなガラス玉のような透明な瞳
  しっとりして柔らかな頬
  気の強そうな、それでいて上品な唇
  小さく華奢で壊れてしまいそうなほど
  頼りない膝蓋・・・」  」


 エットーレ卿は器用に
 片手でシエルのシャツのボタンを外し、
 胸をまさぐろうとし始めたとき


 「一体何を
  なさっていらっしゃるのですか?」

 
 突然耳に、聞きなれた声が届いて、
 はっとシエルは我に返ったが。

 執務室の窓のカーテンが
 外からくる風でたなびき、
 セバスチャンが
 窓辺に立っているのが見える。

 逆光で見え難いものの、
 その声は冷ややかで、
 その眼差しは侮蔑を明らかに含み、
 嫌悪の表情を浮かべているのだろう
 ことがわかった。

 シエルの心に屈辱感が満ちてくると、
 またも陰惨で残虐な妄想が広がり、
 現実感が遠のいていく。


 「な・・なんだ??お前は?」


 卿は驚き、シエルの身体から飛びのいた。