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Love Sick

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たとえばこれが、恋、という名の病なら。

俺は、俺が思っていた以上に重症なのかもしれない。




[ Love Sick ]




「・・・・・・はぁ」

「梓馬様、お疲れでございますか?」

「・・・いや、大したことはないよ。」

「左様でございますか…。」



正しくは"肉体的には"がつく。
そこまで肉体労働をしているわけではないから、体に支障はない。

ただ、精神面はどうかと言われれば、問題ないとはいえない。
体裁を取り繕わなくても良い自家用車の中とはいえ、
自然とため息が出てしまう程度には疲れているだろう。

受験を控えている身としては、どうしても勉強をしなければいけない。


勉強自体は嫌いじゃない。
落ちる気なんて、これっぽっちもしていない。


ただ、部屋にこもらざるを得ない状況と、
祖母の監視下に置かれている、というのが精神的に苦痛だった。

こうして移動している時間くらいしか
心の休まる時がないというのはどうにもストレスがたまる。



「・・・・・・降りる。」

「えっ?」

「降りて、歩いて帰る。」

「ですが…」

「おばあさまには適当に言っておいてくれ。」

「あっ、梓馬様!!」



困惑した表情の運転手を残したまま、
信号待ちで車が止まった隙にさっさと降りた。

後でおばあさまに問い詰められるかもしれないが、その時はその時だ。
普段なら絶対に避けたい状況だけど、今は別だ。
少しくらい、外の空気を吸わないと息が詰まる。

冬の冷たい空気が頬を掠めていくけれど、
それが逆に頭をすっきりさせてくれる気がした。
少しくらい気分転換しないとやっていけない。



「・・・これぐらい、許されても良いだろう。」



誰に言うわけでもなく一人呟く。
自分らしくないと思う反面、それが少し楽しかった。

ほんの少しの気まぐれ。
ただ、偶然気が向いたから降りた。
それだけだと思っていた。




―――――――――…




何か、聞こえた気がした。

ここからは少し離れた公園の方からだった。
確かに、公園なら楽器の練習をしている人は沢山いるだろう。
けれど普通に考えると音の届く距離ではなかった。



「・・・・・・」



ふと時計に目をやる。
息抜きに、ただ歩いて帰るだけの予定だった。
公園まで足を延ばせば、遅くなってしまうのは確実だろう。

頭の中で天秤にかける。

確証もないのにお説教覚悟で公園まで足を運ぶか、
無駄足だった場合とリスクを考えて素直に帰るか。

一瞬考えて、けれど時計を見た時点で心は決まっていたのだろう。
足は公園へと進行方向を変える。

非合理なことは好きじゃない。
歩の悪い賭け事も好きじゃない。

けれど、何かが呼んでいる。
普段なら信じない直感が、そう言っていた。




―――――――――…




近付くにつれ、様々な楽器の音が聞こえてくる。
トランペット、キーボード、チェロ、ヴァイオリン。
沢山の音が聴こえる中で、答えに出逢う。



「まったく・・・・・・」



顔に自然と笑みが浮かんだ。
どちらかと言えば、自嘲的な方だろう。

だんだん見えてくるのは、1人のヴァイオリン奏者とその観客。
冬のこの時期によく外でやる気になるな、とある意味関心する。
そして、その場所にわざわざ足を運んだ自分もバカらしくて仕方ない。

寒さも何も関係なく、楽しそうに演奏する。
そしてその様子を見て観客も楽しそうに手拍子をする。
そこだけまるで切り取られた空間のように、温かい笑顔が溢れている。



「・・・・・・どうかしてるよ、お互い。」



近くまで行って聴く気になんてなれなくて、
でも立ち去ることもできなくて。
少し離れた場所からあいつの様子を伺う。

どうやってあのおばあさまに言い訳しようなんて考えながら、
それでもさっきまでのため息が嘘のように顔は自然と笑っていた。
こんな自分が、きっと一番どうかしてる。

・・・けれど、悪くない。
作品名:Love Sick 作家名:ユエ