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沖田と土方編



「ん……?」
 いつものように土方さんの私室に忍び込んでトラップでも仕掛けようと思って、良い物はないかと机に散らばる書類を隅に寄せようとしたら、書類の束に混ざって写真が目に付いた。指名手配の写真かなと思って何気なく引き抜いたところに写っていたのは。

「テメー、何やってんだ総悟」
 いきなり扉が開いたかと思うと、一緒に不機嫌を隠そうともしない声が降ってきた。振り返ると怒りを通り越して少し諦め気味の土方さんが立っていて、俺を見ていた視線が手元に移動してわかりやすく反応する。
「あー……」
「何ですかィ、コレ」
 ひらひらと泳がせると、目に見えて土方さんが動揺した。
「イヤ、それは」
「俺の写真が欲しいなんて乙女ですねィ、何に使ってんだコノヤロー」
「ちげぇ! それは、万事屋が!」
「旦那? そりゃまぁ、コレ撮ったのは旦那ですけどね」
 旦那も何で土方さんなんかに渡してるんだか。写真を摘んだまま、いきなり写真を撮られた時のことを思い出す。明らかに悪ふざけの延長だった。細かいことはわからなかったけど、何となく把握したからその場のノリに従ったまでだ。旦那とはそういう通じるものがあるから、打合せなんてしなくても即席タッグを組める。
「……俺ァ、あれだ、回収してきただけだ」
「回収〜?」
「テメェ、自分が組背負ってんのわかってんだろうな。写真とか外でばら撒かれっと困んだよ」
「別に写真ぐらいどうってことねぇでしょうが」
 そもそも既に新聞なんかには載ったりしてるんだ、それを今更。眉間に少し皺を寄せると、土方さんが面白くなさそうな顔をして、畳に腰を下ろした。言葉にしなくてもだいたい察したらしい。物事を円滑に進めるためには素早く相手の意図を汲み取るのは重要だし、こういう所は流石だと素直に思うけど、土方さんのこれは俺にとって肝心な所で役立たずになることが多かった。
 そういえば俺が最初に新聞に載った後、わりと直ぐに笑い飛ばした近藤さんと違って土方さんは延々とお説教をしてくれたのを思い出す。
「お前は無頓着すぎんだよ、色々と」
 俺から顔を逸らして言う時点で負けだってわかってるはずなのに、土方さんはもっともらしいことを言ったりして往生際が悪いったらない。
「土方さんが神経質すぎるんでさァ。だいたい、俺等と近藤さんはもう今更ってぐらい顔は割れてんでしょうに」
「……アイツ、お前の写真売り飛ばそうとしてやがったぞ」
「アララ、相変わらず金欠で喘いでんですねィ」
 話に乗っかったので土方さんは一瞬しめたと思ったみたいだけど、俺の表情を見てすぐに間違いに気づいたみたいだった。それに、俺の写真が旦那の腹を満たせるってんなら、俺は一向にかわまない。言わなくっても土方さんだってそんなことわかってるだろうに。
「いい加減にしたらどうなんですか」
 土方さんは言葉を引っ込めて黙り込んだまま、心を開く様子はなかった。頑固なのはお互い様だけど、どうやら今日は珍しく俺に追い風が吹いてるようだった。
 何でも先読みしようとしてしまうから、こうなるんだ。ある意味、自業自得だざまぁみろ。
「かーわいー」
「……うっせ」
 俯いてしまった土方さんの頬に左手を伸ばしてピタリと添えると、想像通りの熱が伝わってくる。冷たかった俺の手がほんのりと熱を写されて暖かくなる。
「珍しーや」
 からかう訳じゃなくて、本心からそう漏らす。俺のこと、打たれ弱いとか言う癖に、自分だって人のことを言えた義理じゃない。
 気を良くした俺は反対の手を頭に置いて俺のこと打たれ弱いとか言えねェですよってよしよしと堅い髪を撫でてやると、下で居心地悪そうに動く駄目な大人。その大人は俺にも聞こえるように溜め息を付くと、低空飛行真っ最中な声を絞り出した。
「お前、そんなに俺の嫌がることばっかして楽しいの?」
「ンなの、決まってるじゃねェですか」
 満面の笑みなんて珍しいものを拝ませてやると、再度深い深い溜め息を寄越された。
 今日は随分機嫌が良くて、それ故、俺だけ気分が良いのも悪いかなんて殊勝なことを思ってみたりした。だから可哀相な土方さんを慰めてやろうと右手を動かしたけど、どうやら逆効果みたいだった。
「お前は、全然わかってねェ」
「え、なにが……ン」
 いつの間に俺の手の中から抜け出したのか、逆に手首を掴まれ物理的に言葉を封じられた。そのまま直ぐに舌をねじ込まれ、奪われるみたいに与えられる。
 いつもと違って何段階もすっ飛ばした土方さんの様子は俺の何かを刺激して、ブレーキを踏まなきゃいけない所、真っ昼間だとか仕事中だとか誰か来るかもしれないなんてことまで、あっさり飛び越えてしまった。
 いかがわしい水音を立てて思う存分貪ってから離れてった唇が、陽の光を浴びて艶めかしく光る。その様子に目眩がして、どうしようかと思ったところで肩口にぎゅうと顔を押しつけられた。
  すっかり慣れたきつい香りが鼻をくすぐって、俺の脳味噌から全身まで麻酔をかけてくようだった。
「俺は……片思いとか、したことねェんだよ」
 耳元で囁くように呟かれた。掠れた声が紡いだ嫌味のような言葉の意味を、きちんと理解する前に同じ声でもう一回とお願いされて、柔らかな感触が俺の中に広がった。
 二つのことを頭で同時に処理するのが苦手な俺は、熱に囚われ浮かされていく。きっと態とだ。敵の罠だとわかってても、ぼやけた頭じゃ上手く考えなんて纏まらなくて、そのままずるずる土方さんのペースに引き込まれる。
 今度はゆるゆると侵入してきた土方さんは、舌も口の中も熱かった。ひっついたら同じ温度になりたがる。熱を移され、俺達は世界の法則に従って正しく同じになっていく。世界の法則は俺の内側にも適用されるのかな。
 急に溺れそうな気持ちになって、迷子になってた両手を白いシャツにとまらせギュッと握り込む。そしたら土方さんが、耳の裏を優しく撫でてきて、機嫌が上向いたのがわかった。
 窓から差込む太陽と土方さんの熱。いっぱいの熱量を注ぎ込まれて、俺に残された道は蕩けることだけ。もちろん、土方さんも道連れで。





2009.03.17-2008.04.02
作品名:XXX 作家名:高梨チナ