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だぶるおー 天上国2

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 全速力のデュナメスは、とんでもないことは経験済みだ。しっかりと鞍を掴んで身体を前に倒す。ひゅっとひゅっと音がして、横を見たら、弓が何本も飛んで来るのがわかった。
「止めてくれ、ニール。あいつらは、俺が。」
「バカッッ、こういう時は逃げるんだ。気を緩めるなっっ。」
 背後にドスッッという音がしているが、それが、なんなのかわからない。こんな状態では精神が集中できないから、方術を使えない。とにかく、逃げるためにティエリアも大人しくしていた。
 逃げ切って、デュナメスが足を緩めると、ふうとニールは息を吐いた。そして、手綱を引き、デュナメスを止める。ゆっくりと降りて、デュナメスの背後を確認しているニールに、ティエリアは絶句した。背中から矢が何本も生えているのだ。そして、デュナメスの尻の辺りにも、何本かの矢が突き立っている。それを抜いて、傷を確認しているニールは、「すまないな。」 と、デュナメスに謝っている。
「毒はないのか? ・・・そうか。それはよかった。走れるか? 」
 傷口に薬を塗り、前に回ってデュナメスの鼻先から頬を撫でて謝っている。デュナメスは人の言葉を解するし、言葉ではないが直接に心に話しかけられる特別な馬だ。デュナメスも、ニールの背から生えている矢尻を歯で折った。今は抜かないほうがいいという判断らしい。
「ティエリア、そのまま座っててくれ。たぶん、おまえを担ぎ上げるのは無理だと思う。とりあえず、水を飲もう。」
 デュナメスに水を与え、ティエリアにもくれた。そして、当人も、ごくごくと飲んでいる。
「その傷は・・」
「まあ、これぐらいなら、なんとかなる。今、出血するとまずいから、このままでいい。・・・・おまえさん、あいつらに魔法力を使ったんだろ? ・・・ああいう奴らは、頭に血が上ると好戦的になるから、因縁をふっかけられたら逃げるほうがいいんだぞ? 覚えとけ。」
 すでに、太陽は翳っているから暑くはないが、これから温度は急激に下がる。その間に、馬を走らせて距離を稼ぐのが、いつものパターンだ。
「だから、俺はデュナメスを止めてくれ、と、言ったんだ。あんなものぐらいなら簡単に撃退できた。あなたやデュナメスが傷を負うこともなかったはずだ。」
 そう、自分には、その力がある。だが、ニールは近寄ってきて、ティエリアの頬を撫でた。
「あのな、わざわざ敵は作らないほうがいい。戦いは戦いを呼ぶ。修行するのは構わないが、無意味な戦いはしないことだ。それに、おまえさん、人を殺したことはないだろ? なるべく、今は殺さないほうがいい。」
「なぜ? 」
「人を殺すと、自分も心に傷を負う。それが納得できるなら、殺しても良いが、激情で殺したら後悔する。・・・・人間はそういうものなんだ。」
「俺は『取替え子』だ。人間じゃない。」
 今までティエリアは口にしなかったことを吐き出した。人間ではないのだから、人間としての生き方なんて従うつもりはない。己で生きていくつもりだった。
「そうだろうとは思ってた。けどな、ティエリア、おまえさんは人間の世界で人間として、これまで生きてきた。妖精の世界ではないんだから、人間の法には従うべきだ。それはわかるだろ? 」
 ニールは、軽く笑って頷いただけだ。かなりの衝撃を与えるのだろうと思っていたのに、ティエリアは拍子抜けだ。
「驚かないのか? 」
「あははは・・・別に驚かないさ。俺のご先祖様も、『取替え子』だし、俺はソレスタルビーイングの人間だ。」
「え? 」
「俺たちも人間の法には則っているぜ? 妖精王だって、半分は人間だからな。」
 ティエリアが、いつか行きたいと願っていた国の名前をニールは囁いて、それからデュナメスを走らせた。オアシスに辿り着いたのは、太陽が一番高い頃だった。



・・・・・あの人は、俺のことを最初から気付いていたんだろうな。しかし、あれには参った。あんな無茶が日常茶飯事なんて有り得ないだろうが。・・・・

 パチパチと弾けている焚き火を眺めつつ、デュナメスと一緒に横になる。何か悪しきものが近寄れば、デュナメスもティエリアも反応する。だから、そんなことを考えつつ目を閉じる。ディランディー家の人間は、人を魅了するが、それ以外の魔法力が使えないという弱点がある。だから、外へ出る時は、護衛か、妖精の国の馬と行くのが、常だった。それすら、無視して出かけたので、誰もが焦っている。王妃は一人だ。取替えはきかないからだ。

作品名:だぶるおー 天上国2 作家名:篠義