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兄妹[DR折原兄妹]

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――― またか。
目が覚めた臨也は、左右に転がる温かい存在を考えた。九瑠璃と舞流。昨日もその前も勝手にベッドに入って来ていた。腕に抱きつくようにいる妹たちは決して心地の悪いものではない。かといってこのままでいても学校に遅刻する。
 なるべく刺激しないように臨也は腕を抜いて起き上がった。ベッドが動いた反動に、同じような習慣を持つ彼女らも目を覚ました。
「いざに……?」
「あさ……?」
寝起き特有の顔で見上げてくる妹たちの髪を一梳きして臨也はベッドを下りた。
「おはよう」
その言葉に、九瑠璃と舞流はにこりと笑った。
「「おはよ、いざにい」」

 九歳にしてはよくできた妹じゃないかと臨也は思う。出張がちな両親や趣味の稼業にまわる自分のせいもあるだろう。調理器具の進化も相まって、自分たちの食事は賄えるくらいになっている。
トースターにパンを差し込んで、電気ポットでお湯を沸かしてコーヒーやココアを淹れ、ポストまで行って新聞を取って来て、焼けたパンを皿に乗せてバターを塗る。小さい身体が忙しなく家の中を行き来するが、双子のあった呼吸に入り込む気はなかった。
 臨也はダイニングテーブルに座り用意された朝食を食べた。今日のコーヒーは少し甘かった。意図してやっているのか偶然か、毎日微妙に味が変わるのは嫌いじゃなかった。
新聞越しに向かいの席を見るとロールパンにジャムを塗って頬張るのが目に入った。一見すれば微笑ましい光景だが、それでも彼女たちは少々変わっているのだ。
 原因はDVでもネグレクトでもない、自分であることを臨也は自覚している。
 ――― ちょっと早すぎたかもな
五歳児に分かりやすく説明できたのはよかったが後先を考えていなかった。自分も中学生だったのだなぁと振り返る。反省したところで意味はない。彼女たちなりに消化した結果がこれなのだ。受け入れるしかない。
 いざにい、と不意に呼ばれた。
「今日もおそい?」
「(おそい?)」
「あぁ、多分な」
すると、九瑠璃が冷蔵庫に走り、小さな箱を取り出した。
「(お夕はんののこりだけど)」
そう言って差し出されたのは俗にいう弁当だった。臨也は素直に驚いた。いつの間にそんな技能を身に着けたのか。お世辞にも彩はよくなかったが、自分の嗜好を知っているのか、どれを見ても冷凍食品ではなかった。
「これはわたしが作って、そっちの方はくる姉が作ったんだよ!」
得意げに舞流は指を指した。
「ありがとう、一回温めておいた方がよさそうだね」
食べるころにはきっと冷めてしまっているだろうが、冷たいままというのもなんだか落ち着かない。臨也はレンジに入れて温めた。
 制服に着替えて、鞄に財布に鍵、携帯電話そしてナイフを身に着けているのを確認して、臨也は靴を履いた。
「はやくはやく」
「分かってるよ」
左右の手をそれぞれに掴まれ、臨也は家を出た。
 そんなある日、家政婦を置いて、臨也は家を出ていった。
 それに二人が気付いたのは、朝だよと兄の部屋に入ったときだった。
 家具はすべて残っていた。しかしクロゼットの中は空になっていた。本も置物も、まるでモデルハウスのように配置されているだけだった。
「いざにい、行っちゃった」
「(行っちゃった)」
九瑠璃と舞流は互いの手を握り、握り返した。
その日の夜、二人は臨也がいた部屋で眠った。ベッドには臨也のにおいが残っていた。
 そんな七年前。

作品名:兄妹[DR折原兄妹] 作家名:獅子エリ