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だぶるおー 天上国3

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 とうとう、あの空気を読まない厄介なのが帰ってくるのか、と、ロックオンはげんなりとした。どうにか、こちらの言葉を理解させて、事を荒立てずに、この城を去りたいと思っているのだが、会話が成立しない相手に、どうやって理解させればいいのか、ロックオンも悩むところだ。

・・・・この待遇は有り難かったが・・・さて、どうしたもんだろうな・・・

 逃げ出して、後日、お礼を届けるというのが、一番、波風が立たないと思われるのだが、逃げ出す用意をしていない。城の外へ出ることは可能だろうが、路銀も馬もなくては、国に帰れない。荷物を返してくれれば、どうにかなるだろうが、それを返してくれるとは思えない。ジョシュアが、それとなく探してくれたのだが、見つけられなかったと言っていた。
 そのジョシュアが午後前にやってきた。こっそりとベッドの枕の下に、短剣を忍ばせた。
「おい、ジョシュア。」
「グラハムが襲ってきたら大声出して斬りつけろ。それで駆けつける口実になる。」
「はあ? 」
「いや、おまえが一晩くらい相手してもいいっていうなら、いいんだが・・・イヤだろ? グラハムにやられるの。」
「・・へ?・・・」
「おまえを姫君とか言うんだから、そういうことだ。あいつ、興奮すると手が付けられないから、とりあえず、乱入して有耶無耶という方向でだな。」
 避けられないなら、とりあえず、騒ぎでできない方向に、というのが、ジョシュアの作戦だ。
「けど、ジョシュア、それって、おまえがマズイんじゃないのか? 」
「いや、そうでもない。けど、これは一日しか使えないんだ。」
「わかってるよ。・・・あー金と馬貸してくれないか? それで、とりあえず、俺んちへ帰ってくる。」
「うーん、金かー今、持ち合わせがなあー。馬は貸せると思うけど・・・うーん。」
 実家に仕送りしているジョシュアは手元に、それほど金なんて置いてない。馬と食料の調達ぐらいは簡単だが、ロックオンの故郷は遠いと言うのだから、そこまで一文無しというのは大変だろう。
「そうだよなあ。おまえさん、仕送りしてるんだもんなあ。」
「悪い。」
「いや、俺のほうこそ、いろいろと気を遣ってくれてありがとう。・・・まあ、なんとかしてみるよ。」
 密談しているうちに、午後になり、食事が運ばれてくる。それを、一緒に食べていたら、ジョシュアには隊長出迎えの呼び出しがかかった。
「とりあえず、今日は、それで凌げ。明日からのことは、また考える。」
 と、ジョシュアは言ったが、それはまずかろうと、ロックオンは短剣を枕の下からチェストの奥へ移した。それを渡したものが誰であるか言及されたら、ジョシュアの立場が悪くなる。何かと気遣ってくれている相手だ。クビになるようなことはさせられない。
 そんなことを考えていたら、ハワードがやってきた。まもなく、隊長が到着します、という報告だった。それから、床に額を付けて土下座したのには、ロックオンも驚いた。
「姫君には、理不尽かと思われますが、どうか、うちの隊長の気持ちを受け入れていただきたくお願い申し上げます。」
「はい? 」
「そちらの事情は、多少なりとも理解しておりますが・・・もちろん、姫君にも好みというものがありましょうが・・・どうか、そこいらは目を瞑って。」
「いやいや、ハワードさん? あの、俺はですね。」
「うちの隊長は、少し変っていますが悪い人間ではないです。きっと、深く想って、姫君を大切にするはずです。ですから、どうか。」
 そういや、この人も会話が成立しない人だった、と、ロックオンはベッドから降りてハワードの手を取った。そういう問題以前の問題が、大きく横たわっていることは、まるごと無視の方向らしい。
「顔を上げてください。・・・その・・・申し訳ないんですが・・・俺には家族があるんですよ。ですから、こちらに暮らすわけにはいきません。それに・・・」
 実は、亭主というものが、すでにあるんです、とは、さすがに言えなくて、ロックオンも、そこに座り込む。それは、あいつの誤解からくる産物だから、それは言いたくないし、自身も認めたくない。
「それに、なんですか? 家族なら呼び寄せればよろしいのでは? 」
「いえ、そういうわけにはいきません。それに、俺、男で、そっちの趣味はありません。」
 弟は、どっちでもいいらしいのだが、ちゃんと、嫁を貰った。これで、ディランディー家は、子供さえできたら安泰なので、そちらはいいのだが、ロックオンは、そういう気がない。できたら、女性とがいいとは思っているのだが、それも切迫してないし、仕事のほうが忙しくて、特定の女性と付き合ったこともない。仕事で外出して、遊びで花街には出入りしているが、それだけだ。ゆっくり相手を探す暇があれば、とは、考えているが、それも難しい。どうしたもんだろう? と、途方に暮れていたら、派手に扉が開いた。
「姫、ようやく、その花の顔を見ることができるっっ。」
 そう、もっとも厄介なグラハムが帰ってきたのだ。ハワードは、「おかえりなさい。」 と、立ち上がっている。
「姫、城主の夫人の部屋に移るということは、私とのことは認めてくれたと思っていいのだろう? なんと、嬉しいことだろう。私は、姫が受け入れたことを、この世界中の神に感謝したいぞっっ。」

・・・はい?・・・

 なんか大声で叫んでいる言葉が、不穏だ。そんなつもりで部屋を替わったわけではない。気晴らしに景色を眺められるから、と、ハワードたちが移してくれただけだ。それすら、勘違い対象にするのかよ、と、ロックオンは反論を思いつかない。
「こら、グラハム。王都での会議の報告とか、こっちからの報告が先だろうがっっ。てめぇーはっっ。」
 後から遅れて、ジョシュアとダリルも走ってきたが、「そんなものは後だ。姫と二人にしてくれたまえ。」 とか、グラハムも負けずに叫んでいる。

・・・・これ・・・どうしたら鎮まるんだ?・・・・


 ぎゃあぎゃあと喚いている騒ぎは、収拾の付けようがない。侍女たちもやってきて、床に座り込んでいるロックオンを恭しくベッドの端に座らせて。衣服や髪を整えている。
「隊長、まずは姫君にご挨拶なさって、我々のほうにも顔を出してください。みな、あなたの無事な姿を見たいんです。」
 ダリルが、そう言って、ジョシュアとグラハムに割ってはいる。まずは、全軍の姿を、と、言われると、グラハムも、「そうだったな。」 と、居住まいを正した。それから、ロックオンの側に歩み寄り、その左手を恭しく持ち上げてキスをする。
「きみのことで頭が一杯で、私は、自分の部下たちのことを蔑ろにしてしまった。再会の挨拶まで、しばし、猶予をもらえるか? 姫。」
「・・・うっうん・・・」
「では、許しも出たことだ。先に、そちらへ出向くぞ。」
 また、一声叫んでグラハムは出て行く。後ろから、ダリルたちが続いて、出て行く。ジョシュアが、ちらりとこちらを見て、それから最後に部屋を出た。
作品名:だぶるおー 天上国3 作家名:篠義