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永遠に失われしもの 第8章

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「屋敷に帰らないのか?」


 夜のローマの街に浮かび上がるような、
 膨大な数のランプで照らされたホテルの前で劇場から乗った馬車が止まると、
 シエルは怪訝そうな顔で、そう尋ねた。


 「今夜はこちらでご宿泊するのは
  いかがでしょう?

  少々手違いがございまして--」


 グレルが出現した際に着ていた
 自分の執事服を見て、セバスチャンは、
 グレルが己が城に立ち寄り、
 恐らくは何かしらの罠をしかけた
 であろうことを予想していた。


 「別にあそことて、
  僕の屋敷なわけではないからな。

  どこでも一緒といえば、一緒だ。」


 品の良い白髪のクラークが、
 重厚なフロントデスクの後ろで、
 てきぱきと書類を整理していた。

 
 主を馬車に待たせたまま、
 漆黒の執事は、
 そのディンギルテッラホテルの
 最上階にあるエグゼクティブ・スィートの
 手配をするために、フロントに近づく。

 
 手続きを済ませ、荷物をポーターに頼み、
 馬車にシエルを迎えに行くため
 通りに出ると
 セバスチャンに、聞きなれたしゃがれ声が
 突然話しかけてきた。


 「執事君」


 振り向くと、
 黒い奇妙な形をした帽子をかぶる
 銀髪の長い髪に黒づくめの服装をした
 細身の男が立っていた。

 その前髪は長すぎて、
 目を完全に覆い隠してしまい、
 表情がほとんどわからない。

 そして鼻から頬にかけて、また首筋には
 古傷であろう大きな傷跡が残っている。


 「これは--珍しいところで」

 「ほんとに奇遇だねぇ~...」


 そこに帰りの遅い執事に苛立ち、待ちかね
 一人で馬車を降りたシエルがやってきた。


 「遅いぞ!セバスチャ・・・・
  アンダーテイカー(葬儀屋)!!」

 「やぁ。伯爵...
  あぁ~もぅシエル・ファントムハイブ
  じゃないんだっけ?」

 「Shh--その名をこんな人の集まる所で
  口に出してはいけません。
  
  彼はお亡くなりになったのですから」


 セバスチャンは、口元に人差し指を立てて
 小声で、アンダーテイカーと呼ばれる男に
 ささやく。


 「今は、レオ・アウグスト・オレイニク
  公爵でいらっしゃいます。」
 

 「へぇ~じゃぁ公爵と呼ばせてもらうよ。
  今度からはね....

  小生の棺に入らないで、
  死亡通知だけよこすなんて、
  公爵は冷たいねぇ」


 死亡している筈の、
 シエルを見ても全く葬儀屋は驚かない。

 それもそのはず、この男とて
 いまでこそもう現役は引退しているものの
 死神として働き、
 もう何百年も生きているのだ。


 「それを僕に言いに
  わざわざローマまでお前は来たのか?」


 「自分を買いかぶりすぎだよ。公爵。
  私は他に用事があって、
  ここにきたのさ。

  君にあったのはたまたま偶然だよ」


 うっそうと長すぎる銀色の前髪から、
 黄緑色の切れ長の目が光った。


 「もっとも偶然なのかどうかは...
  あぁいけない。私は急いでるからね」


 そう言って立ち去ろうとする葬儀屋を
 セバスチャンは引き止めた。


 「今夜はローマにお泊りですか?」

 「そうなるだろうねぇ」

 「それでは、明日
  こちらの最上階の部屋まで
  来ていただけないでしょうか?

  少々お頼みしたいことが--」
 

 と、葬儀屋はへらへらと笑い出して、
 

 「いいよ。執事君。

  伯爵には随分世話に..
  あぁ、公爵か。面倒くさいねぇ。

  それじゃ行くよ」


 葬儀屋が通りに消えていったときに、
 シエルはセバスチャンを見上げて尋ねた。


 「葬儀屋に頼むことって何だ?」

 「ですから餅は餅屋に--」


 「なるほど。
  
  てっきり僕は
  お前の知り合いのあの・・赤い変人に
  聞くのかと思っていたけどな。」


 「ああ、グレルさんですか--
  彼に聞くと、その代償が
  とても高くつきそうですので」


 「支払ってやればいい」

 「またご冗談を」


 二人はホテルへと戻っていった。