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永遠に失われしもの 第8章

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 月明かりに照らされたセバスチャンの頬は
 その蒼白さを増している

 夏の炎天下、身体中の細胞という細胞から
 水分を欲しがるかのように、
 シエルは、セバスチャンの舌先を
 何度も何度も吸い、貪り、噛み続ける。

 一瞬の苦痛から反射的に引っ込められる
 その舌を誘い出すように、吸い出し
 舐め尽くすうちに、
 お互いの舌が絡みついている。

 めくるめく快感に
 シエルはその紅い瞳を伏せるが、、
 漆黒の執事の、
 紅茶色の瞳は閉じられることなく、
 シエルの切なそうな、その表情を見ていた。

 
 シエルの表情が次第に柔らかく、
 満足したようになってきたのを確かめて、

 セバスチャンは、シエルの後頭部を両手で
 押さえつけるようにつかみ、
 さらに深く甘く口づけた。

 驚いて、目を大きく見張るシエルの瞳は、
 既に深海の青色に戻っている。


 ・・な・・・何を?・・・


 その巧妙な舌使いで、
 シエルの心臓の鼓動は早くなり、
 頭の奥が痺れてくる。

 それでも、懸命に腕に力をこめて、
 セバスチャンの長身の躯を押し離すと、
 シエルは荒い息を収めようとした。

 
 「・・な・・んだ?」
 
 
 まだ荒い吐息をしながら、
 シエルは怒ったように尋ねる。


 「ディープキスです」

 
 セバスチャンは、いつもの微笑をして
 すんなりと答えた。


 「そういうことじゃなくて、
  理由を・・」


 漆黒の執事は相貌をくずして、
 くっくっと笑った。


 「こうでもしないと、
  永遠に続きそうでしたので

  今から、ここにお客様が
  いらっしゃるみたいです」


 ~~~第9章につづく~~~