花畑の約束
見回すと、辺り一面のシロツメクサ。
真っ白に咲くそれは、風にゆらゆら揺れていてとても綺麗だった。
そのシロツメクサの花畑に影が一つ。そう、イタリアは、
悲しげな笑みでそのシロツメクサを眺めていた。
「やっぱり…綺麗だな…」
すっとしゃがむど、シロツメクサを一本抜いた。
毎年、この日になるとイタリアはこの場所にくる。
日本が温泉旅行に誘ってこようが、ドイツにビールに誘われようが、
この日だけは、ここに来ていた。
懐かしい。このシロツメクサの匂い。
昔の記憶が、甦ってくる。
―――かなり前のこと。まだ幼かったイタリアは、この花畑を見て
キャッキャとはしゃいでいた。
すると一緒にはしゃいでいた神聖ローマがふと、イタリアに話しかけた。
『イタリア!…見てみろ!!花冠がつくれるぞ!!』
何本かを摘み取り、器用に花冠をつくりはじめた。
それを見たイタリアも満面の笑みで真似し始めた。
『神聖ローマぁ…うまく繋がらないよぅ』
イタリアは小さな手で一生懸命冠を作っていたのだが、花と花を繋げるのが
難しいらしく苦戦していた。
すると神聖ローマは少し躊躇ったが、イタリアの手をとると、
『ここをきゅって結ぶとうまく繋がるぞ…』
イタリアの手を自分の手で操り、花と花を繋げた。
『うわぁ…上手だね!!神聖ローマ!!』
繋がったことに感動したのか、次々に作っていくイタリア。
ふと、イタリアが神聖ローマに話しかけた。
『今日って神聖ローマの誕生日だよね?』
神聖ローマは思わず頬を赤らめた。覚えていてくれた。
イタリアが覚えていてくれた。
『じゃぁこの花冠あげる!!』
ふわっと神聖ローマの頭に綺麗な花冠がかかった。
黒い帽子に白い花冠。
とても似合っていて二人は嬉しくなった。
『ありがとう…イタリア』
にこっと微笑むと急に何か思い付いたような顔で、
『そうだ!毎年この日になったら、僕達ここに来てまたお祝い
しようよ!』
と言った。
神聖ローマは微笑むと、
『わかった…約束だぞ!!』
『うん!!約束ねー!』
二人は指切りをして、笑いあった。