だぶるおー 天上国4
一時休戦とは言うものの、小一時間もしないうちに、グラハムは戻って来た。すぐさま、押しかかられそうな雰囲気で、逃げるが勝ちと、ロックオンはバルコニーへと走り出した。だが、そこから飛び降りるには高すぎる。いくら、自己治癒能力が高いとはいえ、頭を割ったら助からない。
「なぜ、逃げるんだ、姫。」
「助けてくれたことには礼を言うが、あんたに押しかかられる謂れはねぇーよ。だいたい、あんた、俺は男だって言ってんだろーがっっ。それぐらい理解しろよ。仮にもユニオン警備隊の隊長なんだろ? 」
手すりに手をかけて、とにかく叫ぶ。だが、相手は、涼しい顔で、「それは理解している。」 とは、おっしゃる。
「男女など、私には些細なことだ。姫の姿に一目惚れした。それが、全てだ。」
「だから、それなら、相手の気持ちとかも関係ないのかよ。あんたが、『惚れた。』って言えば、相手は、『好きです。』って返すもんだと決まってるってか? そんなことねぇーだろっっ。」
「そこは、私を理解してもらえば、姫は受け入れてくれると思うんだ。」
「いや、受け入れられねぇーよ。それに、いきなり襲い掛かってるのは、理解とかいうことじゃない。」
「すまない。長く、姫と離れていたので、気持ちが鎮まらない。まずは、この熱い想いを、姫に感じてもらわねば・・・私は狂って仕舞う。・・・姫、どうか思いを遂げさせてもらえまいか?」
「イヤに決まってんだろーーがっっ。」
「では、実力行使で遂げさせていただこう。姫は、何もしなくても、ただ私の愛撫に身を委ねてくれればいい。」
「だから、イヤだって。」
ずかずかと歩いてくるグラハムは、ものすごいオーラだ。というか、そのオーラに、ふと、ロックオンも意識を向けた。それは、妖精の魔法力らしきものだったからだ。
「・・あんた・・・まさか・・・」
怪我で混乱していて気付かなかったが、グラハムは、間違いなく魔法力のある独特のオーラを発している。なるほど、こいつがトチ狂ってるのは、俺の「たらし」能力の所為か、と、気付いた。たまに、こうなる同族が居る。ロックオンの能力に、過剰な反応をするのだ。
・・・てか、この状況で説明してもわかんねぇーよな・・・・
これこれこういうことで、あんたは誤解しているんだ、と、ここで、冷静に説明しても、聞き分けてくれない。だいたい、こういう輩と接触したら、ロックオンは逃亡している。逃亡した後を追いかけてきたものも多数居る。まあ、天上の城のある領域に逃げ込めば、そこからは、王の許しなくは、領域に入れないから、そこで追い返している。
「姫、どうか逃げないでくれ。このままでは、酷くしてしまいそうだ。」
手をかけようとしたグラハムに蹴りを見舞うが、かわされる。それどころか、そのまま間合いに入られて、腕を取られた。振りほどこうと暴れたら、折れていたアバラが軋んで息を詰めた。治ったわけではないので、激しい動きには痛みがある。ぐっと前のめりに倒れそうになったら、支えられた。
「姫、痛いのか? それはいけない。」
そのまま横抱きで、部屋に戻される。痛くて呻いたら、静かにベッドに下ろされた。
「すまない。痛がらせるつもりではなかったんだ。」
申し訳なさそうに、グラハムが覗き込む。癒せるわけでもないのに、ゆっくりと胸を撫でられる。悪い人間ではないのだ。ただ言葉が通じないだけだ。
「・・・あんたさ・・・ウィザードだろ? 」
「そこまでの力はない。多少、そういうことができる程度だ。・・・姫、痛みはどうだ? 私には、『癒し』や『回復』の能力はないんだ。もし、痛むなら、痛み止めを用意させる。」
「・・・いい・・・」
無理に暴れなければ痛みはない。先ほどの強烈な痛みは退いていくから、このままじっとしていれば治まるものだ。頬や肩、腕と、グラハムが擦ってくれている。それには、『癒し』の能力はないが、その気持ちは嬉しいものだ。目を閉じて、それに任せていると、唇に温かいものが触れて、そこから入ってくる。
・・・・なんだろうな、この男・・・・なんでキスするかな・・・
左手で、その額を叩いたが離れない。目を開いて逃げようともがいて、また痛みが走る。身を捩ってキスから逃げたが、痛くて動けない。追い駆けるように、顔が近づいてきて、「イヤだ。」 と、睨んだのに微笑まれた。
「やはり、姫の孔雀色の瞳は美しい。虜になってしまいそうだ。」
・・・・ほんと、誰でもいいから助けてくれ・・・・てか、通訳してくれ・・・
動けないロックオンは、泣きたい気分で逃げようともがくのだが、易々と、それを押さえ込まれた。体重はかけられていないが、動けない。覚悟決めるしかないのか? と、諦めかけたら、乱暴に扉が開いた音がして、上に圧し掛かっていた体温がなくなったと同時に、ぐしゃっという音と、馬の嘶きと、「ロックオン。」 という養い子の声が聞こえて、目を開けた。そこには、覗き込むティエリアと、それを押し退けるようにして鼻面を押し付けようとしているデュナメスの姿があった。ティエリアは、ロックオンの姿に涙を零している。
「よかった。こんな怪我をして・・・あなたという人は・・・どれだけ心配したと思っているんですか? 」
肌蹴られた寝巻きの中は包帯だらけだし、腕は 固定されている。かなりの重傷だと、ティエリアは気付いて心配している。
「・・・悪い・・・刹那は、マリナ姫とくっついたか? ティエリア・・・・」
で、この養い親、とんでもないことをおっしゃるので、ティエリアの髪は、怒気で、ぶわっと巻き上がる。
「バカなことをっっ。王妃は、あなただっっ。」
「いや、俺・・・仮だから。」
「いい加減に認めてください。こんなことになるなら、俺は、あなたを城に閉じ込めます。」
ティエリアが怒鳴る声と被さるように、背後から、さらに騒々しい音がしている。デュナメスが起き上がって走り寄ろうとしたグラハムの衣服を掴んで投げ飛ばしているらしい。それだけではない。さらに、廊下から馬の足音がして、兵士の騒ぎも聞こえてくる。
ニールの反応を感じたデュナメスが、城へ突撃して、そのまま城内を駆けてきた。兵士なんて蹴散らした。さらに、その反応を感知したケルビィムとアニューも続いている。アニューが、捜索していた他の者にも、発見の伝令を飛ばしたから、まもなく駆けつけてくるだろう。アニューは、すでに室内に押し入っている。
「なぜ、逃げるんだ、姫。」
「助けてくれたことには礼を言うが、あんたに押しかかられる謂れはねぇーよ。だいたい、あんた、俺は男だって言ってんだろーがっっ。それぐらい理解しろよ。仮にもユニオン警備隊の隊長なんだろ? 」
手すりに手をかけて、とにかく叫ぶ。だが、相手は、涼しい顔で、「それは理解している。」 とは、おっしゃる。
「男女など、私には些細なことだ。姫の姿に一目惚れした。それが、全てだ。」
「だから、それなら、相手の気持ちとかも関係ないのかよ。あんたが、『惚れた。』って言えば、相手は、『好きです。』って返すもんだと決まってるってか? そんなことねぇーだろっっ。」
「そこは、私を理解してもらえば、姫は受け入れてくれると思うんだ。」
「いや、受け入れられねぇーよ。それに、いきなり襲い掛かってるのは、理解とかいうことじゃない。」
「すまない。長く、姫と離れていたので、気持ちが鎮まらない。まずは、この熱い想いを、姫に感じてもらわねば・・・私は狂って仕舞う。・・・姫、どうか思いを遂げさせてもらえまいか?」
「イヤに決まってんだろーーがっっ。」
「では、実力行使で遂げさせていただこう。姫は、何もしなくても、ただ私の愛撫に身を委ねてくれればいい。」
「だから、イヤだって。」
ずかずかと歩いてくるグラハムは、ものすごいオーラだ。というか、そのオーラに、ふと、ロックオンも意識を向けた。それは、妖精の魔法力らしきものだったからだ。
「・・あんた・・・まさか・・・」
怪我で混乱していて気付かなかったが、グラハムは、間違いなく魔法力のある独特のオーラを発している。なるほど、こいつがトチ狂ってるのは、俺の「たらし」能力の所為か、と、気付いた。たまに、こうなる同族が居る。ロックオンの能力に、過剰な反応をするのだ。
・・・てか、この状況で説明してもわかんねぇーよな・・・・
これこれこういうことで、あんたは誤解しているんだ、と、ここで、冷静に説明しても、聞き分けてくれない。だいたい、こういう輩と接触したら、ロックオンは逃亡している。逃亡した後を追いかけてきたものも多数居る。まあ、天上の城のある領域に逃げ込めば、そこからは、王の許しなくは、領域に入れないから、そこで追い返している。
「姫、どうか逃げないでくれ。このままでは、酷くしてしまいそうだ。」
手をかけようとしたグラハムに蹴りを見舞うが、かわされる。それどころか、そのまま間合いに入られて、腕を取られた。振りほどこうと暴れたら、折れていたアバラが軋んで息を詰めた。治ったわけではないので、激しい動きには痛みがある。ぐっと前のめりに倒れそうになったら、支えられた。
「姫、痛いのか? それはいけない。」
そのまま横抱きで、部屋に戻される。痛くて呻いたら、静かにベッドに下ろされた。
「すまない。痛がらせるつもりではなかったんだ。」
申し訳なさそうに、グラハムが覗き込む。癒せるわけでもないのに、ゆっくりと胸を撫でられる。悪い人間ではないのだ。ただ言葉が通じないだけだ。
「・・・あんたさ・・・ウィザードだろ? 」
「そこまでの力はない。多少、そういうことができる程度だ。・・・姫、痛みはどうだ? 私には、『癒し』や『回復』の能力はないんだ。もし、痛むなら、痛み止めを用意させる。」
「・・・いい・・・」
無理に暴れなければ痛みはない。先ほどの強烈な痛みは退いていくから、このままじっとしていれば治まるものだ。頬や肩、腕と、グラハムが擦ってくれている。それには、『癒し』の能力はないが、その気持ちは嬉しいものだ。目を閉じて、それに任せていると、唇に温かいものが触れて、そこから入ってくる。
・・・・なんだろうな、この男・・・・なんでキスするかな・・・
左手で、その額を叩いたが離れない。目を開いて逃げようともがいて、また痛みが走る。身を捩ってキスから逃げたが、痛くて動けない。追い駆けるように、顔が近づいてきて、「イヤだ。」 と、睨んだのに微笑まれた。
「やはり、姫の孔雀色の瞳は美しい。虜になってしまいそうだ。」
・・・・ほんと、誰でもいいから助けてくれ・・・・てか、通訳してくれ・・・
動けないロックオンは、泣きたい気分で逃げようともがくのだが、易々と、それを押さえ込まれた。体重はかけられていないが、動けない。覚悟決めるしかないのか? と、諦めかけたら、乱暴に扉が開いた音がして、上に圧し掛かっていた体温がなくなったと同時に、ぐしゃっという音と、馬の嘶きと、「ロックオン。」 という養い子の声が聞こえて、目を開けた。そこには、覗き込むティエリアと、それを押し退けるようにして鼻面を押し付けようとしているデュナメスの姿があった。ティエリアは、ロックオンの姿に涙を零している。
「よかった。こんな怪我をして・・・あなたという人は・・・どれだけ心配したと思っているんですか? 」
肌蹴られた寝巻きの中は包帯だらけだし、腕は 固定されている。かなりの重傷だと、ティエリアは気付いて心配している。
「・・・悪い・・・刹那は、マリナ姫とくっついたか? ティエリア・・・・」
で、この養い親、とんでもないことをおっしゃるので、ティエリアの髪は、怒気で、ぶわっと巻き上がる。
「バカなことをっっ。王妃は、あなただっっ。」
「いや、俺・・・仮だから。」
「いい加減に認めてください。こんなことになるなら、俺は、あなたを城に閉じ込めます。」
ティエリアが怒鳴る声と被さるように、背後から、さらに騒々しい音がしている。デュナメスが起き上がって走り寄ろうとしたグラハムの衣服を掴んで投げ飛ばしているらしい。それだけではない。さらに、廊下から馬の足音がして、兵士の騒ぎも聞こえてくる。
ニールの反応を感じたデュナメスが、城へ突撃して、そのまま城内を駆けてきた。兵士なんて蹴散らした。さらに、その反応を感知したケルビィムとアニューも続いている。アニューが、捜索していた他の者にも、発見の伝令を飛ばしたから、まもなく駆けつけてくるだろう。アニューは、すでに室内に押し入っている。
作品名:だぶるおー 天上国4 作家名:篠義