【DRRR】そうして、彼は(下)【静帝/サンプル】
試験期間に入って、試験に向けて放課後はミカドの家で一緒に勉強していた。
「おまえ、今日、飯どうすんだ?」
「今日は家にカレーがあるんです。レトルトですけど、静雄さん、食べて行きます?」
「ああ、食ってく」
「じゃあ、スーパー寄って、なにか他にもおかずになるようなもの買って帰りましょう」
ミカドの家には炊飯器と電子レンジしかなくて、特に自炊をする様子もない。静雄が夕食を一緒に食べる時も、たいてい弁当か惣菜かファストフードを買ってきて食べていた。
「おまえ冷蔵庫くらい置いた方がいいんじゃねえ?」
「やっぱりそうですかね?」
「その、金がねえわけじゃねえんだろ?」
ミカドの家はおせじにも立派だとは言えない建物だったし、物も多くはない。だが一方で、学校にしかないようなコンピュータのような高価なものもあるし、養い親から生活費も潤沢に援助してもらっているようだった。
家がぼろかったり、物が少なかったりするのは、単にミカドの嗜好のようだ。
「最初はあまり必要ないかなって思ってたんですけど、ちょっと検討してみます」
年末になればバーゲンもある。一人暮らし用の冷蔵庫くらいなら静雄一人でも余裕で運ぶことが出来る。
「買う時は言えよ。恩恵に預かるんだ。荷物くらい運ぶぞ」
「あはは。その時はお願いします」
そう言ってミカドは笑った。
ミカドが笑っていると、静雄は自分も嬉しくなることに気がついていた。一緒にいると楽しいし、やたらと苛立つこともなくて、静雄にとって精神安定剤みたいな人間だった。
宿題を見せ合いっこして、昼ごはんを一緒に食べて、放課後は寄り道をしながら帰ったり、ミカドの家に遊びに行ったり。
ミカドの部屋は誰にも邪魔されず、二人で静かにゆっくり過ごすには十分だった。とりとめのない話をしながら一緒に夕飯を食べて、次の休みに遊びに行く計画をたてて、たまに勉強を教えてもらったりして。
苛立てば暴れ、喧嘩を吹っ掛けられれば殴り返す。すさんだ生活をしていた自分にも、そんな居心地の良い時間が訪れたことに、静雄自身が驚いていた。
このまま、この生活がずっと続けば良いのにと思っていた。
作品名:【DRRR】そうして、彼は(下)【静帝/サンプル】 作家名:サエキスミ