二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

だぶるおー 天上国 王妃の日常1

INDEX|1ページ/6ページ|

次のページ
 
なんで、罰にヒゲを剃り落として執事の真似なんだよ、と、ぶつくさとぼやきつつアリーは、刹那の寝室に入る。だいたい、精霊の俺に何をさせているんだ、と、思いつつ、ある意味、コスプレちっくなので、ノリノリだったりはするのが、このおかしな精霊のいいところだ。
「旦那様、お目覚めのコーヒーをお持ちしました。」
 ちゃんと敬語が使えるんだ、と、初日に王妃は感心していた。それに、ヒゲを剃り、髪も後ろで束ねて執事服を着せれば、それなりのイケメンになることも、びっくりだ。いつもは、汚いおっさんだから、このギャップには、城の誰もが驚いた。
「王妃は、まだ寝ているから、後で用意してやってくれ。今日の予定は? 」
 用意されたコーヒーを受け取りつつ、妖精王様は、そう尋ねる。養い親のアリーだが、今回は、さすがに、刹那もキレたので、しばらくはこき使うつもりらしい。勝手に出かけた王妃に、名前を呼ばせるために怪我をさせたのは目を瞑ろう。だが、怪我した後に、呼ぶ前に、「任務完了」 と、ほいほい帰ってきたのはいただけない。呼ぶまで、側で待機ぐらいしていろ、と、言いたい。で、帰って来て、「まだ呼んでないのか? 愚図だなあ。」 と、言ったことで、さすがに、刹那もキレた。あそこで待機していてくれれば、変態半妖精に隠されることもなかったからだ。
「御前会議が、二時間後にございます。午後から、孤児院の設計のことで、エイフマン教授が打ち合わせしたいとのことですが、いかがいたしますか。」
「受けてくれ。建築のほうは早いにこしたことはない。イアンも同席してくれるように頼んでおいてくれ。」
「承知しました。・・・・で、おまえの女房は会議までに起こすのか? ちび。」
 大きなベッドを占領しているのは、ふたり。もちろん、天上の城の王様と王妃様だ。王妃様は、まだすやすやと眠りの国にいらっしゃる。
「起こさなくていい。」
「そうはいかんだろ。御前会議ってことは、両方、並んでないとな。」
「いい。王妃は疲れているから、ゆっくりさせてやりたい。」
 慈愛の目で、王妃を眺めている妖精王様は、とても幸せそうに微笑んでいる。思いを遂げてからの王様は、とっても幸せそうで、お肌も艶々だ。なんせ、何十年もかかったので、現在、その幸せを噛み締めている最中だからだ。
「なあ、ちび。そろそろ手加減してやったら、どうだ? こいつ、痩せたぞ? 」
 王妃様は、ちょっとお疲れで痩せている。まあ、そりゃそうなのだ。毎晩毎晩、さんざんっぱら王様に愛されちゃってるので、くたくただ。それでも、やることはあるから、午後近くに起きて、いろいろと仕事はしているから、どうしても過労気味だ。周囲も、しばらくは仕方がない、と、目を瞑っているが、それも二ヶ月も続けば、もう、そろそろ加減してやりゃいいだろうに、と、いう意見は出てくる。
「まだ足りない。」
「はあ? 」
「ニールが足りない。もっと時間が欲しい。」
「おまえ、どんだけ飢えてたんだ? ・・・まあ、いいけどよ。遣り殺すなよ? それは、一個しかないからな。」
「わかっている。」
 コーヒーを飲み干して、王様はベッドから降りる。もちろん、王妃に朝のキスをかまして、名残惜しそうに着替えに向かった。連れ戻って、三日三晩、部屋に閉じこもって攻めたおして、独占したくせに、まだまだ足りないらしい。

・・・・まあ、わかるけどさ・・・・

 待たされた時間も長かったし、思いも散々募っていた。どれだけ貪っても飢えが満たされないというのは、わかる気はする。なんせ、初めての相手で、ついでに、初恋の人だ。だが、相手にも限度はあると思うのだが、そこいらが、まだまだ、王様にはわからないらしい。




 御前会議は、王妃不在で執り行われた。これといって目新しい情報もなかったし、王自身が動くような用件もない。ソレスタルビーイングでは、通常の執政は、すべて、ハプティズム家のふたりに任されているから、妖精王が細かなことをすることはないからだ。
 会議が終って、雑談大会になると、ディランディ家の当主が、刹那に近寄ってきた。
「陛下、王妃のことなんですが。」
「疲れて寝ているだけだ大事はない。」
 疲れさせている張本人は、さらーっと流した。流されたほうは、いきなり、いつもの調子で怒鳴っている。御前会議に並んでいる面々なんて、普段は丁寧になんかやっていられない。公式の場合だけ、丁寧になるだけだから、これぐらいで周囲も慌てない。刹那とライルの口喧嘩なんてものは、じゃれあいという認識だ。
「そうじゃねぇーよっっ。おまえな、うちの兄さんに、ご無体が過ぎてるだろ? ものすごくやつれてるじゃねぇーかっ。もうちょっと壊れ物扱うみたくしてくれないか? あの人、なんにも言わないけどしんどそうだろ。」
 通常の会話となると、陛下も何もあったもんじゃない。ややブラコン気味のディランディ家当主のライルは、語気を荒げる。
「すまないが、それは了承しかねる。これでも、加減はしてるんだ。」
「どこがだよっっ。」
「夜だけに限定している。」
「当たり前だ。ちょっと、うちに帰せ。身体休ませてやらないともたない。」
「ダメだ。王妃は、俺の側に、常にあるべきだ。それは、この国の決まりだぞ、ライル。」
「決まりでも限度があるっつーてんだろ。」
 毎日のように取り交わされているライルと刹那の会話に、周囲もうんうんと頷いている。ここんとこのニールは、くたくたで使い物にならないからだ。執政は、ハプティズム家が執り行うといっても、ふたりだけでは手が回らない。周囲が分担して、それらをこなしているわけで、ニールにも分担はある。召還してきた男性陣が、周囲とうまく溶け込めるように気をつけるのが、ニールの仕事だ。現在は、エイフマン教授と、その助手が、その対象になっているから、本来なら、あちらに張り付いて、国の案内や状況、生活様式なんかを教えていく時期なのだが、それができないでいる。連れて来た責任者がぐだぐだなので、代わって仕事が暇な戦術予報士のスメラギ・李・ノリエガがやってくれているが、ここで騒動が起こっている。
「そうよ、刹那。教授はいい方だけど、助手は最低なんです。」
 どこでどう間違ったのか、スメラギに助手のビリー・カタギリが一目惚れして、現在猛アタックを受けている。あんまり酷いので、カティーが、さらにスメラギの代理をしているのだが、スメラギを探して城内を走り回っているので、接触されて迷惑している。
「断っても断っても五月蝿いの。いい加減、キレるわよ? 」
「キレて投げ飛ばしただろ? スメラギ。」
「だって、カティー。勘違いも甚だしいのよ? 」
 ここにいるものは、ほとんどが大なり小なり魔法力を有している。あまりに五月蝿く付きまとうので、スメラギは、それで投げ飛ばして逃走したのが、先日のことだ。
「懲りない男だな。だが、そういうことなら、やはり、王妃に出てきていただくほうがよいのではないですか? 陛下。」
 十数年前に、こちらに召還されたセルゲイ・スミルノフが苦笑交じりに、刹那に提案する。
「僕も、それがいいと思うよ、刹那。ニールにたらしてもらえば、大人しくなるはずだ。」